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【超短編】ルームメイトのPDCAサイクル

作者: 月下のネコ

 俺は計画通りに物事を進めるのが好きだ。いや、執着していると言った方が正しいかもしれない。


 そんな俺のルームメイト、中村はその正反対だ。彼はいつものんびりしていて、計画性というものをまるで持ち合わせていない。


 入寮してすぐ、共用部分の掃除当番が部屋ごとに割り振られ、俺は完璧なスケジュールを組んだ。乱れる余地はない――はずだった。


 だが、その計画は中村によって開始0秒で崩壊した。


「おい、中村、起きろ。掃除の時間だ」

 

 俺が布団に丸まる彼を揺さぶると、彼は顔を枕に埋めたまま「あと5分」と呟くだけだった。


 仕方なく俺は1人で掃除を始めた。床掃除が終わり、窓拭きに取り掛かろうとしたが、雑巾を部屋に置いてきたことに気づいた。


雑巾を取りに部屋へ戻ると、中村はようやく布団から這い出ていた。

 

「おはよー。どこまで進んだ?」

 

 眠そうな顔で欠伸をする彼に、俺は思わず声を荒げた。

 

「お前のその怠け癖、どうにかならないのか! PDCAサイクルって知ってるか? 計画を立て、実行し、結果を確認して改善する。これが基本だ!」


 中村は目をぱちぱちさせた後、のんびりと笑った。

 

「俺の場合、Pは "Pause" 。まずは休むのさ」


 俺は呆れ果て、雑巾を掴んで掃除を続けた。


 だが、それから数日が過ぎた頃、俺はふと気づいた。中村は、怠惰に見えて、意外と全て片付けている。課題も締切ギリギリまで放置(Delay)していたのに、なぜか結果は合格ラインを超えている。やるべきことを選び取って(Cancel)、無駄をそぎ落としているからだ。


「ろくに計画も立てずに、なぜ上手くいくんだ」と、ある日俺は思わず聞いてしまった。

 

「簡単だよ。必要な時だけ全力を出す。あとは、自分ができることだけを "Accept” 受け入れる。それで十分だろ?」


 肩の力が抜けたような言葉に、俺は返す言葉を失った。だけど、その日から少しだけ中村の「怠惰なPDCA」を真似してみることにした。


 一度落ち着いて考えたり、計画を少し先延ばしにしたり、なるようになると楽観視してみたり――すると、不思議と物事がスムーズに進むことに気がついた。計画が乱されるのは、必ずしも悪いことじゃない。むしろ、その「乱れ」が新しい道を開くこともある。


 もちろん、俺はこれからも計画をきちんと立てるだろう。だが、中村の言葉が頭の片隅に残っている。

 

「まあ、適度に怠けていいんじゃない?」


 その言葉が、俺を少しだけ自由にしてくれた。

ここまで読んでくださってありがとうございます!

考えすぎると疲れちゃうことってありますよね。

ときには流れに身を任せてみるのもいいんじゃないかな~と思います。

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