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天使か悪魔か人間か  作者: なー
4/5

「第4話」出会い

僕は現在、とんでもなく困っていた。意気揚々と家を飛び出し最寄りの迷宮に潜って早々に出くわした序盤の魔物『ゴブリン』と五分間文字通りの死闘を繰り広げていた。それもそのはずで、僕が手に入れた異能はどれも直接戦うような能力になっていなかった。どちらかというと『原子支配』なら戦える余地がありそうだが、何の練習もせずに迷宮に飛び込んだのだから当然今は使えない。


「はあ....はあ....」


五分間もゴブリンの攻撃をよけ続けていてもう体力も限界。異能を手に入れ、身体能力が向上しているとはいえ相手も魔物なのだ。人間と戦う基準で考えていた自分の思考の浅さを恨む。さらに、自分で言うのも恥ずかしい話だが僕は優しい人間に育ったのだ。喧嘩の一つも経験無しなのである。


そんなことを考えていたら、ゴブリンが奇声をあげながら突進してきた。迷宮は薄暗いため、先駆者達が松明を置いてくれていたのだがゴブリンの突進に続くように風が起こり松明の火が揺らぐ。迷っていたらやられてしまうので自己流ファイティングポーズで迎え撃つ。そう、拳である。飛び上がったゴブリンに合わせるように右拳でゴブリンの左顎を力いっぱい殴る。


「オラーーーー!!!」


自分のことながらなんて情けない咆哮なのだろう。しかし状況はよく読めていたと思う。飛び上がっている間は避けるという選択肢がないはずなので後のことは考えず、この一発に今の僕の全てをのせた。これが功を奏したのか殴られたゴブリンは足をピクピクさせながら絶命していた。


「生き物を初めて殴った...」


生まれて初めての体験だった。殴った時の鈍い音、殴った本人の右手がジンジンすること、魔物を殴って申し訳なくなってしまっていること。魔物相手でもこんな気持ちになってしまっていては最強なんかにはなれない。今後人と戦う場面だってあるかもしれない。なぜなら手に入れた異能で好き勝手やる犯罪者も存在しているらしい。そんなやつらに情けをかけないためにもこの気持ちは封印しておこう。


「それにしても、いつまでたっても拳だけじゃ太刀打ちできなくなるだろうから戦い方を身につけておきたいな。いくら異能を手に入れたからと言って本質は人間と同じだからなー、ゲームみたいに大きくは成長できないだろうな。てことは異能を上手に扱えないと」


異能を手に入れた人間がまったく成長できないわけではないのは知っている。僕の場合、異能を後七つ獲得できるみたいだし。しかしそれならなおさら身体的な強さではなく、異能に対する理解が必要になってくるわけで....


「でしたら、私がお力になれるかと」


「!?」


何も気配を感じていなかった後ろから声をかけられた!おい僕!これが魔物だったら殺されてるぞ、用心しろ!慌てて振り返って臨戦態勢をとってみる。漫画の見様見真似である。しかしそこに佇む女性を見て言葉を失った。白をベースとし、ヒラヒラと風に吹かれているワンピースを着こなす美女が立っていた。髪は金髪でボブカット、天使の輪に六つの羽....天使だ。今まで一度も見たことがなかったのに、今日だけで二度目である。僕何か悪いことしちゃったかな。さらに言えば僕、異能は貰っているんだけど。


いやいや落ち着け、力になれると言ってなかったか?てことは僕の異能についてかな。襲ってくる気配はないし、詳しく聞いてみようかな。


「えっと、あなたは?」


「これは失礼を致しました。私は天使のガブリエルと申します。懐かしい気配を探知しそれを辿ったら貴方様がとても素敵な戦いぶりをしてらしたので、思わず声を掛けさせていただきました。先ほど異能を上手く扱いたいとおっしゃっていたのをお聞きしたので」


あの情けない戦いをこんな美女にみられていたのか...恥ずかしくて死にそう。それは置いといて、やっぱり異能のことか!


「教えてくれるんですか!?」


「あら♡ウフフ....もちろんですわ。お役に立てるのならどのようなことでも申し付けて下さいませ。」


可愛い、この一言に尽きる。所作が令嬢のそれなのだ。汚してはいけないようなそんな感じ。さらに僕からしたら噂の「将軍」と同等かそれ以上に綺麗に見える。僕の好みだから?おほん...こう見えて僕は紳士だ。今、なんでもって...なんてお約束な会話はしないのである。


閑話休題。今僕的には『天使の采配』より『原子支配』の運用について聞いてみたい。『天使の采配』ってほとんどが今使えないものなんだよね。強いて言うなら『原子支配』とリンクして使えそうな「制御」の機能があるが、それより先に『原子支配』の使い方である。原子を支配するってだけじゃ何をどうすればいいかもわからないからね。後、『天使の采配』より()()が早い気がするんだよね。本当なら異能は隠しておくのが正解なんだろうけど、ガブリエルさんはどこか安心感を与えてくるんだよなー。さらに僕の()が聞けと言っているような気がする。僕は思った以上に美女に弱いようである。さっそくと僕が異能について話そうとしたら、彼女が割り込んできた


「その代わり、私のお願いを聞き届けて下さいませんでしょうか?」


ガブリエルさん、妙に僕を持ち上げてるな、そこまで堅苦しくしなくていいのに。


「お、お願いとは?」


お願いと聞いて思わず緊張してしまう。


「私を貴方様の配下に加えて頂けないでしょうか。」


え、なんで?これが最初にでた感想である。魔物や異能などの非現実が現実になってしまっている今の日本には群れを従え言語を話す悪魔がいる。そいつらを『魔人』と呼称するが、そいつらが手下の悪魔を配下と呼んでいるとテレビで見た。なんでもギルドの序列三位の人が対話を試みたとか。その魔人は強く三位の人でもやっとのことで倒したのだと言う。名前何だったかな。


「僕は普通の人間だから配下とかはちょっと...」


「貴方様が普通の人間?そんなにオーラを放っておきながら普通の人間は無理ありますわ!」


大声で言いきられてしまった。そういえばオーラなんて気にしたことなかったけど漏れてた!?そういえば今は異能があるのか。オーラの引っ込め方なんてわかんないんだけど...。


「オーラってどうやって引っ込めるの?」


「それは配下にして頂いてからお教えします。」


そういうガブリエルさんはウインクしながら人差し指を立てて口にあてる仕草をする。あ、あざとい。


「わかったよ。お友達という体でよろしく」


「お、お友達!?よろしいのですか!?」


なぜそんな驚いているのか。子供じゃあるまいしお友達になろうなんて恥ずかしいという意味だろうか。ここは日本だし、いくら天使だからって人に似た彼女を配下ですと友達とかに紹介することはできねーよ。そんなわけで対外的には友達ということで話がまとまった。ガブリエルさんはお友達♪お友達♪と嬉しそうにしていた。嬉しそうなら良かったがこちらが恥ずかしくなるので外では勘弁してもらいたい。


そういえば配下って何もしなくても配下ってことになるのかな?よくアニメとかは配下になる儀式をやってるのを見るけど。


「周りには友達って紹介するつもりだからそのつもりでいて貰えると嬉しいな。それと配下って今の口約束で足りるの?」


「いえ、私が正式に配下を名のるには貴方様からエネルギーを頂戴する必要がございます。」


え、僕エネルギーなんて持ってないよ。異能確認したとき現在貯蓄0%って表記されてたはずだし。そういえばたった今ゴブリンを倒したんだった。もしかしてゴブリンって魔物なのか?そう思い、異能を確認したら


貯蓄...現在貯蓄2%


あ、貯まってる。これを与えればガブリエルさんが配下になるのかな。でも2%って...


「ゴブリンしか狩ってないから少ないエネルギーしか持ってないんだけど」


そう、せっかく配下(友達)になるのならたくさんあげて僕なりの責任?を取りたかった。たくさんあげればいいって問題でもないのだろうが、ゴブリンで、はい配下ねなんて言いたくなかった。


「貴方様には天使の力が備わっている様子。それならば後ででも頂くことが可能です。」


なんで知ってんの?なんて空気の読めないことは言わない。しかし、僕の中でガブリエルさんは要監視人物に認定された。近日中にいっぱい集めてガブリエルさんに渡そう、常に機嫌を取っておいた方が良さそうだから。


「わかった!じゃあこのエネルギーを全てガブリエルさんにあげる!」


そう宣言した瞬間、自分にあったエネルギーが抜けていき少し脱力感があった。それと同時にガブリエルさんにエネルギーが渡ったのか、輝きだした。今の作業僕何もしてないんだけど...ガブリエルさんが抜き取ってくれたのかな?そんなことを考えていたらガブリエルさんからお返しとばかりにエネルギーを返された感覚に陥る。さらにびっくりなことに僕が渡したエネルギーよりはるかに多い量を貰ったのだ。


貯蓄...現在貯蓄27%


なんで!?ガブリエルさんから奪っちゃったかな!?


「あれ、ガブリエルさん。僕がエネルギーを渡したと思ったのにさっきより大量のエネルギー貰ったんだけど、ガブリエルさんは大丈夫?」


「ああ、それでしたら貴方様の異能のお力ですわ。「分離」の機能で配下になった者はエネルギーを献上するのでしょう。」


だからなんで知ってんの?僕より僕の異能扱うの上手そうなんだけど...。いちいち聞かないけどさ。


「それって大丈夫?エネルギーって大事なものじゃないの?」


「貴方様はエネルギーを貯めれば貯めるほど得をするトンデモ異能を獲得してらっしゃるようですが、普通はエネルギーを持っていてもなんの役にもならないのです。私がエネルギーを頂戴したのは儀式として必要だったに過ぎません。」


さっきから勉強になりっぱなしである。そう考えると僕の異能はやっぱりとんでもないんだな。これからもガブリエルさんにはたくさんお世話になるかもしれない。なんか隠してそうで怖いけど大事にしよう。僕の数少ない友人になるんだし...。


「じゃあ早速だけど『原子支配』をどう扱ったらいいか教えて!」


「フフ、承知致しました。」


恭しく一礼した彼女はとても綺麗で、その表情は嬉しそうだった。

しれっと復活しました。期間を決めた方が長続きすると思ったので、毎週月曜日投稿を心がけてみようと思います。暖かく見守って頂けると嬉しいです。

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