「第3話」確認
今回は少なめかもですが楽しんで頂けたら幸いです。
僕の小さなアパートには眩しすぎる光を受け目を空けると、もうそこには天使の姿はなかった。昼頃ということもあり電気をつけておらず薄暗く、これでもかと大好きなアニメのグッズがリビングの棚に並べられているといういつもの光景が広がっていた。いつもと違う点を挙げるとするなら、僕から湧き出る自信のようなものと力強さ。ついでに自分が発しているオーラまでも視認できるようになっていた。
ここまでで、すでに今まで体験したことがないような景色になっていた。
「本当に異能を手にいれたの....かな?」
そう、天使から何かを授かったのだろうけど異能の確認の仕方がわからなかった。天使がいたら直接聞きたかったのだが、光を発する直前に僕に吸い寄せられるようにしていなくなったから確認の仕様がなかった。
そこで僕はあるアテについて思い出した。友達に一人『筋力倍加』の異能を手に入れたやつがいた。そいつに自慢されたことなのだが、握力四十だったのが八十になったらしい.... 。文字通りの異能だった。
「なあ たけ、異能の確認の仕方ってどうすりゃいいの?」
「突然電話掛けてきたと思ったら何お前、異能ゲットしたの?今頃?」
僕の友達、武は急な電話に少し不機嫌になりつつも答えてくれる。たけは僕の数少ない友達で身近な異能持ちだった。僕はそんな彼を地味に頼ることが多い。今回も例に漏れず頼る。
「んー、なんか人それぞれ違うらしいぞ。俺は、開けゴマでも見ることができたけど大切なのは見たいと思う意思なんだと。だから言葉より、見るぞ!って気合の方が大切なんじゃね?」
ほほう、なるほど。言葉より見たいと思う意思なのか。てかなんだ開けゴマって.... 。そんな言葉では開いてほしくないものである。
たけは忙しそうにしていたので、そうそうに礼を言って電話を切る。
しかし、見たいと思う意思か。すぐにでも見たいのだがそれに応えてくれない様子。ならやはり自分の中で見たいと思う意思表示をすべく声に出してみることにした。やっと手に入れた異能である。ここは少し厨二心を取り戻し、それっぽく言ってみよう。
「ステータス」 『来い』
何かの声と混じったような気がしたけど、それを気にするより先に自分の頭に思い浮かぶ文字。ずっとずっと欲しかった力。一度は諦めた力。僕の人生を変える「力」
『原子支配』 『天使の采配』
見えた!僕の異能。あまりの感動に誰もいない部屋でガッツポーズをする。声が震え握った拳から血が出ていることに遅れて気づく。慌ててティッシュで出血を抑えて呼吸を整える。しかし落ち着いていられないことに、あることに気が付いた。何かとんでもないような物を見た気がしてもう一度異能を確認する。
『原子支配』、、、あらゆる原子を支配する力。この世に存在する原子ならその場で再現し、具現化可能。ただし、魔法は対象外とする。
『天使の采配』、、、「制御」「統合」「分離」「創造」 「貯蓄」を司る力。
「制御」...異能や自分の体の状態をコントロールする力。『原子支配』と並列に扱うことでより正確に原子を操作可能。
「統合」...異能やエネルギーを統合する力。許容量をオーバーしないように異能を統合強化できる。現在の許容量、異能七つ分。
「分離」...異能やエネルギーを分離し、与えたい対象に与える力。力を与えられた者は配下になる。配下になった者が手に入れたエネルギーは主人にも分配される。
「創造」...異能を創造する力。その場で自由に創り出すのではなく、器が満された時に創造可能。創造の際、契約者が欲している異能を創り出す。
「貯蓄」...魔に属するものを討伐した際、手に入れたエネルギーを保管しておく能力。現在貯蓄0%
絶句.... 。突っ込みたいことが山ほどあるがまず、なんで異能が二つあるの?え、普通って一つじゃないの?二つ持ちなんてほんとに数名しかいないって聞いたことあるのに。さらに言ってしまうと一つ一つとんでもないのだ。『原子支配』は名前からしてヤバいんだけど、それよりも二つ目がヤバかった。一つの異能に五つの機能があるなんて聞いたことない。五つの機能のうちの「統合」曰く、あと七つ異能が入るのだとか。冷汗が止まらない。僕は勉強ができないから上手く扱える自信がないんだけど。
せ、せっかく天使から力を貰ったんだから活かせるように練習しなくては。ここから特訓可能な場所と言えば、ある魔法使いが悪魔界のゲートを封印するために作った”迷宮”があったはず。そこで初めての魔物狩りに挑戦をしよう。
そう意気込む僕は客観的に見ても楽しそうだ。これからこの力を使って世界一強くなる夢を掲げ、帰宅したばっかりだというのに外に出る支度を始める。僕は何かに取り組むならゲームだろうがスポーツだろうが一番でなくては嫌なのだ。何かあると怖いので一応の携帯食料と水を準備して、
いざ、迷宮へ!
ーーーーー
彼のもとにすぐに向かうと決めていたガブリエルはあることに気づいて足を止めていた。
「もし、あの方に突然訪問したことで嫌われてしまったらどうしましょう...」
主に嫌われてしまったら私は生きていけない。体が裂かれるよりも辛いと感じるほど私は彼を主と認めていた。彼から力を貰ったから.... 。
そこで足踏みしていたばっかりに下級天使に、主への謁見の先を越されてしまった。思わず殺意が芽生えたけどぐっと堪えた。どちらにせよ私から謁見など恐れ多い。呼ばれてもないのに自分から会いに行くなど言語道断。許されざることだと思っていた。
「あの天使、堕天したいのかしら」
主の怒りを買って堕天するのは天使の中では究極の恥に当たる。しかし、その恥よりも私にとって危惧していることがある。それは同僚である、もう六体の大天使に先を越されることである!彼女たちよりは先に主に謁見し、配下の第一号とならなくては。天使にとって主の配下の一番目になることは何よりも栄誉なこと。なぜなら、一番気に入れられた天使は力を授かり、寵愛を受けるのだから。
「前回の一番はミカエルだったっけ。今回はなんとしても......! 」
『来い』
そのようなことを考えていた私を案じてか主の声が聞こえた。私は歓喜し返事をするのを忘れてしまいそうになっていた。慌てて私はこう応える。
「はい、ただいま」
ーーーーー
悪魔界に激震が走った。人間に力を与えてから動きを見せなくなっていた天使が動き出した。しかも、現在一番動いてほしくない気配が。
悪魔の天敵、七大天使。またの名を「セラフィム」。その一体が人間界へ降り立つ。そのことに驚き、普段団結をしない悪魔たちはどうするかと意見を交わしあう。だが彼らは一番大切なことを話し合わなかった。ガブリエルが何故、人間界に降りったのかを。