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カーマン・ライン  作者: マン太
第7章 未来

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2

 エクラの湖畔近くのログハウス。

 ソルは落ち着かない様子で、ある人物を待っていた。

 午前中にユラナスが迎えに来ると言うのだ。彼に会うのも惑星アウローラで別れて以来。

 そろそろかと思うが、アレクはまだローブ姿のままソファに横になっている。


「ユラナスや警備兵は何処に待機しているんだ?」


 既にシャワーを浴び終えたソルは、グラスに冷たい水を汲み、アレクへ持って行く。


「警備兵はこの周囲に見えない様、待機させている。ユラナスは敷地内の管理棟で同じく警備兵と待機しているはずだ」


 身体を起こしたアレクにグラスを手渡すと、その傍らに座った。


「そうか。なんか申し訳ないな…」


 個人的な事に皆を煩わせている気がして、更に落ち着かなくなる。それに、ユラナスはこんな旧敵が支配する星に、アレクを長時間置いておきたくはないだろう。


 アレクを直ぐにでも連れ戻したいだろうな…。


 しかし、アレクは、


「気にするな。元々そのつもりだった。たまには休養も必要だ」


 そう言うと飲み終えたグラスをテーブルに置き、手を伸ばしソルの頬を捕らえると引き寄せた。間近にブルーの瞳が迫り、目が離せなくなる。


「そろそろユラナスが来る頃だ。もう──」


 支度を──と言いかけた唇を塞がれる。

 初めは触れるだけだったキスが、段々と深くなって来た。思わずその腕に縋り付く。


「──っ…」


 アレクは一旦、唇を離すと、息のあがったソルを見つめながら。


「そのユラナスだが、奴の父親とカエルラ──いや。セレステの父親は同じだ」


「それって、どういう…」


 驚きの余り言葉を失う。

 先にユラナスとアレクの関係は聞かされていた。セレステ自身が兄だと言っていたが──。


「母の一夜の慰め相手がユラナスの父親、私の父の側付だったと言う事だ。血液鑑定の結果、分かった。結果はユラナスの弟でもあると示している。王位の継承者ではない。噂は本当だった訳だが、これで放逐した所で害はないな…」


「そう、だったんだ…」


 セレステはアレクの弟であり、ユラナスの弟でもある。当時、彼らの両親と側付の間に何があったかは全て闇の中ではあったが、事実は残された。

 アレクとセレステ、ユラナスが繋がっているという事実に不思議な縁を感じる。


「ユラナスは、なんて?」


「別に。そうですかとそれだけだ。端からいないと思っていたものだ。突然、弟だと言われ親近感が湧くと言うものでもないのだろうが。…あれの内心は覗かなければ分からないからな。お前への思いも、あの事故がなければ分からなかったくらいだ」


「確かに…。アウローラに残ると言った時、初めて怒鳴って引き留められたんだ。けっこう、熱い男だよな?」


 その言葉にアレクは小さく笑う。


「弟の件についても、私に遠慮して言わない可能性は高いな。思うところはあるだろうが…」


「セレステの事はどうするんだ?」


「それを言っていなかったな」


 アレクはソルの腰に腕を回すと。


「奴は監視付きでもといた場所へ返した。そこで生涯を過ごしてもらう」


「監視付き? それって──」


「ここエクラでな。アスールの監視付きだ。ユラナスも同意した」


 それは…。


 アレクに聞き返そうとしたところで、室内に来客を知らせる電子音が鳴り響く。ソルは玄関に顔を向けた。


「ユラナスだ」


「早いな…。少しくらい待たせて置けばいい──」


 アレクは腕を伸ばしソルを引き寄せると、軽く触れるだけのキスをする。


「そうはいかない。アレクッ──」


 そうは言いながらも、幾度目かのキスでようやくアレクの胸元を軽く押し返した。

 アレクは、それでも名残惜しそうに、幾度か口づけたあとようやく解放し。


「全く…。早く君との時間を充実させたいものだな」


「その…、予定なんだろ?」


 言いながら、頬が熱くなる。アレクは気にも止めていないが、ソルにとっては、アレクとの仲をまだ堂々と口にする事には慣れていない。


「ああ。フィンスターニスに帰れば直ぐにでも手続きを済ます。それまで我慢しよう」


 アレクにようやく解放され、戸口に出たが、ユラナスは待たされた事に小言も言わず、ただじっとソルを見つめたあと、


「お帰りなさい。無事で何よりでした」


 フワリと笑んだ。こんな優しい笑みは初めて見たかも知れない。


「俺の方こそ…。ユラナスに辛い役を押し付けて、すまなかった…。でも、あの時本気で引き止めてくれた事は忘れない。ありがとう」


 右手を差し出すと、ユラナスはそれを見つめたあと、両の手で包み込む様に握り返してきた。


「いいえ…。礼を言われる様な事は何も。ただ、あのままでしたら、死ぬまで後悔しない日はなかったでしょう。生きていて良かった…」


 それは、あの時以来のユラナスの素の感情だった。


「ユラナス。ソルを口説くなよ?」


 背後からアレクの声がした。肩越しに振り返れば、リビングを出た所にアレクが戸口に肩を預け腕を組み立っていた。

 ユラナスは今一度、口元に笑みを浮かべると、さあ支度を、と奥のアレクに声をかけた。



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