8
目を覚ましたのはベッドの上だった。
見慣れない白い天井。腕から伸びるチューブ。備え付けられた様々な医療機器。それが小さな電子音を立てている。
あの後──私は……。
「アレク様。お目覚めですか…?」
遠慮がちなユラナスの声がした。
傍らに目を向ければ、ベッドサイドに置いた椅子に座り、こちらを見下ろすユラナスがいた。
「…脱出、出来たのだな」
「はい…」
何処かユラナスの表情が暗い。実は滅多にそういった負の表情は表に見せないユラナスなのだが。
「ソルに…何かあったか?」
自分に関わる何か不都合な事が起こったのだろう。助かったのに、歯切れの悪い顔をしていると言うのは、そう言う事だ。
アレクはベッドの上で半身を起す。
察した通り、その言葉にユラナスの肩がピクリと揺れる。
「隠した所で直ぐ分かる事だ。また、何処かへ飛び出して行ったのか?」
「…いいえ。何処にも行ってはいません…」
「なら、どうした? 部屋に籠もっているとでも──」
途中、ユラナスの顔が伏せられる。膝の上で握りしめられた白い手が微かに震えていた。
まさか。
「……ユラナス。ソルは、《《どうした》》?」
ユラナスは意を決した様に顔を上げると。
「着陸時の衝撃で、機材の下敷きになり──…た…」
ユラナスの目が涙で濡れる。
聞こえない。
今、なんと──。
「遺体は回収不可能で、置いてこざるを得ませんでした…。唯一、そのネックレスは──」
「…嘘をつくな」
「アレク様?」
「ソルは、死ぬはずがない…。私を置いて──逝くはずがない…!」
胸元の石が存在を示す様に、ゆっくりと揺れた。




