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カーマン・ライン  作者: マン太
第5章 波乱

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8

 目を覚ましたのはベッドの上だった。

 見慣れない白い天井。腕から伸びるチューブ。備え付けられた様々な医療機器。それが小さな電子音を立てている。


 あの後──私は……。


「アレク様。お目覚めですか…?」

 

 遠慮がちなユラナスの声がした。

 傍らに目を向ければ、ベッドサイドに置いた椅子に座り、こちらを見下ろすユラナスがいた。


「…脱出、出来たのだな」


「はい…」


 何処かユラナスの表情が暗い。実は滅多にそういった負の表情は表に見せないユラナスなのだが。


「ソルに…何かあったか?」


 自分に関わる何か不都合な事が起こったのだろう。助かったのに、歯切れの悪い顔をしていると言うのは、そう言う事だ。

 アレクはベッドの上で半身を起す。

 察した通り、その言葉にユラナスの肩がピクリと揺れる。


「隠した所で直ぐ分かる事だ。また、何処かへ飛び出して行ったのか?」


「…いいえ。何処にも行ってはいません…」


「なら、どうした? 部屋に籠もっているとでも──」


 途中、ユラナスの顔が伏せられる。膝の上で握りしめられた白い手が微かに震えていた。


 まさか。


「……ユラナス。ソルは、《《どうした》》?」


 ユラナスは意を決した様に顔を上げると。


「着陸時の衝撃で、機材の下敷きになり──…た…」


 ユラナスの目が涙で濡れる。


 聞こえない。


 今、なんと──。


「遺体は回収不可能で、置いてこざるを得ませんでした…。唯一、そのネックレスは──」


「…嘘をつくな」


「アレク様?」


「ソルは、死ぬはずがない…。私を置いて──逝くはずがない…!」


 胸元の石が存在を示す様に、ゆっくりと揺れた。


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