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武装した兵士が姿を現し、あっという間に周囲を取り囲んだ。
その手にはレーザー銃が握られている。
腕に帝国の腕章をしているだけの軽装だが、体格の良さは一般兵のそれとは異なっていた。元は傭兵部隊なのだと、ケイパーは知らない。
その兵士をかき分けるようにして、進み出た人物がいる。
肩に零れる金色の髪が目に眩しい。
「ソル」
名前を呼ばれたソルは、弾かれた様に顔を上げた。
「アレク…」
小さい呟きが口から洩れた。それまで陰っていた表情が一変して光が差すように和らぐ。見たことのない表情だった。
それだけでこの男が特別なのだと知れる。
ケイパーは男を見返すと。
「あんた…。ソルを連れてった奴か?」
「口を慎め!」
ぞんざいな言葉に兵士がケイパーの首元へ銃を突きつけた。アレクはそれを手で制すると。
「そうだ。君は…ソルの友人か? 戦場でソルに助けられただろう? そうしなければ私が撃ち落としていたはず…」
カッとケイパーは頬を染めると、アレクを睨みつけた。
「ソルが助けなくったって、お前なんかにやられるもんか。俺だってソルだから攻撃を止めたんだ。あんた、あの時、やっちまえば良かった! ソルがいたから俺は…」
「後では何とでもいえるな。まあしかし、お前も能力者の片鱗があるようだな? が、こちらに来る気はないだろう? 来ればソルと共に重用するが…」
「誰が行くかよ! あんたらには随分仲間をやられた…。死んだって仲間になんかならねぇ!」
アレクは薄く笑うと。
「先ほどの会話を聞かせてもらった。お前のように半端な能力者でも、連合にいれば手を焼く。ここで撃ち殺してしまった方がよさそうだな?」
すると傍らにいた兵士が、手にしていたレーザー銃を更にケイパーの喉元に突きつけた。
ケイパーは息を飲む。ソルが慌てて止めに入った。
「やめてくれ! アレク。ケイパーは悪い奴じゃない! 友だちなんだ…」
「友だち…か」
アレクは鼻で笑うと、ソルに一瞬だけ視線を向る。
その後、素早く懐から取り出したレーザー銃で、有無を言わさずケイパーの胸を撃ち抜いた。
「っ!?」
熱い衝撃が身体を貫く。
ソル…。
そこでケイパーの視界は暗転した。
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ひょろりとした長身の身体が、どっと床に崩れ落ちるように倒れた。
「ケイパー! アレク、どうして…っ?」
格子に駆け寄ってすぐ足元に倒れたケイパーに声をかける。その胸元が血で染まっていくが、誰も手当てをしようとはしない。
このままじゃ、ケイパーが!
「ソル。そいつの右手を見ろ」
「!」
いつの間にかその手には銃が握られていた。ソルからは陰になって見えていなかったのだ。
「何もしなければ、私は撃たれていた。ここに倒れていたのは君の友人ではなく、私だったかもしれない。…それでも、この『友人』を助けろと言うのか?」
試されていると思った。
ここで選択を間違えればきっと、アレクとは二度と会えないと感じる。
俺が守りたいのは──。
震える手のひらを握りしめると。
「…言わない。…アレク。俺を…連れて行ってくれ。頼む…」
その瞳をしっかりと見つめ返す。
「分かればいい…。格子を開けろ。それとこの青年を医務室へ連れていけ。急所は外した。死にはしない」
「は!」
兵士がケイパーに処置を施し何処かへと運んでいった。格子が開けられ、ソルは解放される。
開いたところへアレクが手を差し出した。
「来い。二度と迷うな」
「…はい」
アレクの手を取ると、しっかりとそれを握り返された。そこからアレクの強い意志が伝わって来るよう。
俺はこの手を離せない。離したくない──。
強くそう思った。




