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カーマン・ライン  作者: マン太
第2章 流転

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4

「アクセスがあった?」


「はい。辺境の惑星、中立国です。連合の艦艇に救出されそこへ避難した模様です。その星からアレク様のデータにアクセスありました。現地の駐在員に確認したところ、同日、確かに子どもが尋ねてきたと…」


 アレクはイスから身を乗り出す。


「それはソルだ。間違いない。どうした?」


「衛兵が対応中に去ったと言うことです。その後、彼のデータが基本データ以外、探る事が出来なくなりました。連合の少年兵に志願したようです」


「それは…本当か?」


 ユラナスは頷く。


「孤児であるなら尚更でしょう。戦災孤児を兵士にするのはどこでもあることです。彼を探すのはやめてはいかがでしょうか? あのネックレスはいずれ取り返すとしても…」


 ユラナスは幾らでも手はあると考えていた。

 どこの部隊に所属したか探ればすぐにわかる。流石に連合軍の中にいる時は手は出せないが、休暇ともなればどこか外へ出るだろう。


 その時を見計らって、奪えばいい。


 あれはアレクの正式な血統を示すものだ。

 何処の者ともわからない子どもが持っていていいものではない。抵抗するようなら始末してしまえばいいのだ。

 しかし、アレクはイスに背を預けると、口元に手を当て思案顔になる。


「…お前のことだ。ソルの居所などすぐにつかめるだろう? 見つけたらすぐに知らせろ。ネックレスを取り戻そうと、くれぐれもバカな気は起こすなよ? あれは、ソル込みで取り戻す。その為に与えた印だ。彼が生きていなければ意味がない」


 とっくにお見通しだったらしい。そう言われてしまえば手も出せない。ユラナスは視線を落とすと。


「子ども相手にそんな物騒な手は使いません…。分かりました。見つけ次第、報告します」


「三日だ。お前なら出来るだろう?」


「分かりました…」


 ユラナスは深々と頭を下げ退出した。


+++


「…志願か」


 ユラナスが去った後、アレクは席を立ち、宇宙を映し出すスクリーンに目を向けた。

 何万、何億という星が、ゆったりと画面を流れていく。


 あのまま、無理にでも迎えに行けば良かった。


 戦闘が始まり、初めは小惑星の影で傍観していたものの、身内同士の争いはなかなか収まらず、次々と飛び火していった。

 そこに何時までもいることができず、結局安全な距離まで離れた。

 その間にソルのいた工場は破壊され、避難した輸送船も攻撃を受け。その後、ソルは行方不明となった。

 それが今、ようやく生存していることが分かったのだ。

 行き先は辺境の惑星。中立地帯。

 今すぐにでも迎えに行きたい所だが、上からの指令でこの場を動くことができない。雇われとは言え、流石に雇用主の指示を無視できなかった。

 せめてその行方を追う事で気持ちを落ち着かせる。

 なぜ、これほどまであの少年に自分が固執するのか、ユラナスから見れば理解できないだろう。幾ら能力者の片りんを見せたからといって。

 しかし、その能力の発現の仕方が予想を超えていたのだ。

 戦闘機に残された飛行データにも、その異常とも言えるデータが記録されている。

 通常では有り得ない反応速度、機敏性。


 これで敵と相対すればどうなるか。


 期待は増すばかりだった。

 しかし、それだけかと問われれば、否となる。

 たった、一週間程度、共に過ごしただけなのに、あの時が何にも代えがたい記憶となって、自身に刻まれていた。


 あれほど、幸福な時間を今まで過ごしたことがあっただろうか? 


 そう思えるほど、ソルと過ごした日々は深く心を揺さぶった。

 毎朝、同じ時間に起きて食卓を囲み、日中は二人、額を寄せ合い修理に明け暮れ。

 途中、ランチ休憩を挟みながら、夕方日が暮れるまで熱中し。


 たったそれだけのこと。


 それなのに、思い出す度、心の内が温かくなるのを感じた。

 傍らではにかんだ笑みを見せるソルがいて。からかえば本気で怒ってみた。それを、愛おしく感じて。

 

 ソルだからこそ。


 あらゆる意味で手放したくないと思う。

 他人が見れば、まさか、あんな子どもにと思うだろう。だが、一旦、惹かれてしまえば歳など関係ない。


 あれは、私がみつけたのだ。


 誰かの手に渡ることなど考えたくもなかった。


 そうなる前に、なんとしても取り戻す。


 柄にもなく高揚しキスした自分を、戸惑いながらも拒絶しなかった。

 それに、自分のデータにアクセスしたと言う事は、会う気があったと言う事だ。


 ソル──。


 今は無事生きていたことを感謝しつつ、ユラナスからの報告を待つしかなかった。


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