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黒の空を彩る  作者: Alice
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0人目の想い出【前編】{side:スコルド}(当主前編後)

【スコルド・前編】

リティに前線を任せれるようになった頃、ティーカップをもってきたアスタリシアが「姫様は外見はヴィア様そっくりなのに、中身はスコルド様に似ましたね」と言った。

書類から目を離しアスタリシアを見る。「初めてお会いしたのはまだ霧の都にいた頃でしたね。あの頃はヴィア様に対して失礼なやつと思ったのですよ。」と嫌味のように言った。



ヴィアと初めて出会ったのは、わたしが当主となったばかりの頃。熊の討伐に出た帰りだった。あの頃はまだ戦況が落ち着いていて国境も平和だった。

屋敷に帰るのに近道に通った森で霧に囲まれた。方向感覚を狂わす霧と何かのうねり声、失敗したと思った。


それでも早く帰らねばと前に進むと、水の音と歌声がしていた。その声に惹かれていった先にいたのがヴィアだった。

水浴びをしていたヴィアに見惚れてしまったが、すぐに目を離し後ろをむく。「すまない」と謝ると「大丈夫ですよ」と許してくれたが、傍付きのアスタリシアは許してくれなかった。

服を着て話をする。ここが霧の都で彼女は霧猫の一族なのだという。霧猫ならば、猫はいないのかと聞くと、病死したのだとか。猫は1人の生涯に1匹だけど決まっていて、産まれるのも死ぬのもタイミングがほとんど同じなのだという。ヴィアの命はもう長くないということだ。


ヴィアと話したいと思った。最初は一目惚れだったのだろう。それから何度もヴィアに会いに行き話をした。

そんな日が続くと、彼女の傍付きの2人は次第に心を許してくれた。詳しく聞くと傍付きではなく、友なのだとか。

優しい彼女にどんどん惹かれていき、「どうかわたしに着いてきてはくれないか」といった。


彼女は喜んでくれたが、彼女の父は反対した。「元々体の弱い娘を連れていくとは、娘に死ねと言ってるも同然。ここ以上の薬学なんてものはないのだから。」といった。

自分より一回りも年下であり、成人したばかりのヴィアを連れていくのに反対されるのは想定内。何度も足を運び、説得しに行った。

折れたのは彼女の父だった。そしてその時、ヴィアの寿命が残り2年もないのだと説明された。


チェーロ家に嫁ぐことが決まった彼女は2人を連れていきたいといった。アスタリシアとネアルはヴィアにとって我が子同然で大切なのだという。

ヴィアが嫁いでから1年も立たずに子を成した。

産まれてきた女の子の名をアスタリシアとネアルの2人から文字を貰い、リテルシアと名付けるのはどうかと言うと彼女は笑っていた。


リティが大きくなるにつれて弱っていくヴィア。何も出来ない自分の不甲斐なさに苛立ち、悔やんだ。だが彼女はずっと笑っていた。



ヴィアが死んだ。リティが5歳の時だった。

最初に聞いていた時よりも長く生きてくれたがそれでも短すぎた。彼女と出会って6年、とても幸せだった。

家臣からは他の子を為せと言われているが、ヴィアとリティを愛しているからこそ他は要らないと判断した。リティが当主として愛される子になるよう育てると誓った。わたしがどれだけ嫌われようとも、リティが生きてくれるのならばそれでいい。

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