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黒の空を彩る  作者: Alice
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6人目の思い出{side:ブレア}(武器庫の管理者後)

【ブレア】

俺は風の綺麗な草原で産まれ育った。そこで家族に草原を意味するブレアと名付けられた。何処の国にも属さない平和なこの村は、武器や装飾品が精巧な作りで帝国の方でも有名だった。


ある日突然人攫いにあい、奴隷として売られた。暴れようとしたが、大人しくしていれば他の家族や村人に手を出さないと約束した為それを信じて従順にしていた。


オークションに出された俺を買った奴は顔がいいからという理由で傍付きにした。何もせずただ微笑んで横にたっているだけでいいと言われていた。

そんな暮らしが数年続いたある日、俺を買ったオークション会場に主人と共に向かった。

そこで、とある武具が売られてるのを見つけた。とても見覚えがある。あれは父が作ったものだった。よく見るとその隣にある小さなブレスレットは俺が作って友人にあげたものだった。

あのブレスレットは繋ぎ目がなく友人の腕にあうようにつくったからそれが売りに出されてるはずがないのだ。


その夜、首輪を外し逃げ出した。鍵なんかなくても外すのは造作もない事だ。

この国に連れてこられた時からいつでも帰れるようにと何度も調べた、あの村までの道は覚えている。約束を守るため1度も帰ってはいなかったが。


数日かかり、村のあった場所に着いた。何もなかった。村にあった中で1番大きかったのはたった一つの学舎。よく見ると植物に呑まれていた。あいつらは約束なんて守る気がなかったようだ。



物陰から男が出てきて警戒すると、「お前、ブレアか…?」と話しかけてきた。誰か分からないでいると、彼は「僕はお前がブレスレットをプレゼントした女の子の兄、ロッセだ」と言った。


話を聞くと、俺の行方が分からなくなってから数日後に村が襲われた。抵抗するやつは皆殺しに、従順なやつは奴隷として売られたそうだ。彼は村外れに来ていたから偶然助かったが、妹は幼い子を庇って殺されたのだとか。その後は金品を奪い、村に火をつけ去っていた。



彼はここの付近をアジトにしていた盗賊団イレフに拾われたそうだ。今は盗賊として生きていると。仲間に見つかると面倒だから早くここから去れと言ったが、時すでに遅く盗賊に囲まれていた。盗賊は外部の人と話してるとこをみて裏切りと判断し、ロッセと俺を帝国の貴族に売り飛ばした。そしてまた奴隷として働くこととなった。


それからどれくらいたったかは覚えていない。ただもう生きるのに疲れていた。

買い出しの為に街を歩いていると綺麗な髪飾りをした青年とぶつかった。すまんと頭を下げる。「大丈夫、もうじき空が来るよ。」と突然耳打ちされ振り返る。が、最初から人なんていなかったかのように誰もいなかった。


帝国の教会がよく言っていたが、自分の居場所、守りたいと思ったり、守ってくれる人や物を総称して空と呼ぶらしい。空が来てくれるなら早く見つけてくれればいいのに。


あの青年と会ってから数日後、いつもより一段と帝都が騒がしかった。盗賊退治に行っていた帝国軍が帰ってきたらしい。主人の貴族は慌ただしく帝国軍と会合をしていた。「こんなに早いだなんて聞いていない。早く準備を進めねば」と言った話が聞こえてきた。


今がチャンスだ、逃げよう。とロッセがいい、俺の首輪を外した。草原の村は鍛冶屋の村誰しもが高い技術を持っていた。

そこで雇われていた奴隷12人の首輪も外し、「誰が死んでも振り返ることなんてせずに幸せになれ」とロッセが言うと全員バラバラに逃げ出した。彼は俺に外套を着せて「お前は顔がいいんだから女の子格好してでも生き延びろよ。」と冗談で言ってきた。


帝都を抜けて、旅をするのも悪くない。と隠れて過ごし数日かけて帝都の門へ向かった。それまで一緒に逃げ出した奴隷やロッセとは会えなかった。


帝都のたった一つの出入口、二重門を超えてしまえば帝都から出ることができる。内門は馬車の隙間を超えて来れた。あとひとつだ。

外門を抜けた先で憲兵に捕まってしまった。しかも、通行証無しで入ろうとしたと間違われている。入ろうとしたわけじゃないと言いたいが、奴隷が主人なしで移動するのは厳禁。逃げるしかないと走り出した。

後ろで発砲音が聞こえた瞬間に、誰かに引っ張られて転んでしまう。黒いドレスを身にまとってナイフを構える少女、彼女は自らを貴族と言った。


彼女の馬車に乗り、また帝都に引き返すこととなった。

逃げてきて行き場がないと伝えると彼女は俺を雇ってくれるといった。この時何故か青年が言った言葉を思い出した。「空が来るよ」と言っていたのを。



彼女の屋敷についたが、用事があるとすぐに出ていってしまった。屋敷を案内してくれたアスタリシアさんはお姉さんのような人だった。服の希望はあるかと聞かれ、隠れるためなら女服でもいいと言ったロッセを思い出し「女物でも構わないか」と聞いた。

不思議がることもなくメイド服を持ってきてくれてそれを着るようになった。


全体を案内してくれて武器庫に着くと、想像していたより何倍もの武器が収納されていた。手入れがされていない武器が多く、全て確認するのに3日かかった。1日1回、夕方頃にアスタリシアさんは声をかけてくれて風呂に入りまた武器庫に戻る。武器の手入れに没頭していると武器庫の扉が開いた。アスタリシアさんが声をかけるにしては早い気がするがと思ったらお嬢様が帰って来ていた。

メイド服の俺をみて付き人は驚いていたから迷惑か聞くと問題ないという。ならば良かった。



「これからよろしく頼む、お嬢様。」

あんたが俺の空なのか見極めさせてもらう。


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