5人目の思い出{side:シャルロッテ}(帝国軍の女軍人後)
自分が軍人になろうとしたきっかけは、友人の死だったと思う。
帝国の学舎は5歳から14歳まで、各科3年制通う事になっている。学舎に通うことが決まった時は嬉しかったが、元々人見知りが激しく泣き虫だった自分は初等科に入った時不安でいっぱいで泣きそうになっていた。そんな時話しかけてくれて、偶然にも同じ区画に住んでいたからと一緒に通ってくれてた。その子のことはシアと呼んでいた。
その子の父親は軍人で、最近「おとうさんが、だいよんぐんのせきばんをもらったの!」と自慢していたのを覚えている。あの頃は分からなかった「だいよん」と「せきばん」。せきばんは席番で各部隊にある役職で、上からから隊長、副隊長と3席から8席まである。
そしてだいよんは第4部隊。帝国軍は部隊が多く、各部隊数字がある。年間何回かある更新戦で優劣をつけるため、2桁目の小さい部隊ほど優秀とされている。
1桁目は部隊の役割を現していて、第1から第3は主戦力が集まる。第4は衛生兵、第5は補給兵、第6第7は遠距離部隊。自分が所属していた第8は最前線の特攻部隊。
つまりシアの父親は第4部隊の席番持ち、平民の家系で大出世だった。
席番を貰った父に何かプレゼントをしたいと言ったシアに、自分の母は花束を作るのはどうかと提案した。花屋をしている母が花を用意してくれて自分の家で日が暮れるまでで花束を作っていた。
プレゼントが出来てあとは包むだけだが、これからすれば遅くなるからまた明日おいでと母が言った。自分は母と二人暮しだから2人で送りに行くと言ったが、送られるのを断わった。今は月が明るいから帰れるよと言ってシアは帰路についた。
次の日、シアを学舎に行こうと誘いに行くとシアの家の周りに人が集まってた。話を聞くと、シアの家族がみんな殺されたのだという。昨日あんなに嬉しそうだったのに、また明日って言ってたのにと悲しくて辛くて泣いていた。
家に帰っても母の仕事の邪魔になるから、悲しくても学舎に行かないととゆっくり歩き出した。
泣いてる自分の近くにいた男は軍服を着ていて4の腕章をつけていた。彼は下を向きながら震えていたのを覚えている。軍人であれば、彼女の父親の知り合いで殺されたと知って駆けつけたのかと思った。通りすぎる時に見えた口元が笑っていたのが印象深く忘れられなかった。
高等科に上がった頃に母が亡くなった。二人暮しだった自分を軍人の叔父は学舎卒業後に帝国軍養成機関に入ることを条件に引き取ってくれた。
養成機関に入ってからは通常5年かけて軍人としての地位を得られる。けれど、自分はたった2年で養成機関を出て第8に入隊し特攻部隊として最前線に出て戦い始めた。
軍人になって半年経つ前に叔父がなくなった。戦場で殉職したそうだ。帝国のある大陸にはいくつもの小国があり、帝国を落とそうとしてくる国も少なくはない。東南にあるチェーロ領ほど過激な所は少ないが、それでも戦場たくさんありそれだけ死者が出ている。
自分は戦いのセンスがあったらしく、1桁の部隊に入隊してから数年で席番を貰う事ができた。3席になってすぐにチェーロ領との共闘が命じられた。
チェーロ領の戦鬼が見れると楽しみにしていたのだが、来たのはその娘で残念に思った。
自分はおそらく強い人が好きなのだろう。初恋はシアだったのだと思う。泣き虫だった自分を守ってくれる強い人で忘れられないのだから。
その次は軍人として生きる力をくれた叔父、軍人になってから戦い方を教えてくれた先輩が好きになった。
だが全員、簡単に死んで行った。
だから次に好きになる人は強くて死なない人がいい。
盗賊イデフ討伐戦の全指揮を取っていたリテルシアに目を奪われた。誰よりも幼いはずなのに、誰よりも力強く大きく見えた。
戦い方も綺麗で、誰よりもかっこよくて死ななさそう。すぐに心を奪われた。
告白したが飼い犬が嫌だからとフラれてしまった。ならばこの首輪を捨てて会いに行ったら驚いて拾ってくれるだろうか。
「リテルシアお嬢様に忠誠を誓います。」
愛する人が自分よりも前に死なせない為に