0人目の想い出【後編】{side:スコルド}(当主前編後)
【後編】
わたしが初めて死を知ったのは6歳の時。
産まれてすぐの妹が首を折られて死んだ。
だから、ヴィアが妊娠したのを隠し極小数の人しか携わらないようにした。重鎮達にも分からない場所で、密かに産まれた。
ゆづきを見つけた時、彼女の目に宿る黒を見て6番目の兄を思い出した。
戦闘と貴族社会との両立、黒を知り目に宿した時に周りを巻き込み自死した。あの黒は危険だ、リティに触れないようにと殺したかった。だが、リティが選んだのは傍に置くこと。ならば見守ろう。
手元に置くなら細心の注意をするべきだ。自分の奴隷に殺された2番目の姉と同じようにならぬように。
だから「喉元噛みちぎられないように」気をつけろ。
ヴィアが死んだ時、リティは5歳だった。
感情は戦闘時に不利になるから、隠し通せと言って育ててきた。幼い子供に無理な事のはずなのに、それを守り母の死の翌朝から笑うことも少なくなってしまった。
心の拠り所を失った子供には何をしてあげればいいのだろうか。
6歳になった時に薬毒耐性を付けるのを優先させてもらう。わたしが7つの時に死んで行った3つ下の弟は、毒矢を受け耐性がなくそのまま死んでいった。もう少し早くに耐性を付けさせたかったが、それより前になると体がもたないらしい。ならば仕方がない。
毎年悩むのが誕生日プレゼントだ。
7歳のお祝いは使えるものがいいだろう。
探している帰りに情報屋との交渉にいった。人の心に入り込むのが得意な、リティと歳の近い情報屋。全てを見通せる目はリティの為に使ってくれ。多くは望まないからリティの心の拠り所となってくれればと思う。
戦闘に出るようになり、社交会へ行かなくなっていった。人との交友関係を築いて欲しいとこではあるが、両立は難しいだろう。
人を簡単に信頼してはいけない。自分の身は自分で守れ。
リティが15になった。少しずつだが、領地運営を任せれるようになっていった。街の視察も問題なく行えている。連れ帰ってきた子供の目はまたしても黒を宿していた。あの子は黒が好きなのだろうか、何処かで見たことある気がするが。
帝国では17で成人とされている。今日、リティが成人した。子供の成長とは早いものだというが、その通りだった。
わたしはあの場所へはもう入れないからアスタリシアに「誕生日と成人のお祝いに、霧の都へリティを連れて行ってくれ」と頼んでおいた。
問題なく連れて行ってくれるだろう。
帰ってから感想を聞いてみたい所だな。こことは違い、霧に囲まれ静かで優しい場所。喜んでくれるといいのだが。
敵も本格的に力を入れてきたようだ。少し前の盗賊討伐もなにか裏がありそうだった。
悪い予感が的中してしまった。
圧倒的な人数差でこちらが不利なのは分かっているが、リティを逃がすことだけを考えれば問題ない。リティの元には行かせない。絶対に。
ここに残るといったリティをアシルへ投げた時に、大きくなったのだなと改めて思った。嬉しさ半分、この先大きくなるのが見れないという悲しみ。
だが後悔はしていない。ただ、幸せに生きて欲しい。
アシルがリティを連れて走り出した時、安心した。あの子はわたしが選んだ子だ。必ずリティを守ってくれるさ。
初めから仕掛けていた爆弾を起動させた。敵も火薬をもっていたのだろう。次々と誘爆していった。
燃える火の中で大刀をもち走り回る。焼ける匂いなんて気にならなかった。
周りから生きた人の気配が無くなり、足を止める。燃える体は熱いはずなのに、痛いはずなのにもう辛いことなんてなかった。
リティが連れてくる黒に見覚えがあったのは
あの子の瞳に映る自分の瞳だったのだな
「ああ、ヴィア。会いに来てくれたのか」




