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黒の空を彩る  作者: Alice
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1人目の思い出{side:ゆづき}(幼少期後)

【ゆづき】

私が生まれたのは小さな村。この村ではあまり見ない綺麗な黒髪の母は幼い頃に自国を出て、この国へ渡ってきた異国民である。そんな異国民である母をこの村の人達は受け入れてくれて良くしてくれた。そんな村が、両親が大好きだった。

母の故郷は閉鎖的で、他国との国交があまりない東の端の国。色々あって小舟で国を出たが、嵐にあい流れ着いた先がこの国だった。その流れ着いた先で若かりして頃の父と出会い、助けてくれたのだと母は言っていた。


母に似たこの黒い髪は太陽に当たるととても綺麗で、昔から好きだった。母がいつも髪を解いてくれて結んでくれる。可愛いと褒めてくれる。裕福ではないが、平和で幸せな暮らしだった。


この村にある話を父はよく読んでくれた。あの森を超えた所にある帝国には恐ろしい鬼が住んでいて、悪いことをしたら食べられる。森の向こうに行こうとした者は誰も帰って来ない人喰い鬼だ。だがいい子にしていたら守ってくれるいい鬼でもある。森の中に迷い込んだ子供を探しに母親が入ったことがある。その時に鬼と出会い、よく見ると意識のない我が子を抱いて居る。死を覚悟したがその鬼は殺すことはせず、子供を置いて村のある方を指し、「もう迷わないように」と言っていた。子供にどうして森に入ったのかと聞くと、おばぁちゃんの薬がどうしても欲しくて鬼に頼みにいった。お金も足りず、この村にはおばぁちゃんを助けれる医学もない。鬼に頼めればおばぁちゃんは助けられると思ったそうだ。「ほら!お薬貰えたんだよ!」と見せてくる子供に母親は泣きながらもう二度とこんな事はしないで、でもありがとう。と伝えた。それから森を綺麗に大事にする習慣がこの村に出来たんだよ。だから森を大事にして人に優しく生きなさい。鬼が守ってくれるように。

私はこの話が好きで、よく読んでもらっていた。



終わりは突然だった。


いつものようにあの話をしてもらい寝ていると、夜だと言うのに外は明るく、外は騒がしい。お祭りでも無いのにと不安になる。父は外を見てくると言った。それがなんだか怖くて行かないでと縋り付き泣いてしまったが、父は私を撫でて見てくるだけだからと言い玄関へ向かって行ってしまった。


母は私を守るように押し入れに隠れ、父の帰りを待っていた。幾ら待っても父は戻ってこず、それどころか父が居るはずの玄関から数人の男が入ってきた。私たちが隠れている押し入れに向かって銃を撃ってきた。全弾母に当たった。私に「生きて」といい、 そのまま息絶えた。

押し入れから流れる血を見た男が中を見て「綺麗な女なのに撃ち殺しちまった。もったいねぇ」といい、母を引っ張り出す。私も見つかってしまった。「だが、こいつは売れるな」と下卑た笑みを浮かべ私の髪を掴んで引き摺って運んだ。

玄関の外で父が来ていた服が燃えていた。肉を焼く匂いが鼻につく。村の出入口まで連れてこられ、馬車に乗せられた。

中には子供が沢山乗っていて、泣き声が響く。隣村の子供もいることに気がついた。

順番に馬車が出ていく。私が乗っている馬車も走り出した。それからしばらく森の中を走り出し続けていた。たまに食事として水と食料を投げ入れてきた。暴れだしたり、逃げ出したりした子供は殺された。何度も見るうちに、みんな大人しくなっていった。


それから数日後、大きな音と共に馬車が倒れ、外に放り出された。久々に出た外で見たのは、私達を攫った男達が殺されていく。乗っていた馬車だったものは大きな火をあげ燃えていた。

私は殺された人の山から出てきた手に引っ張られその中に入った。引っ張ったのは友だった。彼女は、鬼が来てくれるといいね。ゆづきは生きて、と言いそのまま息絶えた。何故私の周りは私を置いて死ぬのだろうかと。大事なものを奪われるのはもう嫌だ。邪魔なものは全部私が殺す。私が、私が……



馬車を襲った奴らが去った後、違う集団が近づいてきた。

中には私と同じくらいの子供もいた。1団を率いている男を「父様」と呼んでいた。

父様と呼ばれる男の姿と父が話してくれた鬼の姿が重なった気がした。何故か分からないし、男の姿はどう見ても人なのに、何故鬼に見えた。

少し動いてしまい、ガサッと音がなった。ナイフを構えて子供が近寄ってくる。殺されるくらいなら1人くらい殺してやると、その子供を睨みつけ、折れた剣の刃を構えた。手が切れて血が流れる。

後ろで男が殺せと言っていたのが聞こえた。鬼に食べられる。私は悪い子なんだろうな。


そんなことを思っていると突然子供は、「リティの為に死んでくれませんか?」と微笑みかけて手を差し伸ばしてきた。


頭の中ではたくさんの?が浮かぶ。何を言っているんだ、と。だが、その子供の後ろに母と物語の鬼が見えた気がした。優しく微笑む姿は大好きだった母。そして、手を差し伸ばす姿は鬼に、父がよく話してくれた「鬼が守ってくれる」と言う話に見えた。あの森を越えようとしてたのだから、ここは鬼の住処。鬼が居てもおかしくは無い。

家族も村も友も失って、行く先も帰るところもないのに、生かしてくれた人達が「生きて」といった。この子供に縋ってもいいのか、と。自然と手に握っていた刃が落ち、さし伸ばされた手を取ってしまった。


「リテルシア・チェーロと申します。貴女のお名前は」と微笑みかけてきた。


「私は ゆづき です。命尽きるまで貴女の傍にいさせて欲しい」と途切れながら名乗った。



それからは、子供のことをご主人と呼ぶことにした。

ご主人の屋敷に戻ってから私の世話をしてくれた。


鉄扇を貰った時、ご主人を私の大事なものを二度と踏みにじられないようにと誓った。

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