小休止
エストはゴブリン事件の時に、洞穴の前で二人を発見した様子を話してくれた。
アレックスは時折出る彼女の嫌味に、繰り返し相槌のように謝り続ける。
「洞穴の中に、ゴブリンとゴブリンの赤ちゃんが亡くなってたの。きっとアレックスが戦ったのは親のゴブリンで、奥さんと子供がもう死んでしまっていることが判らずに、ずっと洞穴を守ってたのね・・・」
その赤子ゴブリンには、まだへその緒がついている状態だったらしい。
おそらくあの場所で出産をし、それが原因で2匹とも命を落としたのだろう。
「そっか・・・。だからいくら脅かしても、あのゴブリンは逃げなかったんだ・・・」
アレックスは胸が痛んだ。
臆病なゴブリンが剣を持った人間に立ち向かうのは、どれ程の勇気がいるのだろうか。
(それに比べて、僕は何をしたかったんだろう・・・)
中途半端な決意で剣を持ち出し、色々な人に迷惑をかけた。
エストは急激に落ち込んでいくアレックスを見て、あわてて言葉をつけ足した。
「けどさすがバッツ様の子ね!1人でゴブリンをやっつけて村を護ってくれたんですもの!」
そう、エストはゴブリンを倒す過程を見ていないから、結果からそう映るのだ。
その一言は、そのつもりが無くてもアレックスの心を抉った。
アレックスに村を護る力など無い。
今でさえ、本心は怯えながらなんとか護衛をこなしているのだ。
「どうして僕がエストの護衛なんだろう・・・。お母様だったら間違いないのに・・・」
彼はぽつりと疑問を述べる。
「どうしたの・・・?護衛は嫌だった?」
「・・・何かあった時に、エストを護れるか心配で。・・・やっぱりお母様の方が良かったんじゃないかな」
広がる青空とは対照的に、アレックスの心には低く雲が垂れ込める。




