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スライム

おそらくはスライム状の液体だったと思う。

それが俺とサラの上から部屋を覆うくらいの範囲で降ってきた。



何故だかわからないが、その液体を見て俺はそれを連想した。


俺は両手を上に挙げる。

「転送ぉぉぉ!!!」


最早それは恐怖から逃れるための絶叫に近かった。

天井を光が包む。


上を見ると、その魔法だけでなく屋根まで飛ばしてしまっていた。


どこに飛ばされたんだろう?

何とか上手くいった。


人の上に落ちたりしてないことを祈る。


「ありがとうシン、また助けられたな」


「く、何だ今のは?」

俺は魔力を大幅に無駄遣いしてしまったことを悔いながらそう言った。


「ああ、今のは肉と骨を溶かして、人間を不治の病にかける酸と毒のスライムですよ。フフフ、しかし今のは面白いですなぁ。女神の魔法やスキルにはあんなの無い筈ですがねぇ……ククク面白い」


ああもうどうしようもねぇ。

コイツなんか余裕だし、普通にやっても絶対勝てる気がしない。


「ですがアナタ魔力切れ寸前のようですねぇ」


ちっ、バレてたか。そりゃああんな広範囲飛ばしたら俺の魔力では魔力切れするに決まってる。


「じゃあ、次はこうしましょうか。スライムドーム!」


それはさっきのように落下する攻撃ではなく、俺たちを鳥籠のように外側から覆うスライムだった。


そしてそのスライムが徐々に収縮してゆく。


「くっ……まずいなこれは」

サラが冷静な中にも焦りの見える表情をする。


こいつ腹立つな。

やろうと思えば一気にやれる筈なのに、こうやって恐怖させる時間を与えて楽しんでいやがる。


くそ、また転送するしかないか。


だが、もう魔力切れ寸前だ。

反面、この魔族の魔力はまだ底が見えない。


サラか俺かどちらかを飛ばして撤退。


やれることはそれが限界だろう。


或いはスライムの一部分を転送して空いた穴から逃げるか?無理だ。現実的じゃない。きっと穴を開けてもすぐに閉じるだろう。


後は、この魔族を転送するか。術者が遠くに行ったらこのスライムも消えるのではないだろうか。

いや、それも希望的観測だ。


仕方ない。


「サラさん、聞いてください。俺の魔力の残りからして人1人飛ばすのが限界です。だからサラさんを飛ばします」


「え?飛ばす?何を言っているんだ?というかなんで私を……」


俺は残りの魔力を手に集めた。

ああ、これでこの人を飛ばしたら魔力切れで意識不明になってその後死ぬな。


ま、誰かを見殺しにした罪悪感を抱えたまま生きるより、女性を守って死ぬというのは悪くない死に方だろう。


さてやるか。


ああ、でも嫌だなあ、死にたくねえ。死にたく……

俺の人生は何だったんだ?もうちょっと何かを成し遂げたかった。




と、思った刹那、何かが俺の方へ飛んできた。





それは酒瓶のようだった。


は?なぜこの状況で酒瓶?誰?


「範囲凍結 弱」


その言葉とともに、俺の周囲のスライムが凍りついた。何だこの魔導は?氷魔法か? 


いや、こんな高性能の氷魔法見たことない。




「おい、シンとサラさん、もう無害だから出てきな」


その呼びかけに従い、サラは氷を剣戟で砕いた。


そのとき、初めて俺はその男が誰なのかを把握できた。


ロングコートにスラっとした体躯。

無造作に伸ばしたボサボサの髪。

一見やる気のなさそうな、ふかしタバコの男。


俺が賢神に会う前から、賢神の四職だった男。


この男は……


「デュランダルさん!?なぜここに?」


状況を飲み込めない俺は、凡庸な質問をしてしまった。


「俺らの仕事は孤独だが、切羽詰まったら助け合うって言わなかったか?」


やばい。なんかカッコよく見えるぞ。

そして安堵感で泣きそうである。


「俺の転送後の行動を把握していたんですか……」


「いやー、そうそう。忘れてて思い出したんだよ。あと、魔族が潜伏してそうだという情報も忘れてた。危ない危ない」


うん、本当に危なかった。

言える立場ではないが、もうちょっと早く出てきてくれ。


「何です?貴方は?」

魔族は明らかにデュランダルを警戒しているようだった。


「情報が欲しけりゃ金を寄越しな。邪神十天星のゲルベルよ。ああ、いや、元邪神十天星だな」


その言葉に元エレナ、そのゲルベルと呼ばれた魔族は真顔になって反応した。


「貴方どこまで知っているんですか?」

余裕綽々な顔をしていたくせに急に恐ろしい貌になる。


通常、魔族は自分達の情報が漏れることを極端に嫌う。


魔族は弱点をつかれると極端に脆いケースが多いから、とか情報を漏らすことそれ自体で、邪神から何らかの制裁が与えられるからとか、色々言われているが。


この反応はつまり、本当の情報なのだろう。


「まぁ例えば、さっきの毒スライム攻撃は氷魔法で無効化できるとか、他にも吸ったら死ぬ毒霧攻撃があるけど、それは風魔法で霧散できる、とかかな」


デュランダルの言葉に対し、魔族ゲルベルはみるみる凄まじい貌になってゆく。


「あなたは確実に殺します」

ゲルベルはそう言った。


「できますかねぇ、邪神十天星から追い落とされたゲルベル君ごときに」


その言葉にゲルベルは、ついに激昂したのだろうか、直接攻撃を仕掛けた。右腕に硬質化したスライムを纏った毒の斬撃。


だがデュランダルはどうやったのか分からないが、背後に回っていた。サラみたいに速いというのではない。すでにそこにいた感じだ。


ゲルベルが振り向くと明らかに焦りの表情を浮かべていた。


「くっ、スライムプレス!!」


「範囲凍結 弱」


ゲルベルが苦し紛れに放った毒スライムは一瞬で凍らされ、無効化された。何という発現速度と氷魔導の性能。このオッサン、本当に強いな。


「あーそろそろ終わりにしようか。俺の持ってる情報だと、お前本体じゃないんだろ?たぶんこのタイプの種族は、地面の真下、まぁこの場合は床下から操作してる筈なんだよなー」


「あ?」

ゲルベルが真顔で反応する


「てことで嬢ちゃん床を突け」


「おい!ちょっ、ま、待て!!!何言ってやが」


ゲルベルが焦っている最中に、サラは強烈な突きを床に向かって見舞った。剣が深々と床に突き刺さる。


「ギヤアアアアアア!!!」


と、同時に耳をつん裂くような悲鳴が響いた。


床が緑色に染まり、床板が剥がれる。


そこから現れたのは緑色の醜悪なスライムであった。


でかい。俺たち三人を合わせた以上の体積がある。


そして何より特徴的なのは普通のゲル状のスライムでなく、触手の生えたイソギンチャクのような見た目だ。


「貴様らは許さん。操って互いに拷問させてからから殺す。それから全員、私の人形にしてやらぁぁぁ!!!」


そのスライムから現れた顔のようなものが尋常ならざる怒気でそう言った。


まずいな。サラもさっきの炎魔法剣で疲れているっぽい。現状元気なのはデュランダルのみだ。


と、スライムの触手が俺たち三人を襲った。


不意打ちに近い俺とサラはその攻撃を避けられなかった。

まずい。


身体が動かない。


そして、サラは明らかに操作されていた。何とか耐えようと抗っているが、剣を抜いて俺たち二人の方を向いている。


「デュランダルさん!シン!駄目だ!まずい」

サラはそう警告するのが限界のようだった。


「ハハハ、君力強いねえ。でもそろそろ彼らに斬りかかってもらおうかな?」


スライムは勝ち誇っている。


だが、余裕な表情のデュランダル。


「くだらねぇ。ネタも尽きてそうだし、もう終わらせようか?」


デュランダルは矜持に満ちた表情でそう言った。

ブックマーク頂きありがとうございます!!

また、アクセス数もちょっとずつ増えてて大変嬉しい限りです!


さて、お読み頂いている皆様に大切なお願いです。


もう一段ステップアップするためにもブクマ・評価・感想など、頂けましたら大変嬉しく思います!!最後まで走り切るためにも是非っm(__)m


どうぞ下の☆☆☆☆☆を全て★★★★★にしていただければ感無量です。


よろしくお願いします!

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