表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/24

また町がザワザワしている。

俺はそこを見に行くと、また騎士団とヨハン支部長が話していた。


そこには町民の亡骸があった。

俺は面識の無い人だったが、見るも無惨な姿だ。


「これは外傷からして熊型のモンスターですね」

女騎士団長がそう言った。


「し、しかしこんなこと今まで起きたことは……」

支部長は明らかに動揺しているように見えた。


「潜伏している魔族が呼び寄せた可能性が高いかと」


「……」


支部長は黙ってしまった。


「何でも良いのです。ちょっとした手がかりでも教えていただけませんか?」


「なにもありませんよ。この町は冒険者も出入りしますが、基本は定住して活動する者ばかりですからな。先日申し上げた通り、森から逃げ延びた者を受け入れた以外は外部の者の出入りもありません」


おいおい、俺かよ。


まぁ直近の変化点と言ったらそれなんだろう。

それだけ変化のない穏やかな町だったのだ。


「それではその者に合わせて頂けませんか?」


女騎士団長の言葉に支部長は黙って俺の方を向いた。


何とも申し訳なさそうな視線。


何だよ。俺がいるって知ってて言った訳だ。

やだねぇ。親切な人だと思っていたのに、何かあるとすぐこれだ。ま、しゃあないけど。


「君、ちょっと我々の拠点まで来てくれ」


そういうことになった。





「私は団長のサラ=エカテリーナという。君の名は?」


その女騎士団長はそう名乗った。


ブランドのストレートの髪に凛とした真っ直ぐな眼差しが印象的な美しい女性であった。正直、超絶美人と言っていいと思う。


騎士団長という立場からか、ピンと張り詰めたものをどこか感じる。



俺はそのサラに町の近くに撮影された騎士団の拠点まで連れてこられていたのだ。


「シン=アマミヤです」


「君はどこから来たんだ?」


さて、どうしようか。


「冒険者なので、どこからということもなく」


まぁこんな感じでのらりくらりと行こう。


「真面目に答えてもらえないか?聞くところによると魔の森から来たそうだが」


サラ団長の視線が鋭くなる。


まあ、アベル一行のことは話さないほうがいい気がするな。なんとなく。


「ええ、そうですね。ちょっと魔導に失敗しまして」


「何故魔導に失敗したら魔の森に行くんだ?因果関係がわからないが」


あ、しまった。


『ちょっとは自分で考えたらどう?無能じゃないんだったらさぁ、って言ってみなよ』


っておい!賢神様最近急に出てくるな。

しかも過激!!そんなこと言える訳ねぇし。


「優秀な騎士団長様なら、少し考えたらお分かりになるのでは?」

あれ?今俺はなにを言ったんだ?


自分の意思に反して言ってはいけないことを言ってしまった気がするぞ……


『あーあ、本当に言っちゃったよ』


このクソ犬神め……。


方法は不明だがいずれ倍返ししてやる。


あー案の定、サラ騎士団長の目に抑制されてはいるが暗い怒りが宿っている気がする……。



まずい、まずいぞ。


「そりゃ魔導の訓練に魔の森の浅い部分での訓練が効果的だということは知っているさ。魔力に満ちた場所だからな。だが、初対面の私に、さっきの言葉だけでそこまで察しろ、というのは不親切ではないか?」


あれ?なんか誤解してるけど話を進めてくれたぞ?


そうじゃないんだが。


「あ、ああそうですね。すみません」


サラ騎士団長はため息をついた。


『ほら、チョロいだろ?プライドの高い人間なんてこんなもんさ』


うん、まぁ結果的に上手く行ったことは認めよう。



「まぁいい、正直さっきから魔力鑑定等行っているが普通の初心者冒険者のようにしか見えない。君が魔族だったとして、それを証明する術がないのが正直なところだ。ただ、しばらく監視させてはもらうがな」


お、なんか乗り切れそうな流れだ。


『な、うまくいっただろ?』


まぁ、そうか。あそこで転送云々言ってたら疑われた可能性が高いもんな。

クソ上司と内心思ったことは反省しよう。


と、そんなとき明らかに空気が変わった。


サラ団長の視線が、右のほうに視線を向けている。


「探知魔導に反応です!」


騎士団員Aが大きな声でそう言った。

騎士団員達の表情に緊迫感が漂う。


「モンスターか。かなりでかいな」

サラ騎士団長はそう呟いた。


「総員、配置につけ!」


その女性騎士は空気を切り裂くような大声でそう叫んだ。


この状況、やはり魔族の仕業か……。


そうこうしているうちに、その見るからに凶悪で、巨大な魔獣が俺たちの方へ近づいていた。



それはビッグベアーという熊型のモンスターだった。


ただ熊というにはサイズがかなりでかい。

4メートルはあるように見える。


またその巨大で凶悪な形をした前腕はあきらかに殺意を秘めたモンスターのものだ。


現状、俺や居合わせた住民達を騎士団員10名が背にして熊のモンスターと相対して守っているような形である。


そんな中、先に近寄ってくる熊のモンスターに対して、騎士団員の前衛の一人が斬りかかった。


鋭い一太刀だ。


だが、その熊は無傷であった。

刹那、怒った熊のモンスターが騎士団員に右手の一撃を浴びせる。一撃で、その男は宙に舞って落下した。


たった一撃で騎士団員は戦闘不能と化していた。

右手と右足、首があらぬ方向に曲がり、大量の血を吐いている。



「ひっ!!」



町民の誰かが俺の隣で声にならない悲鳴をあげる。

無理もない。俺だって怖い。


「私が出る、お前達は下がっていろ」


サラがそう言って剣を抜いた。


「し、しかしサラ様!!」


「命令だ」


サラは有無を言わさない威圧感をたたえ、その言葉を放った。




と、その瞬間、サラは消えた。

少なくとも俺の目にはそう見えた。



そして、次の瞬間にはその熊のモンスターの右側にいた。

そして、キンッという音。


その熊の右腕は切り離されて夥しい量の血が流れる。

熊の絶叫。


と、ここまでで多分一秒くらいだ。




つ、つええ。




これが一流の騎士か。


おそらく俺が戦闘を見た中で最も強いであろう男、アベルやゲレタに勝るとも劣らない強さだ。


俺は少しホッとしていたが、また絶望に突き落とされた。



その熊のモンスターが何かの術式を発現させたのだ。

そして切断された右腕が元に戻り、くっついた。


「チッ」


サラは苦々しい表情をした。


な……んだと。

再生するモンスターなんて聞いたこともないぞ。


そんな俺の動揺とは裏腹に、サラ騎士団長は果敢に斬りかかるのだった。


そこから先の攻防は、一進一退だった。


誰も加勢しないのは足手纏いにならないためだろう。


何度かサラが有効な斬撃を加えても何度でも再生される。その繰り返しだった。冷静そうなサラの表情に焦りの色が見え始めている。


『あーあ、心臓にある核を貫かないと意味ないんだけどね』


賢神様が能天気にそう実況する。


「そうなんですか?」


『そうだよ。あの騎士もわかっているから、さっきからずっと狙っているみたいだけど、何かの術式で核の周りをガードされてるみたいだね』


「うーん、それってマズイんじゃ。剣が届かないってことですよね?」


『助けてあげたら?』


「うーん、どうでしょう。あんま王立騎士団を差し置いて目立つのもなぁ」


『とはいえさ、この場合もう放置してたら皆んな死ぬと思うんだよね』


仰る通りである。

やるしかないか。


『まあ、あんまり「貸し」を作ると、君がかわいそうだし、今回はフォローしないでおくよ』


賢神様は意味深にそう言った。

貸し?貸しってどういうことだ?何?


あ、やばい。

サラが少し疲れている。ちょっと防戦一方になってきてるし。もうやるしかない。


えーい、ままよ。


俺は町民達から離れ、狙いやすい場所へ移動した。


一瞬、女騎士サラと目があった気がしたが、当然、サラは俺に構っているヒマはなさそうだった。



俺は両手を前にかざして狙いを定める。

緊張感がすごい。手が震えそうだ。


至近距離に行きたいが、この状況で至近距離まで突入するのは自殺行為だ。

だが、この距離で成功するのか?今までやったことがないぞ。


だがやるしかない。


俺は目を閉じた。


集中。

俺の心が深く沈み込む。


目を開く。



「転送!!」




そう言ってスキルを発動した瞬間、一瞬、熊のモンスターと目が合った。


沈黙。


失敗したか?


俺は熊をよく見た。


いや、成功だ!熊の胸部に丸い穴が空いている。


そして、気になる転送先は俺の手の中だった。


俺の手に血に濡れたその熊の核が握られている。


一瞬、誰もが状況を理解できておらず、変な沈黙がその場を支配する。


だが、サラだけは状況を理解したのか、俺の方へ歩み寄ってきた。刹那、剣を振り抜いて俺の目の前を一閃する。


キンッという音。


あ、あぶねえ!!なにすんだ!

と言いそうになったが、俺の手の中の核が真っ二つに割れ、何もいえなくなった。


次の瞬間、

熊のモンスターが、「ごぼり」と口から泡のような血を吹き出した。


そして巨体がズウウウン、と倒れる。


よ、よかった。できた……。




そう思ってホッとした瞬間、俺は全身に「ガツン!!」と衝撃が加わったのを感じた。な、なんだ!?そして、また意識が遠のいてゆく。


魔力切れか?

いや違う気がする。なんで?


まさか……攻撃……?


と、俺が左側に視線を動かすと何物かがどさくさに紛れて建物の陰に隠れてゆくのを目撃した。ん?あれは誰だ?見たことがある気がするぞ。


倒れる間際に、女性騎士が支えてくれたのと、誰かが俺の名前を叫ぶところまでは聞こえたが、すぐに意識は遠のいていった。

熊鍋って美味しいですよね。


お読み頂いている皆様に大切なお願いです。

ブクマ・評価・感想など、頂けましたら大変嬉しく思います!!最後まで走り切るためにも是非っm(__)m


どうぞ下の☆☆☆☆☆を全て★★★★★にしていただければ感無量です。


よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ