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そして、俺は自分の新スキルの力で飛んだ。


しまった。

感情任せに行き先が何処になるのかも確認せず、無鉄砲にスキルを使ってしまった。


で、どこに飛んだかと言うと「魔の森」の最深部だった。


・・・・。


はい、アホです。

事態が悪化しているじゃないか。

俺は普段は賢明なはずなのだが、どうかしていた。


どうするか。


『ははっ、君ってアホだねぇ』


うお!!誰だ?

いやこの中性的な声は聞き覚えがあるぞ。


「賢神様」


『やっと覚えてくれたか』


うん、インパクトあったしなぁ。

それにスキルを発動している感覚がある。自己の書にあった賢神の加護、というスキルか。


「いいかい、よく聞け。いま君が破れかぶれになって発動したスキル「転送」のせいで君のMPは半分になった」


な、なんだと!なんて燃費の悪いスキルなんだ。


『いや、燃費悪いんじゃなくて君のMPが少な過ぎるのと、スキルの使い方が悪すぎるだけだから』


ぐぬぬ、事実なんだろうが言いたい放題言いやがる。


『ここから東に真っ直ぐ向かえば最短距離で森から抜けられる。その間に運良くモンスターにそこまで会わなけりゃ生き残れるんじゃないか?』


・・・・。


この魔の森でモンスターに合わずに帰ると?


まぁ、いいや。

全ては俺の責任だ。とりあえず歩いてゆこう。



~~~



現時点で2キロほどは歩いただろうか?

とりあえず今のところは奇跡的に順調である。


『まぁあと半分くらいかな?』


と、賢神様が言った。

どうかこのままなんとかなってくれ・・・。


・・・ん?


何か目の前にヤバそうな奴がいるぞ。

おいおいマジか。


ハイオークだ。


押しも押されもせぬ冒険者ランクCランク以上対応推奨モンスターである。


ちなみに俺の冒険者ランクは当然Fランクだ。

そして、その結構でかいオークと誰かが闘っているのだ。


それは杖を持った魔導士風の少女であった。

少女だが身のこなしは素人のようには見えない。

多分、それなりのランクの冒険者だろう。


ただ、問題はどう見てもその少女は満身創痍であった。おそらくこの森の中で迷い、数日間は彷徨ったのだろう。


どうしようか。

このまま見殺しにして進むか、加勢するか。

まぁ俺が加勢しても事態が悪化するだけだしなぁ。


と、ここで森がザワつき始めた。

魔鳥がギャアギャアと耳障りな声を上げている。


嫌な予感がする。

少女もオークも動きを止めた。


空気がざわつく。


「賢神様、これってヤバイことになってませんか?」

俺は小声で尋ねた。


『・・・どうやらいるな』

賢神様がつぶやく。


そしてソイツが飛来した。




その威容は、その場にいるすべての生き物にとって絶望が具現化した以外の何物でもなかった。


巨大な前腕、その冷血動物らしい眼。

がっしりとした筋肉にと、硬そうな鱗に覆われた5メートルはあろうかという巨体。


おいおいコイツは・・・。


『地龍ガイアースだね。まだ幼体だったのがせめてもの救いか』


賢神様が俺に教えてくれた。


地龍ガイアース。


冒険者ランクでいうと、Aランク以上の攻撃でないと、全く通らない防御力を持つと言われる、正真正銘の龍種だ。

コイツはまだ幼体のようだが、年経て魔導を帯びた個体あれば15メートル以上になり、文句なしにSランク未満対応不可の案件となるだろう。


その龍はご機嫌斜めのようだった。


「グオオオオオ!!!!」


森全体が揺れるかのような咆哮を放ち、空気がビリビリと揺れる。


魔導士風の少女は絶望感に立ちすくんでしまっており、オークも固まっていた。


と、野生が闘いを避けようとしたのか、オークが逆方向に走り出した。

だが、それが仇となったようだ。


高速で移動した地龍は巨大な前腕でオークを掴んだ。


オークはジタバタと暴れている。


その抵抗も虚しく地龍はオークを凄まじい力で地面に叩きつけた。

あとは酷いものだ。巨大な前腕によるパウンド、脚での踏みつけ、叩きつけ。


ドカッ!!グシャッ!


この世のものとは思えない恐ろしい音とともに、オークは肉塊と化した。


そしてその肉塊を地龍は一瞬で喰らった。


「グオオオオオ!!!」


また咆哮。そして今度は魔導士風少女の方を向いた。

少女の顔が青白くなり、引き攣る。そして絶望でへたりこんでしまった。

ここからでは分からないが、涙を流しているようにも見えた。


『さて、どうする?もしかしたら今なら気づかれずに逃げられるかもしれないぜ。まぁ可能性は低いと思うけど』


賢神様がちょっと前に俺が検討したプランを口にした。そう、可能性が低いと思う。あのオークの様子を見る限り、逃げ出した者から優先的に狙っているように見えたからだ。


「俺のスキルで打開できませんか?」


俺は賢神様にもう一つのプランを確認した。


『うん、その方が生存可能性は高いね。いいかい?ただ前みたいに闇雲には転送を使わない方がいい。今から言うようにするんだ』


俺は賢神様のプランに耳を傾けた。

ゴニョゴニョゴニョ


「な、そんな事か可能なのですか?」


「可能というか、それが『転送』を使える追放屋の基本的戦術だからね」


なるほど、しかし破天荒な作戦だな。正直怖い。

だが、それが確かに一番生存可能性が高そうだ。何よりあの少女を見殺しにしなくて済む。


『じゃあ、合図するよ!3、2、1、GO!!』


俺はその合図と共に走り出していた。


【魔導士風少女の視点】


それはあまりに絶望的な光景であった。

魔の森。


世界でも有数のモンスターの巣窟である。

そこにある謎の祠の調査で、私たちパーティーはやってきていた。だが、この森を私たちは舐めていたのだ。


そして、私は仲間が逃げる時間を作るために襲いくるモンスターの壁になった。


その場は私は乗り切れたものの、仲間が逃げ切れたかどうかはわからない。

私は森を彷徨い歩いたが、今どこにいるのかもわからない。


そして現れたこの森でも上位の種、ハイオーク。最悪だ。それだけでも充分最悪だっのに、それを一瞬にして捕食する怒り狂った地龍。


ああ、もう終わりか。


龍が巨大な前腕を振りかざした。

イヤだ。こんな死に方は考えていなかった。

この後、私はこの龍に食い散らかされるのだ。


と、瞬間私の前方、龍の斜め後方から誰かが走り出してくるのが見えた。


少年・・・。冒険者か!!

馬鹿!!死体が増えるだけだ。


「下がって!!」

私は気づいたら大声を出していた。

その声に反応し、龍が後ろを向く。


刹那、その少年は龍の真横に滑り込んだ。

一瞬、混乱した龍の前腕の一撃。だが、その破れかぶれの一撃を少年は前方に転がって躱す。


「転送!!」


たぶん、そういうふうに言ったと思う。

少年の手に見たこともないタイプの魔力が集まった。そして、謎の魔導なのかスキルなのかが発動した。


その後、少年は私の後方近くまでゴロゴロと転がった。


静寂。


龍も私も少年も止まっていた。


その静寂を打ち破ったのは龍だった。


ごぼり、と口から泡のような血を吐き出したのだ。そして、数秒後に前方にズウウゥンと大きな音とともに倒れ込んだ。


「な、何が」


私は混乱し何が起こったのか理解が出来なかった。


私は少年の方を向き直る。

少年も立ち上がって私の方を向いた。その少年は手に何かを握っている?ように見えた。


そしてそれが何か分かり、私は戦慄した。


少年は血塗れになった右腕に、巨大な龍の心臓、核を握っていたのだ。


返り血を浴びて立ちすくみながら、龍の心臓を握るその少年の姿は、この世の闇が顕現した姿のように私には見えた。


毎日更新してゆきたいです!

本日も複数投稿したいです。


ブクマ・評価・感想などお待ちしております。

(本当に、弱者を救済すると思ってやって頂けたら本当に嬉しゅうございます!!)


どうぞ下の☆☆☆☆☆を全て★★★★★にしていただければ感無量です。

よろしくお願いします!

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