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覚醒

俺は、よくわからないベッドの上に寝ていた。

あれ?森の地面の上に寝ていないとおかしい気がするんだが。


でも確か霧が濃くて何も見えない場所に行く夢を見た気がする。



「目が覚めたか?」

見たことのないオッサンが俺に声を掛けてきた。

タバコを咥えながら度数の強そうな酒を飲んでいる。


スラっとして上背があり、ボサボサの髪を伸ばしっぱなしにしているルーズそうな佇まいが印象的だ。


「あれ?俺は……」


「すまんが森の中でぶっ倒れていたので、保護させてもらった」

おっさんが混乱の中にいる俺に対して、状況を説明してくれた。


「あれ?傷が治っている」


「それは恐らく賢神様のご加護だろうよ」


「え?何を言っているんですか?賢神様?あんたは?」

俺はそのオッサンのほうを向き、わからないことをすべて聞いた。


「ここは森の中にある小屋だ。俺は賢神様の使徒の一人、デュランダルだ。この森は賢神様が祀られている森だ。賢神様は気まぐれにこの森に迷い込んだ人間を助ける。というかお前も賢神様の祠を見に来たんじゃないのか?」


ああ、そうだった。

賢神様かどうかは知らなかったが、祠から魔力が最近漏れ出ている、ということで封印の状況を確認する、というのが今回のアベル一行のミッションの目的であった。


まあ、今思えば、俺を追放、殺害して置き去りにするのが真の目的だったのかもしれない。だが、なぜそこまでする必要があったのかは、未だに見当もつかない。


いや、今はそんなことより……。


「え?ああ、そうなんですか?そうか。そう言えば職業がどうとか言っていたあの犬の仮面のことかな?」


俺が迂闊に言った言葉にデュランダルと名乗ったオッサンはわかりやすく驚いた顔をした。


「……なんだと!?お前賢神様に会ったのか?しかも職業だと?まさか」


「え?ちょ、ちょっと、待ってください、俺もまだ理解していないのです」


俺がそう言うと、デュランダルはふう、と一息ついて煙草を吸いながら、こちらを見た。


「そうだな、まずは確認すべきだろうな。お前、もともと職業はなんだった?」


「無職です」


「無職……そうか。では、『自己の書』を召喚し、開くことはできない、そうだな?」


「そうですね」


「自己の書」とは、職業が与えられたものは皆召喚し、参照することができる魔導書である。この世界の不思議の一つであるが、皆それができるのだ。


これまで歩んできた軌跡や自分のできることが自動的にその書に書かれて、読める。言わば個人情報の塊である。


だが、俺はそれを開くことはできない。職業がないからである。


「では、左手を前に出して『自己の書、顕現せよ』と唱えてみろ」


うん、なんか前後の文脈の整合性がない気がするぞ。

まあいい、それでこのオッサンが満足するのであればいいか。


「自己の書、顕現せよ」


ほら、出てこねえじゃん。恥ずかしいことさせんなよ。わかってんだよ。


と思っていると、何かモクモクと煙が俺の左手から上がった。

なんだ、熱っ!!やべえ火事か?


そしてボンっ!!という爆発音のような音が俺の左手から起こった。


「やはりか」


デュランダルはそう呟いたと同時に俺の左手には古めかしい、ボロボロな本が顕現していた。

おかしいな、一般的な自己の書と見た目がかなり違うぞ。


通常こんなにボロボロじゃないはずだし、表紙も色が職業によって違うけど、大体似たような文字が書いてある。


というか、使われている言語体系自体が違うようだ。なぜか俺は読めるけど。


「な、なんだこれは?」

俺はいつの間にか呟いていた。


「ちょっと目を通してみろ」


デュランダルがそう言うので、俺は最初のページをめくった。

そこにはこのように書いてあった。


「この本を与えられし、アマミヤシンへ。君を賢神の四職たる『追放屋』に任ずる。おめでとう。世界暦〇年〇月〇日、賢神より」


俺は頭が痛くなってまた倒れそうになった。


デュランダルへ見たままを伝える。


「ふむ。そういうことか。これで長年空席であった、追放屋の席が埋まったわけだ。驚いたな。ついに賢神の四職がそろったわけだ」


などと、発言しており……。


「あのー納得されているのはよくわかるのですが、ご説明いただけると助かるんですけど」


「ん?まあ書いてあるままだよ。お前は無職から追放屋にランクアップした。と同時に俺と同じく、賢神の四職のうちの一つ『追放屋』に就き、賢神の使徒たる賢者になった。喜べ」


喜べない。意味が分かっていないのだから。


「えーとよく分かりませんけど、


賢神の使徒=賢者=賢神の四職


でオーケー?なんですか?」



「ああ、そういうことだ。てかそんなことも知らんのかお前は」


知ってるわけねえだろ。


「ではあなたも賢神の四職のうちの一職に、賢神から任命されていると?」


「ああ、そうだ。俺は『情報屋』だ」


ふむ。


「俺は『情報屋』で、この世界の情報を管理している。で、お前は今『追放屋』になった。俺らみたいのがあと二人いる。理解したか?」


「ああ、なんとなく」


「だからこれから俺たちは賢神様の使徒として、基本的には自らのミッションを自立して考えてこなす。孤独な仕事だよ。だが、同じ賢神の四職なんだし、ときとして仲間として助け合うときは助け合ってやってゆこう、ということだ。それもわかったか?」


「うーん、まあおぼろげながら」


「ちっ、歯切れが悪いなあ」


そりゃあ、この場面で歯切れがいいヤツはいないだろう、と思いつつも俺は頭を切り替えた。


「まあ、それはわかったよ。で、俺は何をすればいいんだ?先輩」


「まあ、そりゃあ、賢神様のみぞ知る、って話だが。例えば俺はスキルを使ってこの世界のあらゆる情報を編集し、記していって、必要な時にはその情報を提供して世界のパワーバランスを調整している。そういった素質があったから、それを賢神様に開花させられて、この職業をやっているわけだな。まあ、だからお前の場合は、必要なときに、その力を使って誰かを追放するってことじゃないか?知らんけど」


知らんけど、っておいおい。無責任な先輩だこと。

てか、すごい力を持ってんだな情報屋って。ほとんど神に近くないかそれ?


「俺にそんな力があるとは到底思えないのですが」


「だが、素質があったんじゃないか? 何か人と違ったスキルみたいのものを持っていなかったか?」


そういえば収納魔導を使えたな、あまり役に立たなかったが。


「そういうものがあったとして、女神の使徒が支配するこの世界において、その素質は普通には伸ばせないんだよ。だから、賢神様が手を貸してくれたんじゃないか?てか、『自己の書』を見たら書いてあるんじゃないのか?」


ああ、そうだな。ステータスのところに書いてあるはずだ。

えーと、このページか。


=====

アマミヤ シン

Lv 5

HP 25/25

MP 20/20


膂力 15

魔力 25

敏捷 10

器用 18

体力 15

抵抗 18


魔法、スキル等:

空間系魔導:収納(50㎤)、転送←New!!

特殊スキル:賢神の加護←New!!


その他称号、職業等:

追放屋

=====


うーん、なんか転送と賢神の加護ってのが加わっているな。

なんだこりゃ?


「まあ、たぶん俺の情報網によると賢神の加護と転送ってのが追加されているはずだが」


え?なんで?見てなかったじゃん。知ってるのか?


「それが追放屋の権能だ。とんでもない当たりスキルだから心して使えよ」


「は、はあ」

よくわからないが、そうなのだろうか。


「賢神の加護ってのもついてるのですが、ご存じですか?」


「ああ、初心者のときは、賢神様が色々フォローしてくれるんだ」


ふむ、なるほど。よくわからん。


「じゃあ俺は寝るから、後は好きにしろ」


「ちょっ、ちょっと待ってくださいよ。俺はこの森から出られないんですよ。弱いから」


「ああ、でも俺はどうもできないな。もう寝るし」


「ちょ、ちょっと待ってくださいって」


おいおい、本当に寝やがったよ。

これはあれだな。起こしても起きないパターンだな。


えーい、ままよ。


自分に新スキルの転送かけてやる。

そうりゃ。


俺は自分を転送した。

もうちょっと慎重に行動すべきだったと後々後悔することになったのは言うまでもない。

次回くらいからちょっとずつモテ始めます。


基本的に毎日更新です。


ブクマ・評価・感想などお待ちしております。

どうぞ下の☆☆☆☆☆を全て★★★★★にしていただければ感無量です。

よろしくお願いします!

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