side 花梨
今回までイライラ回。
最後には明るくなります!
僕は親猫にも見捨てられた猫だった。
目は目やにでやられ鼻水は止まらず…毛はボロボロ。
そんな僕を暖かい手で広いあげ、大丈夫だよ。怖くないよ。直ぐ良くなるからね。とずっと声をかけ続けてくれたのがつぐみだった。
つぐみが病院に連れていってくれて僕は直ぐに元気になった。僕が入院している間に猫グッツをたくさん購入し、僕を迎えに来てくれた。それから、僕の世界は僕とつぐみとなった。たまにつぐみの息子が会いに来ていたが…僕はつぐみ以外の人間には例え郵便配達員にでも逃げ隠れていたため、無理して懐かせようとはしなかった。こんなにひどい対応なのにつぐみは1度も僕を追い出そうとはしなかった。触られるのはいやだし、抱っこは何とか我慢するけど…一人寝が好きだし…。
「花梨は可愛いなぁ。大好きよ。長生きしてね」
と何時も愛おしそうに声掛けをしてくれる。つぐみの声がすきだった。
この世界は永遠に続くと思っていた。あの召喚があるまでは。
今はこの異世界で生きている。
妖力を使いこの世界にねじり込み、じじいとつぐみのお陰で神獣になれた。
ひとりぼっちだった僕は、つぐみに出会い、家族となり、世界を渡って家族が増えた。じじいと兄弟達とセバスにアカメと子供達。大切だった。大切にしているつもりだった。
でも、アカメとは子供が出来たからもう大丈夫絶対に縁は切れない。失わないように別の子を産まなければ全滅した時にどうするんだ!だから次は別の雄を探すだけ…。アカメはそのまま家族のままで良いじゃないか。別の強い雄を連れて来て、新しい家族が増えるだけだ。賑やかになって寂しくないし、楽しいじゃないか。何で解らないんだ。初めに言ってあっただろう?理解しろよ。と思っていた。つぐみのあの言葉を聞くまでは…。
“花梨は理解しないのにアカメには理解を求めるから”
だからダメなのだと。どうすれば言うことを聞くのか考えているのなら操ってるのと同じだと…。
アカメのことはセバスから聞いた。一夫一妻の家庭に産まれ、里の夫婦のほとんどがそのタイプの夫婦ばかり。理解しろと言われても難しく、子供を授からなかったのならまだしも、無事に産まれている以上は受け入れられないだろうとのことだった。
6年も一緒にいて知ろうとすらしなかったアカメの里のこと。
その後何度かアカメに会いに行ったが、謹慎中だからと顔も見れなかった。3ヶ月はあっという間に過ぎ。
「期限ね。決断は?」
つぐみが僕に聞ていきた。潮時だと思っていた頃だった。つぐみは僕のことを様子で解るらしい。
「離婚する。僕が悪かった。子供達は好きな方についていけば良い。僕は止めない。もうすでに自立した大人だしな。アカメの好きにしてやってくれ。離婚して初めてアカメの意思を聞こうと思うなんてヤバいな僕。」
ははと乾いた声が出た。つぐみは怪訝そうに答えた。
「いや?そんなことないと思うよ?アカメあれで結構カリンに甘えてわがまま言ってたもん。カリンに俺も連れていってくれ~って。良く付き合うなぁって私は思ってたよ?花梨なりに愛してたよ?それは、疑わないで。唯お互いに譲れないだけ。自分を保つのに必要なことなら誰も譲れないよ。愛だけではね。こればかりはどうしようもないのよ。決断してくれてありがとう。アカメのことは心配しないで、旅に備えなさい。」
私にはムリムリ。あんなに付きまとわれたらキレる。ジークでもあんなにはなかったし…と思い出して笑っている。あぁ。つぐみは思い出に出来つつあるのだと思った。僕も思い出に出来るだろうか…アカメとのことを。
「嫌、僕は…もう。その…。婿を迎える気はないというか…精子提供だけで良いかなって…。」
僕の弱音を聞いていたつぐみの顔がみるみる般若になっていく…。
「はぁ?なにそれ?今さら?一回失敗したぐらいで怖じ気づくぐらいなら最初から譲りなさいよ!別の雄の種を求めるのは本能なんでしょうが!!何がなんでもハーレム作って幸せなところ見せつけなさいよ!」
「はい!!」
僕に否は言えなかった。迫力満載。尻尾も逆立つ。だがそれ以上の爆弾が落とされた。
「魔国と獣人国にお願いしといたから。ハーレムに理解のある強い一族集めてトーナメントして!って。賞金や商品はこっちで用意するからって。」
「マジ?」
にゃにしてんだよー!叫びたかった。誰だつぐみを暴走させたのは!僕だ!?
「魔王も獣王も張り切ってた。何でか宰相達まで…。規模でかいわよ!楽しみにしてなさい。ちなみに私も見学するから。」
「つぐみ~!…はぁ…お前変わったな。」
もうここまで来ると意地だ!いい雄捕まえてやる!捕まえたら絶対に逃がさん。
「当たり前でしょ。この世界にいたら昔の価値観なんてどこ?常識何それ?だもの。全部フラットにするの大変だったんだからね!ハーレムとは?なんて日本にいたら考えなくて良かったのに~。」
「ぷっ。確かに…。僕も日本にいるだけだったら婿と子供を持とうとは思わなかったもんなぁ~。ましてやハーレムなんて!こうなったらめちゃくちゃ勢いのあるハーレム作ってやる。そのトーナメント僕も出るから!ラスボスとして!」
「良いわね。覆面マスク作ってあげる!」
それは要らない。
無事にイライラ回終了ー!
次はアカメと花梨の夫婦問題が解決します。




