誕生。sideジークハルト
じわじわシリアスになります。
よろしくお願いします。
「殿下!姫君のご誕生とのこと。おめでとうございます。」
「「「王太子殿下。おめでとうございます。」」」
「うん。ありがとう。ビィーの体調は?」
ついに。ついに。この日が来たか。ずっと待ってた。
「母子ともに健康とのことです。」
良かった。ビィーの健康が一番だ。しかも、待望の女の子だ。王族に女児が産まれなくなって久しい。父の代から男子しか産まれなくなり、今回数十年ぶりだ。
ビィーにはこれからたくさん私の子を産んで貰わねば。
「姫と王太子妃に会いに行くぞ!」
「はっ。」
「ポトス、君の母君も参内しているだろう。一緒に行こう。」
彼の母上は私の姫の乳母となることが決まっている。前に産まれた子も女子だと聞いている一緒に育てられることになるだろう。
「ついにこの日が…。」
「ポトス?」
「いえ。我が一族もこの日を指折り数えて準備しておりましたので…。」
だろうな。姫が次期後継となれるかはまだ解らないが…第一子の乳母はそれなりの権力を一族にもたらすだろう。そこまで力を入れて用意してくれていたとは頼りになりそうだ。
「では、行くぞ。」
小さい御子を抱く私の妻はとても眩しいほど美しかった。
「ビィーお疲れ様。可愛い姫を産んでくれてありがとう。顔を見せてくれる?」
「はい!ハル様。」
小さい。とても可愛い。まだ目が空いていないから瞳のいろは判らないが、髪は栗色が入った黒だった。ビィーに似たのだろう。
「抱いてあげて下さりませ。」
怖い…正直な感想だった。ちょっとだけ、ビクビクしながら抱き上げた。少しでも間違えたら壊れてしまいそうな体。重み。
「クロードあれを。」
ビィーからねだられて作ったがかなり良いものができた。
「我が姫にこれを。この剣がそなたを守るように。」
あー幸せだ。こんなにに幸せで少し怖いな。
「姫良かったですね。貴方の父上からの初めての贈り物ですよ。大切にしましょうね。ハル様に姫の初めてを取られましたわ。」
「初めて?」
ビィーが言うととても特別なことに感じるな。
「はい!これからたくさんの贈り物が姫には届くでしょう。ですが、初めてはハルさまですわ。私が初めてになりたかったですが、ハル様は私に姫を授けて下さりましたから、お譲り致します。」
視界が開けた気がした。ビィーは私に感謝してくれている。周りからは何時も産んでくれる妻に感謝しろと言われていた。解ってる。十分感謝してるし、奇跡だと思ってる。でも、言われるたびに心はひしゃげていた。産める方が偉いのか。産めるものなら私が産みたかった。ビィーは違う。二人の力で子供が来てくれたのだと。私達は平等なのだ。
「ビィー本当にありがとう。愛してるよ。」
「はい!ハル様、私も愛しております。カラーそろそろ姫を休ませてくれる?」
「畏まりました。妃殿下。」
「よろしくね。」
「はい。では、失礼致します。殿下、妃殿下。」
「うむ。姫を頼む。」
「ビィーもそろそろ休まないと。」
「私は大丈夫です。回復魔法を使いましたから。ダリア。着替えを。」
ビィーの雰囲気が一瞬にして変わった。何か得たいのしれないものに…。
「え?」
「着替えを。」
「ハル様は応接室で御待ち頂けますか?」
ダリアも困惑している。何だかよく解らないが…拒否の出来ない威圧感がある。
「え?わっ解った。」
その時は訪れた。
「妃殿下のお成りです。」
ダリアの顔色は悪かった。
「ビィー?」
すごく綺麗だった。白を基調としたシンプルなドレスにプラチナの首飾り。聖女そのものだった。
「ポトス、首尾は?」
「既に配置についております。姫の移動もすみました。」
私の側近候補なのに、ビィーに跪いて答えている。その異様さにクロードが私を庇うように立った。
「妃殿下これはどういうおつもりですか?」
「何故お前問いに答えねばならぬ。」
「なっ。妃殿下どうなされたのですか?」
「クロード、お前は私を女神だと言っていたが、あながち間違いではない。だが、お前達は本当にわかっているのか?神が目の前にいることの意味を。」
誰だこれは。全身から冷や汗が出ている。
「ビィー出産で気が立ってるの?ゆっくり休んでいいんだよ。」
「そうだな。私は召喚されて以来ずっと怒っている。だが我慢した。未来のために。では、始める。」
『リリース』
大気が揺れた。
地獄の始まりだった。
私は何も出来なかった。
ジーク君…。
次回もシリアスですよ。
残酷な表現があります。
出血シーンがあります。
人が亡くなる表現があります。
気を付けて下さい。




