side辺境伯
新キャラです。
よろしくお願いします。
その人は行きなり現れた。さっき、会った人物と同じ人間とはつゆと思わなかった。
「ご領主様!第一王子、王子妃両殿下がご到着されました。」
遂に来たか。
「御通ししろ。」
「承知。」
「遠路遥々ようこそお越し頂きました、両殿下。この様な辺境の地に御行幸頂けるとはこのユーカリ誉れにございます。」
「久しいなユーカリ殿。元気そうで良かった。
奥方や子供達も息災か?周辺の領地も少し視察したが活気有るものであった。ソナタの統治の賜物だな。」
良く見ている。現王は馬鹿だが、この第一王子は優秀だと聞いている。方々からの意見に耳を傾けるかただと。後継者が作れず、不遇を歩まれていたが…ここへ来てやっと道が開けたらしい。自信に満ち溢れた顔をしている。興味はないが。
「お褒めに預かり恐縮です。私の力など微々足るもの…領民たちの頑張りです。臣も両殿下の健やかなご尊顔を拝し安心致しました。」
「解るか?ずっと無かった光が手に入ったからな。ビィー、この領地と砦を任せている辺境伯のユーカリだ。ユーカリ殿、私の妃である、アビゲイルだ。1週間程滞在する予定だが、ビィーは身重でもある。よろしく頼む。」
こちらが噂の召喚された聖女か。何とも不憫な方だ。少女の様な年齢で…連れ去られるような形で異界に…況して、嫁がされるなど…私の子がその様な目に合ったら暴れ狂うな。その事をこの王家のもの達は理解しているのか?無理だな。
「お初に御目にかかります。妃殿下。私はユーカリ==フォン=アルメリアと申します。この領地アルメリアとドワーフ国との国境の砦を任されております。この度の御婚姻とご懐妊誠におめでとうございます。御滞在中健やかにお過ごしになられます様に御世話させていただきます。後程私の妻も紹介させて頂いても宜しいでしょうか?女性同士気安い部分もございましょう。」
「お気遣い感謝致します。アビゲイル=ペンタスです。私の我が儘で貴殿に迷惑をかける形になり、申し訳ありません。でも、こちらへの旅を楽しみにしていたのです。奥方にもぜひお会いしたいわ。よろしく頼みますね。」
ほう。しっかりしたお方の様だ。我が儘などと…少し思ったが、自覚があるかないかで全く違う。この方は思いやりのあるお方なのだろう。将来が楽しみだ。
「お任せください。旅の疲れもございましょう。ささやかながら会も要してございます。晩餐迄はゆっくりお休みください。」
「ありがとう。では、ビィー行こう。」
はぁ…終わった。執務室に戻った私はソファーにドサリと座った。
「まだ、年端もいかぬ少女だと聞き及んでいましたが…本当でしたね。」
執事長のセバスがため息を付きながら言った。
「あぁ。何とも…可哀想なお方だ。同じ国の人間として恥ずかしい。私は殿下の様に当然と云う顔で隣になど立てぬわ。」
「同意致します。どんな仕打ちを強いているのか理解しているのでしょうか?」
「「無理だな。でしょう。」」
!?誰だ!私は即座に臨戦態勢に入り、セバスは私を庇う様に立つ。
「良い動きだなユーカリ。私のことが判らぬのか?先程挨拶しただろう?」
「これは!?失礼致しました。妃殿下。おい、セバス退かぬか。」
「しかし…」
確かに判断に迷うのも解る。今目の前にいる方は何か異質だ。いきなり現れたのも…。
「くすくす。良い。忠義ものだな。そなたの部下は。私が何なのか、何故かなど色々で判断ができず、主の身を優先させたのであろう?大丈夫、同一人物だ。アビゲイルである。そなたの主を危険に去らしたりしない。下がれ。」
っつ。何だこの迫力は。少女などではない。物凄い圧力。私はセバスに退くように目配せした。
「部下が失礼致しました。妃殿下…こちらへのは…。」
「そなたをヘッドハンティングしに来た。」
「は?」
「何驚いた顔をしておる。」
「もっ申し訳ありません。私は既に妃殿下の臣でございますれば…。」
この方の真意はなんだ。
「私は王家のものとして話してはおらぬ。」
私が王家に興味が無いことがバレたか?
「我が忠信を疑っておいでか?」
「いや…だが、あまり王家に興味が無かろう?裏切らぬだけではないか?後継者が産まれぬからってこの領地は焦った様子はない。普通なら少しは気にもむと思うぞ。内戦の危機でもあるからな。」
バレてる!?妃殿下にバレているってことは…殿下にもか…不味いな。
「うっ…」 「御領主様…。」
「面目ない…。」
「まぁ、良い。今後注意せよ。ヘッドハンティングの件は本気だ。だから、次は奥方と子息子女も一緒に話がしたい。殿下の視察が2日後だから、その昼には集まっていてくれ…。それからそちらの部下の名は?」
「執事長のセバスチャンです。」
「セバス。私は殿下の視察でいない昼間しか来れぬ。殿下の予定は聞いているであろう?その時間の領主家族の予定は私を優先せよ。頼んだそ。」
私はセバスに伝わるように頷いた。
「御意。」
「ではな。」
「はぁー。何者だ。彼女は。」
「さぁ…。凡人の私には解りかねます。でも、覚悟が必要かと。あの方の前には身分や種族など関係が無い…お館様と私を観る目に違いが見当たりませんでした。平民と貴族ですよ?全て同じに観るなどできるでしょうか?」
身分の違いがない?そんなことあり得るのか?
「お前の賢さを見抜いたとか?」
「その様な次元ではない気がします。」
「覚悟か…次には判るだろう。一族を呼べ。皆で会うなら話が必要であろう。」
「承知致しました。」
頭が痛い…。
少し、長くなりました。
次回つぐみ視点に戻ります。
やっとまともな人族に会えた。




