懐妊中 前編
よろしくお願いします。
最後は別視点です。
「うーうー。」
この久しぶりの感覚。気持ち悪い…横を向こうが上を向こうが吐き気が収まらない。
解ってる…こういう時は何をしてもダメなのだ。
私は絶賛つわり中。
ハルは心配し、ちょくちょくフルーツを持ってきては労ってくれるが、それがかなりウザイ。
フルーツはありがたい。寧ろこの前食べられたグレープフルーツだけを持ってきて欲しい。それ以外食べられないのだ。ダリアもやんわりと伝えているのに気がつかない。イライラする。恐らく限界だったのだろう。
大泣きした。
今はどうにもこうにもつわりで相手が出来ない。寧ろ休ませて欲しいのに、ハルが来るかもしれないからと着替えなきゃいけないし、フルーツはグレープフルーツじゃないし、ハルに当たりそうになって嫌なのだーほっといてーっと。ホロホロ泣いたら…
ビィーごめんよー私が悪かったぁと逆に大泣き。私よりボロボロ泣くもんだから私の涙が引っ込んだ。
そのハルに皆が呆然。
その後が凄かった。クロード&ダリアにハルは連行。部屋の隅っこで、あんたは何を考えてるんだ?妃殿下より泣いてどうする。慰めて貰うつもりか?数倍キツイ思いをしてる妃殿下に?アホなのか?グレープフルーツを持って来いって言っただろうが。殿下の物指しで決めるんじゃねぇよ。殿下は今後出禁だ。解ったか?返事は?ああ?
という教育指導をハルは正座で受けていた。可哀想とは微塵も思わなかったが、そろそろ帰って貰えないかな?と思った時、良い笑顔のダリアさんが近づいてきた。
「妃殿下。私もう少し、殿下に教育を施さねばなりません。クロードと共に。失礼しても?」
うんうん。良いよー行っておいでーと送り出し、私は久々にスッキリとした気分で眠りについた…。
sideダリア
私は幼い頃より殿下のお世話をさせて頂いてきた。殿下は常に冷静で、ご自分が次期国王陛下になるのだと自覚されておられた。その殿下を誇らしく思っていたのに…。
「殿下?本当に反省されておられるので?」
「反省してるよ。私がグレープフルーツを持っていかなかったのが悪かったんだよね。」
こいつは誰だ?アホになってしまわれたのか?
「…違います。全て殿下の都合で行動されたのがいけなかったのです。クロードそなたもなぜ止めぬ。妃殿下のご体調不良はみるからに明らか。訪問されても迷惑なだけじゃ
。」
「迷惑…。」
気づいていない!?あれだけ悪阻に苦しまれている妃殿下に対し、何とした仕打ちをと思っていたが、良かれと思われていたとは…頭が痛い。
「申し訳ありません。妃殿下のご様子に何度も面会に行こうとされるため、私達も止めていたのですが…お茶会の果物運搬だけは止められず…ルイもグレープフルーツが良いのでは?と言っていたのですが、毎日同じものでは飽きるし、栄養も偏るから良くないと仰られまして…」
はぁ…自ら知識を得ることなく突っ走るなど…されたことは無かったのに…
「殿下。つわりは個人差がありますが、大体1~2ヶ月。安定期に入るまでです。そして、その間は食べ物が受け付けないのです、匂いすらダメ。やっと食べられたのがグレープフルーツだったのです。それしか食べられない。食べられない果物でどうやって栄養を取るのですか?妃殿下に於いては匂いもダメだから部屋に持ち込まれるのもお嫌だったと思います。」
「そんなに…。」
「殿下。妃殿下は全てが初めてなのです。まだ、少女の様なご年齢での妊娠、しかも異世界という住む場所すら違う場所で、両親のサポートもなく。どれだけ不安か解られますか?その上、殿下の世話迄とは…。クロードこれはお前の責でもある。甘えるな!」
「申し訳ありません。」
「これよりは面会禁止です。期間は妃殿下が殿下に会いたいとおっしゃられるまでです。」
「すまなかった。改めるから!!ビィーに会えないなど私がどうかなってしまう。」
ここまで迷惑をかけておいて自分の優先をするなど…次期後継を宿されている妃殿下のお体は今や陛下に並び尊いもの。女官長として、正さねば。
「そこで、それですか?まだまだ、教育が足りなかった様です。クロード、側近達と侍医を呼べ。それと今日一日の予定はキャンセルせよ。再教育じゃ。」
「「……!?」」
その後、夜遅くまで侍医とダリアによる再教育が行われたという…。
ジークは遂に地に落ちた。しかもめり込んだ。