sideクロード
よろしくお願いいたします。
「第一王子妃様がご懐妊された。」
「誠ですが?」
「あぁ。すでに侍医の確認も済んでいるとのことだ。」
「「「殿下!誠におめでとうございます。」」」
「うん。ありがとう。」
ここは第一王子殿下の執務室。ここ数十年無かった明るさがここに戻ってきている。
集められたばかりの頃にあった、輝かしい未來を疑いもせず、日夜国のために論議を交わしていたあの時の明るさだ。
召喚された聖女様がもたらしたもの。
殿下の笑顔。執務室の活気。そして未来だ。
クロードは感謝せずには居られなかった。
あの方は正しく聖女だと。本当に思っている。今は…。
初めてお会いした日のことはよく覚えている。殿下が別人だったからだ。あの時の殿下は今思い出しても気持ち悪い。40歳も過ぎたおっさんが18歳の少女を口説くため必死なのだ。しかも、初恋なのだろうか周りが全く見えていない。流石にクロードもこれでは不味いと思い。殿下のフォローをせねばと普段しないことをして失敗した。夫人の件を聞いた時のお妃様は怖かった。殿下は涙目だった。俺は冷や汗をかいた。
「でね。フルーツ探せる?」
「え?フルーツですか?」
「うん。ビィーがね。毎日茶会の時に違う種類のフルーツが食べたいんだって。でね、私に持ってきて欲しいって。」
「各領主に連絡しましょう。国を挙げて探さねば。お妃様の懐妊を知れば国中から届くでしょう。」
真面目な顔で手配している彼は宰相候補のルイスだ。
ちなみに、現宰相のジギタリスからは後継は出なかった。3人も奥方を持たれいるが5人とも女の子しか産まれなかったらしい。1人は殿下の嫁候補として最後まで頑張らされていた。結局養子として入っていた義兄と結婚し、幸せに暮らしているらしいが。後に皆が何であんなことをと今でも悔やんでいるお手つき夫人の件は宰相の一番若い奥方だった。何だかんだで宰相は家族からそれはもう恨まれているらしく…だから、家に帰らないのだとの噂だ。当たり前だ。俺だってそんな父親いらん。
すかさずルイスに説明した。
「執務を休もうとしていた殿下に執務をさせるための王子妃様の配慮だ。しかも、茶会まで面会に訪れない様にするために釘まで差してくださった。」
「女神ですか?」
「俺もそう思ってる。あの方は俺の目線1つで全てを汲んでくださるからな。」
それだけでなく、次期後継者まで、産んでくださるなんて…。
ずっと後継に恵まれずここ十年レオン様が王太子に相応しいのではないかという話まで出ていた。実際そのように動いていた重臣達もいたらしい。レオン殿下も甘やかされて育ったせいか、言葉を鵜呑みにし、隷属魔法の練習に熱心に励まれていたとか…馬鹿だ。
ギデオン殿下の優秀さを少しでも真似て欲しいものだ。ギデオン殿下は次期にと話が出たとき、馬鹿かと自分の側近を嗜め、次期は兄上のみだと断言された後留学された。その事を知っているジーク様は今でもギデオン殿下には甘い。
陛下はあり得んと言われていたが…どうにもならない所まで来ていた。
それなのに…。
「目線で会話するなんて、殿下にバレたら殺されますよ。」
「だな。だが…殿下を御せるかたがお妃様しか居ないのだ…どうにもなるまい。」
此れからも、この国の女神で居ていただかねば。
ジーク君を周りがどうみていたか…。