sideジークハルト
おはようございます。
よろしくお願いします。
「小さくていいんです。教会じゃなくても、2人だけの誓いでも…指輪の交換がしたいのです。」
とその人は花のように笑って言った。世界一綺麗な笑顔だと思った。
「はあ?召喚の儀式?僕は行かないよ。そんな眉唾物の儀式に行く意味がわからない。」
「殿下ですが、儀式には王族の立ち合いが必要とのこと。誰かが行かねば。」
「レオンが居るでしょ。そっちに回してよ。」
「承知しました。」
「殿下~あんまり文官たち苛めちゃ駄目だよ。彼らもお仕事なんだから。」
乳兄弟であり、侍従のクロードが不遜な態度で僕に話しかけてくる。
「わかってるが…そんなことに人員を割くぐらいなら僕のお嫁さん探しに真剣になって欲しいよ。」
「真剣にやってると思うぜ、嫁候補さんたちは。」
「だろうな!!お陰でいつ会っても具合が悪そうだよ。こっちが弱いもの苛めしてるみたいな気分になるよ。」
僕は魔力が高い。父上に匹敵する程だ。あまり知られていないが、其だけの魔力がなければ国王にはなれない。だが、その魔力に釣り合う女性となるとかなり少なくなる。というか同年代となると0に等しい。魔力を下げることはできないため、必然的に僕の嫁候補が血反吐を吐きながら魔力をあげる訓練をしなくてはならない。
そうしなければ、後継が作れないからだ。
ギデオンやレオンはやや高めぐらいで、もう既に婚約者が決まっている。
能力、身分に申し分ない僕だが、後継が出来ないという理由で立太子できず、弟達も現状維持のままだ。うんざりする。
「まぁ…待つしかないだろう。剣術の練習でもして、気分変えようぜ。」
「そうだな。八つ当たりして悪かった。」
召喚の日はそんなふうに思って過ごしていた。
「鑑定に立ち合う?」
「はい。陛下よりのお達しで、陛下の代わりに異世界のお方の鑑定に立ち合う様にとのことです。」
そういえば、召喚が成功したとかレオンがとても可愛い女性なのです~とかって嬉しそうに言ってたな。婚約者そっちのけで面倒をみていると…馬鹿かと思ってスルーしていたが…。
「辞退…」
「今回は断ることは許可しないとのことです。必ず出席するように仰られていました。」
「レオンが面倒みてるんでしょ?僕がしゃしゃり出るのは良くないんじゃないの?」
「其方のことは私は聞かされておりません。」
「ふーん。解った。行くよ。」
「よろしくお願いいたします。」
「クロード何か聞いてる?」
「レオンに惚れて欲しかったみたいだけど上手く行ってないとは聞いてる。」
なるほど…代わりに僕とは舐められた者だな。まぁ陛下の命令なら仕方ないけど…しかし、レオンも中々に美少年だと思うが…落ちないとは。おもしろそうだな。…そう思っただけだったのに。
直感で解った。この女性は僕の子を産めると。
レイズの様子で確信に変わり、絶対に逃がさないと決めた。報告会で、弟を排除し、彼女を王子妃の部屋に入れ囲い込んだ。
「クロード、聖女に本気になって貰うにはどうしたら良いだろうか。」
「はあ??それって惚れて貰うためにはってと?」
「いっ嫌、違う。彼女位の魔力上げならそんなに大変じゃないとは思うが、覚悟がなければゆっくりのんびりになってしまうだろう?早く本気になって貰うにはどうしたら良いかなって。」
「へーあんなにひねくれてたお前がねぇ~。3ヶ月も待てないとは。」
「なっ!待てないとは言ってないだろう!?」
「はいはい。本人に直接聞けば良いじゃないか。早く結婚したい。逃がしたくないから、本気になって貰うには何をしてあげれば良いですか?って。」
「まだ、18歳の女の子なんだぞ。逃げられないにしても、結婚を迫るなど…」
「事実だろ?子供も産まないといけないんだぞ。こちらも誠意を見せて、真摯に請い願うんだよ。好きになってくださいって。」
「行ってくる。」
あいつ。面白がりやがって。実際には、彼女を前に素直になるしかない自分と必死に請い願う自分と色々な自分との遭遇だった。
その後、約束した夕食で彼女の可愛いお願いに翻弄され、必死に指輪を準備する羽目になろうとは思ってもみなかった。
舞い上がったジーク。