番及び半身対策法 後編
おはようございます!
前回長めですと言っていましたが、今回も長めです。
こっちの方最長かも…。
よろしくお願いしますー。
「そして、法律の制定です。まず、番や半身が見つかった場合勝手に接触することを禁じます。そして番、半身専用お見合い機関を両国に設置し、この両国の機関に報告することを義務付けます。機関が介入し、身元の調査を行います。これはどちら側にも行います。番側には機関からのお知らせし、機関の立ち会いの元お見合いを設定します。お見合いの出席は既婚し、子供が居ようとも拒否権なしです。必ず出席して貰います。お見合いはとりあえず半年間で30回まで。まぁ。1週間に一回程度ですね。半年後に意思確認をして貰います。ダメなら一旦終了です。要請者にはお帰り頂きます。これより入国禁止です。これをしっかり守れば3年毎に再チャレンジの権利が発生します。これに該当しないのが、未成年です。この未成年の場合は保護者の同伴なく面会禁止です。面会も年一回のみとなります。本人や保護者の拒否があった場合理由などの聞き取りし、国が許可をすれば面会を中止できます。」
「既婚し、子供が居るのに拒否権無いのか?」
ドワーフの国王夫妻が嫌な顔をしている。
うん。解るよ。私も嫌だけど…。ポトスも何とか最初から拒否できないかって話し合いしてたけどねぇ…。
「そこ引っ掛かるよね?解るよ。それ番や半身の概念が無い種族こそらしいのよ。」
「「はあ?」」
「自由恋愛する人もいるから一概には言えないけど、不倫や浮気をする人以外は家庭がある人とは恋愛を選択しないじゃない?スタートラインにも立たないというか…。」
「ああ。」「そうですわね。」
この法律を作るに辺り私は番をもつ獣人や半身を持つ魔族にも話を聞いた。ポトスにも調査させた。そして、思ったことは…私はブルーで良かった。ポトスは番や半身になるもんじゃないなだった。
「関係ないんだって。番や半身だと。唯一だから。その人以外は伴侶じゃないから、他の人のものでも関係ないの。奪って当たり前なんだって。だから、最初から会わせもしてくれないならばこんな法律守らないだろうって。作っても守ろうって思ってくれないなら意味ないでしょ?こうすれば番と仲良く幸せに暮らせるかもっていう旨味がないとね。番、半身には会えない、連れ去るのも無理ならどうすると思う?」
「どうするんだ?」
「心中。」
「マジか。ヤバいな。」
ルピィは絶句している。言葉にならないらしい。
「だから、国民には番や半身になってしまったのはあれだけどなってしまった場合、国として何とか守るけど、嫌ならば断わり続けてね!って教えるしかないのよ。また、誰でもなりえると思うのこと!恋人だから、配偶者だからは関係ないのだと知っておくことも大事なの。そして、要請する側にはルールを守れ!愛して貰えるようアプローチしろ、連れ去るな。囲い込むな!断られたら帰れ!乳幼児虐待禁止!を教え込むしかないみたいなの。」
「…。寿命長いから耐久力あるだろうしな。」
「今はダメでも、3年後や9年後はどうか解らないですものね…心変わりはドワーフ族や人族には常ですし…これから世界中での交流が増えればこのようなことも絶対に増えますわ。それに誰にでもと言うことは…私や陛下にも降りかかってくるやもしれないのですね…。」
ルピィの言葉にマンサク殿は怒っているのか?顔が引きっていた。
「我々でさえも例外ではないと言うことか…解った。一度持ち帰るが、法律の主旨や多種族との調整をした結果だと宰相には伝える。」
「よろしくお願いします。」
ポトスが法律の草案を侍従に渡す。
「後は違反者をどうするかですわね。」
だよねー。そこも悩みどころなんですよ。
「まぁ。微罪に関しては次回の面会を中止するとか3年後を6年後にするとかで対処できるし、罪によって罰を決める裁量権を機関に委ねていいと思うのだけど…。」
「確かに最初からガチガチに決めない方いいですわね。ですが、誘拐やまして未成年誘拐に関しては甘く出来ないませんわよ。そこはしかと決めて2国間で行使したいと思っております。」
「それに関してはカルミア側から魔道具を提供できるわ。」
今回の件ではギデオンもかなりお怒りで、頼もうかなぁと思っていたら自分で製作して売り込みに来てくれた。カンパニュラ夫人にも使い方を熱心に指導していた。
買い取ろうとしたら金は要らん!犯罪者を捕らえる為ならば無償で作る!!と言われた。
え?売り込みって言っていなかった?って言ったらいきおいだったらしい。
姉ながら成長しているのか…よくわからない。
「ああ。聞いている。魔道具だろ?その材料も任せてくれ!だが、拘束した後どうするかだな。」
「そこが問題なのよ。許せない犯罪だけど…。誘拐した時点で寿命を繋げられたら相手を死刑にできないし…。」
「だが、終わらせなければ諦めないのだろう?長期刑なんぞにしたら出てくる可能性が残る。しかも、出てきたときには相手の番は成人だ。オープンに会いに来る自分を誘拐したヤツだぞ。寿命は長い、ストーカーは止めない。永遠に付きまとう存在。ゾッとするな。そこまでいけば俺からすれば呪いだ。」
マンサクさんや?お顔に出てますよ?それともう少しオブラートに包みましょうね。ストレート過ぎるのも外交ではアウトよ?
「気持ちは判るけど、直情過ぎるわ。マンサク国王殿?表現は軽めに。何が国同士の争いになるのか判らないのよ?うーん。そうねぇ。誘拐を一度でもしたら番が死ぬまで禁固の刑にするのは?後、どうしても無理って拒絶したら番側から拒否できる権利を与えるって法律に足す?でも、拒絶をどこが判断するか…拒絶された側はどうする?犯罪を犯していない者を監禁するわけにはいかないでしょ?」
「教会はどうでしょうか?私達よりは公正に判断できるのではありませんか。ですが…監禁はいけませんわね。番を求める衝動を眠らせる魔法でも無いのですか?」
「うーん。あっ!私の家族に魂の管理者がいるの!その子にどうにかできないか聞いてみるわ!もしかしたら魂の結び付きを解くことができるかも。それか番や半身が成人するまで本能を眠らせる魔道具をギデオンに依頼するとか…現竜王は番狂なるのが嫌でツガイを迎えられる準備が出来るまで幼体のままでいるのよ。そういう気概が皆に備わればよいのだけど。」
「魂の管理者と家族に!?すげぇな。それで行こう。魔道具に必要な魔石があれば直ぐに言ってくれ。どんなものでも用意するからとな。ドワーフ族は魔道具の知識豊富だ。今回は出し惜しみするつもりはない。何でも協力させてもらうぞ!法律も足す部分が出たし一度国に戻って精査させてもらいたい。足らない部分がこれからも出てくるかもしれないしな。基本は固まったから微調整していこう。」
大体の話しは終わったかな…。後は詳細を詰めるだけだけど…。釘を刺して置かなきゃかな?
「ええ。ドワーフ国王殿、この法律を行使すれば、私達の国は一斉に批判を浴びるでしょう。下手すると2国以外は敵となるやもしれません。エルフ国はまだ、族長が決まっていませんし、支援しているのが魔国ですから協力は無理でしょう。気持ちとしてはこの法律に入りたくてもです。ですが、カルミア国はプルメリア国王陛下を始めとし私も臣下も諦める事はありません。全てが敵国であってもです。お覚悟はございますか?」
ドワーフ国王夫妻は顔付きが変わり、為政者として答えてくれた。
「カルミア国王太后殿。この法律はわが民を守るには必要であった。声をかけていただけたこと感謝します。我々も絶対に折れるつもりはございません。全ての国からの批判があろうともです。この法律を必ず施行させましょう。それから今少しわが民を頼む。王妃との相談の上で迎えにくる。故郷を見せ、家族に会わせてやりたいのだ。それと…もう一人の被害者がいると聞くどうなのだ?」
「…。」
私は首を横に降った。そして、私は説明した。人族の寿命は短すぎた。家族は全員無くなっていて、しかも、旦那様は再婚していた。二人のお子さんは母親を誘拐された事がトラウマとなり、精神的に不安定となり、再婚した父親を許せず成人と同時に村を離れている。その後婚姻したという届け出が無く、故郷からだいぶ離れた農村で死亡届けだけ出されていたそうだ。誰も責められない。再婚した旦那さんもそれを許せなかった子供達も。誘拐された母親も。誰も悪くないのだ。
「そうか。彼女の望み通りにしてやるしかあるまい。死を選ぶのも生を選ぶのも自由だ。今までその権利を踏み潰されてきたのだから…尚だな。ドワーフ国からその被害者にしてやれることは…足だな。もう治らぬと聞いた。義足は無理かもしれぬが、自動式の車椅子を提供できる。そういうのが得意な職人がおるのだ。」
おう!そっちの職人さんもいらっしゃるのかー。彼女の意向が大事だが、今後必要になるかも知れないな。
「ありがとうございます。その時が来ましたらお声かけをさせていただきたいですわ。今少し彼女が落ち着く迄見守りたく。彼女には永遠と言える程の時がございます。急がずとも良いかと…。」
「こう言う時にしか使えない有り難くもない副産物ですわね。」
だよねー。ストーカーと寿命が繋がってる何て本来ならば罰に等しい。
「ええ。ですから、使える時に使っておかねば。それが彼女の生きる目的になるやもしれません。彼女は生ける証人なのです。この法の番人ともなれるやもしれません。」
言い方は悪いが彼女は番被害者として見える形で証明してくれている。どれだけ残酷で悲しい事であったのか。人は忘れるのだ。事件は風化する。どのように痛ましい事であっても。でも、彼女が常に側で見える形で出ていれば忘れない。しかも、永遠と言える程の寿命だ風化など出来ないのだ。だが、これは諸刃の剣となるかも知れない。彼女も自分の受けた被害を語らなければならなくなり、忘れられなくなるのだ。
話すことで癒される心、忘れることで癒される傷。
「残りの人生悪くなかったって思って死んでほしいもんな。自分の国の民には!」
ニカッと笑うマンサク国王。うわ!まぶしっ!
「陛下のスタンスはそれでいいのかもしれませんわね…。」
ルピィはため息を吐きながらもドワーフ国王と共に国に帰っていった。