閑話 花梨の新生活
やって参りました!閑話の日
予告どおり花梨の新生活です!
そして、お詫びです。
序列に食い違いが発覚しました!
ヒルガオが2位でした。申し訳ありません。
ボダイジュ以外お家を采配出来る人がいないのでそのままで行きたいと思います。
「うーん。重い。」
花梨は絡み付いた手から抜け出す為、体を動かした。
そして、ふと思う。重い?
あぁ。そうか私の隣には…。こんな感覚久しぶりだなぁ。と目を開けて隣に寝ているであろう人の顔を見た。
パキラはよく見るとおでこに傷があるのだと解る。隣で眠るようになって初めて知った。もう一つ知った事がある。パキラは一度眠ると何をしても朝まで起きない。寝つきが良いどころでは無いほどだ。
あまりの鈍感力に目が覚める思いだった。
5人でも生活をスタートさせて早1ヶ月。夜を共にすることはパキラとだが、それ以外は4人となるべく平等に過ごす事にしている。
家の事は大体がボタイジュがしてくれている。彼はなんというか…決め細やかだ。
まぁ。掃除や料理、洗濯等は人を雇っているというかグランダルが王宮の人間を派遣してくれているが…。
雇ってしまうと仮拠点である獣人国に永住するのか?と勘違いされてしまうからな。
僕の居場所はつぐみの近くだからな。隣でも無く側でも無いところが大事だ。側だと僕は絶対に禿げる。かまわれ過ぎて。
「う?カリンはもう起きたのか?早いなぁー。朝練するか?」
「起こしたか?まだ、早いから寝ててもいいぞ。何でか目が覚めてしまったんだ。ちょっと外を走ってくる。」
「うー。一緒に走らないけど素振りはする!外を走るならボダイジュやアリウムにも声かけてみれば?一緒に行きたいって言うかもしれないだろ?」
「さすがに起こしてまでは…」
「カリンが一人で走りたいならそれでいいけどそうじゃないなら声かけていけよ?遠慮すんなって言っただろう?嫌だったらあいつらもはっきりいうさー!俺が走らない!って断ったみたいにな。」
パキラの笑顔と言葉が僕の固まった部分を解してくれる様だった。そうだ。僕達はこれからなんだ。初めから遠慮してたら何が嫌なのか…それもわからない。
「そうだな。有り難う。パキラ。」
それから僕はボダイジュとアリウムに声をかけてみた。
「今日は俺も止めておく。走って帰ってきたら朝ごはんも食べたくなるだろう?コックと朝食の用意をしておく。明日は一緒に行きたいから明日も声かけてくれるか?」
ボダイジュが言ってくれた。いきなりスケジュールを変えると使用人達もびっくりするらしい。そうか知らなかった。僕が主になるんだからそこも考えないとな。
「わかった。朝食の時間を考えていなかったな。すまない。よろしく頼む。明日は一緒に散歩に行こうな?」
「ああ。」
笑顔でボダイジュが頷いてくれた。ボダイジュはお父さんと言うよりはお母さんの感じがするんだが…。
「いくー!でも、僕は俊敏だけど持久力無いんだよねぇ。長時間は走れないから疲れたらカリン乗せてくれる?」
と可愛く首をかしげながら獣化したまま話しているのはアリウムだ。うさぎさんがつぶらな瞳で話している…この状態でしゃべるとは…中々に策士だ。これは誰も断れない…つぐみならば鼻血を出しながら何でも聞いてあげそうだ。
「あぁ。いいぞ。だが、明日はボダイジュも一緒だからそれが…通用するかは解らんぞ。」
取りあえず釘は指しておいた。
散歩を終えて汗を流してから朝食だ!と喜んでいると、ヒルガオが珍しく起きていた。
名は体を表すというが…ヒルガオはまんまだ。朝に弱い。昼と夜が元気なのだ。それに芸術家で特に絵を描くのが好きらしい。この前見せて貰ったが…凄かった。とだけ言わせて貰おう。
「かりん!何で私に声かけないのよー。寂しいでしょ!」
「え!?」×全員
「何でそんなに驚くのよ!!」
「当たり前だろ!この1ヶ月の生活を見てて誰もお前に声かけようとは思わねぇよ。俺も言わなかったわ!」
皆で首を上下に振った。
「いくらなんでもヒルガオがカリンを責めるのはおかしい。この1ヶ月朝に起きてきたことなかっただろう。今日だって初めて起きてきたから、急きょ朝食を一食分追加したぐらいだ。」
「うっ。だって…私…今まで誰かと一緒に生活をしたこと無かったんだもの!だから…好きな時に起きて寝る生活ばかりで…朝ごはん何て習慣が有るって知らなかったの!」
「え!?」×全員
「何でそんなに驚くのよ!」
カルチャーショックだった。そこから擦り合わせがいるとは!?朝食の概念が無いとは…。
「朝食を知らないって…。それって種族の違いなの?子供の頃には朝ごはん食べてなかったの?インキュバスって皆そうなの??」
アリウムが興味深々で聞いている。確かに魔族の事を聞く機会ってほとんど無いからな。
「私達には子供の頃っていう概念があまり無いわ。生まれた頃は確かに幼体だけど…直ぐに成体なるし…それは獣人でも一緒でしょ?私は産み出されて直ぐにどうやって生き残るか、どうやって精気を吸い取るかを教えてくれる親は居ても、育ててくれる親っていう感じでは無いのよ。指導しない親も居るぐらいだし…。」
「なっなるほど…それは違いが大きいな。子育て無しか…。」
父性?母性?満載のボダイジュは汗をかいている様だった。
「皆に合わせるって聞こえはいいだけどよー。ヒルガオ朝早起きして何すんの?散歩?朝練?想像つかないんだけど。カリンの散歩って聞こえは可愛いが、長距離だぞ?屋敷一周とかじゃないぞ?ほぼフルマラソンだぞ?ヒルガオ付き合えるのか?無理して合わせても体を壊したら意味ないぞ!」
「パキラが何かいいこと言ってる!!」
「アリウム!お前俺を何だと思ってんだ!」
アリウムとパキラは仲良くケンカしている。この二人話せばケンカだが、兄弟ゲンカの様でとても微笑ましい。
「パキラの言うことは正しい。僕は皆無理をして欲しくない。集団での生活だから我慢は必要だけどなるべく皆自然な、感じで過ごして欲しいんだ。それはヒルガオだけじゃなくてパキラもアリウムもボダイジュもそれして僕もだ。だからヒルガオも無理して早起きしなくて良いんだよ?」
「うん。有り難う。さすがにその散歩という名のフルマラソンは無理。私死んじゃうわ。っていうかアリウムだって付き合ってるわけじゃないでしょ!カリンの背中に乗ってるの見えたわよ!入り口で降りてたのまで!バッチリ!」
「えーー。バレたか。」
「あんたはパキラと仲良く朝練やってなさい!ボダイジュ!私が朝食の采配をするから貴方が散歩に付き合って!外をチラチラ見てるの私見てたわよ!」
「「仲良くねぇーよ!」ない!」
うん。仲良しだね。
「有り難い。朝から体を動かした方が俺も調子がいいんだ。任せていいか?」
「ええ!任せて!」
この後皆で仲良く朝食を取った。とても美味しい朝食だった。
一週間後。
「何ーこの食材の領収証!!誰だぁ!こんな馬鹿高いフルーツ買ったかやつ!」
アリウムの声が響いた。