閑話 グラジオラスの災難 2
グラジオラス視点の閑話です。
これでグラジオラスの視点は終わりです!
お楽しみ下さいませー。
「修行は楽しいかぁー!」
「「おおー!」」
「皆で強くなりたいかー!」
「「おおーー!!!」」
「お~。」
「声が小さい!!しかも掛け声が遅れてる!そんな小さな声では誰も耳を傾けないぞ。自分の声は誰かが聞いてくれるはずとか聞くべきだとか思っているのならばそれを捨てろ!その立場ではなくなったのだからな。」
まただ。俺様は今度は声が小さいと指導を受けている。何でそんなことを…王族とはなんぞやの説教をされたと思ったら今度は行軍の始まりかと思ったわ!
しかもこんなところ我が国にあったのか!?なんと言うべきなのか…初めて来た。
一見森のようなのに高低差が余りないから林か?と思ったが広さや薄気味の悪さが半端ないのだ。
「やっとこれたぁー。ずっと来てみたかったんだよねぇー。行ってみたいからって何度もお願いしたのに絶対ダメって言われてたんだよー。霊峰エルド。とそれに連なる樹海!」
「はあ!?」
「声がでかい!」
ゴガツン!
と握りこぶしを落とされた。痛すぎる!鈍い音がしたではないか。俺様の頭をなんだと思っている!しかも今…。
「何をするのだ!!私のこの頭にはいずれ王冠が乗るのだぞ!変な形になったらどうするのだ!」
「えーー。」
「こいつ本気?」
「ここまでとは…。」
3人でそのような哀れんだ目で俺様を見るな!!
「解って…いる…が後戻り出来ないではないか。どうすれば良かったんだ。俺様はこの生き方しかしてこなかったんだ…。」
「この生き方って言ったって、まだ9歳じゃん。いくらでもやり直せるでしょうー!獣人は成体になるのがかなり早いから見逃されてしまいがちだけど…まだまだ子供だよ?」
「図体だけはでかくなってしまったのだろうな。しかも王族であるならば、才能もあっただろう。鍛えずとも負けしらずだったのではないか?」
「君も悪かったが、教育を十分にしてこなかったのならば周りも悪い。競争相手がいなければ張り合いも無かっただろうしな。私も獣人だから君の苦しさも理解できるつもりだ。だが、今は違うだろう!私達は君を見捨てたりしない!どんなことでも教える。解らなければ何度でも!解るまで何度でも!だから、手を取れ。自分の可能性を自分で決めるな!」
遅くない?この人達は俺様を認めてくれるのか?あんな無様な負けかたをしたのに…。今までの周りは…
「凄い!」「素晴らしい!」「そのままで大丈夫です!」「グラジオラス様の思い通りに!」
大体がこんなことしか…言わなかったな。認めてくれているのだと思っていたのに…本当の意味で俺様を認めるとは全く違うことだったんだ。この人達の言葉を聞くと良く解る。
俺様のダメだった所を指摘した上でこれからの道もしっかりと示してくれている。
何だろう…嬉しかった。銀狐の獣人が俺様に手を伸ばしてくれた。
「俺様は…嫌…僕が悪かったのです。周りの言葉を鵜呑みにし、叔父上への敵対心から自分の力量も考えず試合に出場しました。しかも負けたことから目を背けた。一から僕に教えてください。僕は…僕のままでいたくない。変わりたいんです!」
僕は頭を下げた。この人達はならば、僕が頭を下げても畏まったり、更に頭を下げたりしないだろう。僕を一弟子として見てくれるはずだ。
「いいよー。ハギは鶫直伝の魔力の巡らしかたを教えてあげる!カンナは獣人なのに魔力が豊富でしかも頭脳はなんだよ!ハギにいつもアドバイスをくれるんだ!アカメはねぇー常に真っ直ぐ!剣なんか振ってるのが早すぎて見えないだよ?」
「ふふ。君はラッキーだね。ハギは教え方上手いよ?それにとても強いし、マッピングできる最高の相棒なのだ。そして、アカメは自分の弱さを認めることのできる私の最高の伴侶だ。私は君に礼儀作法や護衛のルールを教えてあげよう。」
「…え?え?はっ伴侶!?嬉しいな。いや待て待て。えっと…そうだな。それにハギ様は居てくれるだけで和む。しかも力持ちのうえ収納までしてくれる。最強だ。俺は剣の使い方、戦いかたを教えてやろう。」
3人ともが3人を大好きなのは良く解った。アカメ先輩は一人モジモジしているが…。お互いのことを話すときの表情はハギ様は解りにくいが…柔らかい。僕にもこんな仲間と言える人達が見つかるだろうか…。
「よろしくお願いします!!」
ハギ様は○を体を使って作ってくれた。カンナさんとアカメさんは笑顔で頷いてくれた。
「じゃあ早速いくよー!どんどんいくよー!霊峰エルドに!!」
「聞き間違えじゃなかったんかい!!霊峰エルドは獣人国でも聖地だぞ!?王族でも立入禁止区域なはずだ。」
嫡男だった僕でも入ったことがない。聖地と成っているのは霊峰へ行くまでに隔てた様に広がる樹海が入った者達を惑わすからだ。磁場も歪んでいて方向感覚も狂うらしい。鳥族の者達出さえも無理だと聞く。
その樹海を抜けなければ霊峰迄辿り着けない。例え辿り着けても標高が獣人国でも指折りの高さなのだ。頂点迄登ることも命をかけなければならない。そして、登った頂点を守っているのはアイスベアだ。
こいつは…。
「うん!知ってる!だから許可が降りなかったんだよ?ある意味グラジオラスのお掛けだよぉー。有り難う!絶対にアイスベアに会おうね?楽しみ!」
「「おお!!」」
そんないい笑顔で掛け声ー!?
僕はこの日から
修行と言う名の地獄のブートキャンプ。
マッピングと言う名の樹海の迷走。
登山と言う名の極寒の山登り。
狩りと言う名の珍獣ハント。
を嫌と言う程味わった。
アイスベアは名前は可愛いが吹雪を呼びまくり登山者をホワイトアウトさせる厄介者なのだ。強さと言うより会うまでが大変という厄介さと希少さでランクAである。しかも倒した後でドロップされるのがアイスダイヤモンドと言われる宝石で、高額取引対象である。
これを一瞬で片付けた修行の鬼の冒険者ランクは上がった。
次は誰の閑話を書こうかなぁ??
ほのぼのが書きたいなぁー。
アカメさんにカンナさんはさらっとプロポーズしていますが、この3人の関係性は変えたくないのでこのままのような気がします。
カンナが鶫の側に居ないのは邪魔になると本気で思っているからです。近衛隊長の責務は解っていますが鶫は神子だから別だと思っています。王太后なんですけどね。
突然ですが、この世界を元にまた、新たな物語を書いております。明日の朝8時に投稿予定です!興味があられる方はどうぞ。
「フィーリングカップル~番、半身さまの見合い係~」です!
この世界の未来のお話しです。少しネタバレ?名前位ですかございます。