閑話 side 神様
土曜日になりましたぁー!
土曜と言えば閑話の日でございます。
お楽しみ頂ければ幸いです。
「来たか。」
目の前に魂が一つ。今回はひび割れたりしていないし、色もすこししか悪くない。ただ、元気が無さそうに揺らめいている。
「ジジイいじめるなよ!つぐみが許し、送ってきた魂だろ?」
朱雀はいつもわしに厳しい。わしを何だと思っているのだ!苛めたり等さぬ。愛あるお仕置きをするだけだ。
「そんなことせんわ。解っておる。つぐみが許すこと。こやつに関してはこれが大事じゃ。隷属魔法は覚えていたが使用したことは無かった。機会が無かっただけと言われればそれまでだが、その事もしっかり悔いておるようだしな。わしがすることはない。」
あからさまにホッとしたよう様子の朱雀が、魂に声をかける。
「安心せよ。そなたが自分を許し、輪廻に戻りたいと思えるまで私の炎の中で休めば良い。友人もおるぞ。」
形が整い色を取り戻しつつある魂を見せ、朱雀は新たな魂を迎えた。
「私の炎は邪悪なものは寄せ付けぬ。安心して眠れ。」
慈悲深い光景だ。朱雀は成長したな……って!
「またか!?何故そちはわしから魂を取り上げるのじゃ!わしの所に送られて来た魂じゃろ。」
「あ?つぐみがじじいの所に魂を送るわけないだろうが!いつも余計なことしかしない癖に。あの魂のことだって止めたのに勝手にしただろう!つぐみに怒られるぞ!知らないからな。この魂達のことだってどうせ途中で魂の意見も聞かずにもういいじゃろ?とか言って輪廻に強制的に戻すに決まっている!!」
何故解るのじゃ!
「そっそんなこと…。色や形が整いさえすれば魂もオッケイと言うことじゃろう?それに…あの魂のことは…どうしよう。怒られるかのぅ?」
首を横に振りつつ朱雀は呆れた顔で答えた。
「俺の守護する魂達に近づくなよ。燃やすぞ?」
「ハギもそれがいいと思う!一度コガサれてみたら?ちりぢりに!」
小さなスライムがピコンピコンしながら答えた。
「酷い!」
うずくまり、しおしおとする。じじい。誰も慰めてくれない…。わし、寂しい。
「ハギ、つぐみの体調はどうだ?熱は下がらないか?」
朱雀は心配そうにハギに聞く。つぐみは体調を崩しておるのだ。
「うん。まだ熱が下がりきらないんだ。兄上達も側を離れず一緒にいる。体がこの世界に適応しようとしてるってカリン兄上が言ってた。今までは拒絶することで自分を守っていたけど、今回のことでこの世界に生きていく覚悟が出来たから、受け入れる為に体を整えているみたいだって。体を作り替える様なものだから時間がかかるし、無防備になるから兄上達が守るって。」
こればかりはわしではどうにも出来ぬ。あの体はわしの手が入っていない異世界の体だからじゃ。祝福しかしてやれん。自分でどうにかするしかない…。
ペンタス国の改革は絶対条件だった。わしとしては人族が少しでも残れば良いと思っていた。
王族ならギデオンを残していたし、後は処分しても問題なかった。じゃがつぐみは自分が、子を産むことで人族を救った。減らしたのは貴族だけで平民はほぼ無傷だった。
王朝が代わり、国名まで変わる改革に民の血が流れるのは珍しいことではない。少なくとも王都は火だるまになっただろう。だが、つぐみはわしの罰がくだっている者のみの犠牲で済ませてしまった。
自分の愛するものを引き換えにして。魔王があの男の引き取りを申し出なかったらつぐみは今のようにこの世界をカルミアを許し、愛でることは出来なかっだろう。
いつが限界が来て世界に復讐していたとさえ思う。それを誰も止められなかっただろう。わしさえも…。
「そうか…兄上達が守るっているのなら安心だな。だが、何かにあれば言ってくれ。助けになりたい。それと…つぐみが落ち着いてからハギの判断でよい、あの魂を俺が守護しているから安心してくれと伝えてくれ。」
「うん!解った!朱雀ありがとう。ハギ達が出来ないことを朱雀はしてくれている。いつも感謝してるよ。じじいの世話までだもんね。ハギならとっくに封印しちゃってるよ。つぐみが元気になったら魂のこと伝えるよ。朱雀の側なら安心だしね。」
「ああ。大丈夫だ。いよいよ我慢が出来なくなったらハギにお願いするよ。」
ハギがスライムの体で○を作って答えている。端から見れば兄弟の仲良い会話じゃ。わしの処遇の話でなければな…。