家族の時間を終えて。side ジークハルト
宜しくお願いします。
「やっと言えた。」
ずっと心残りだった。二人に告げる言葉。
プルメリアは本来ならば時間をかけて学ぶべき帝王学を最低限受けただけで国王に付かなければならなかった。
だから少しでも言葉を残せたこと、嬉しく思う。僕は失敗してしまったけど、それも大事な学びだ。
王の失敗は取り返しが付かない。失敗した王族から意見など聞けないのだ。大体が死んでしまっているから…。
二人を見送り、僕はふうと息を吐きながらベッドに横たわった。久々に長時間椅子に座ったままだった事とやり遂げた事が合間り体は疲れていたが、心は満ち足りていた。どれぐらいぶりだろうかこんなにも自然と笑顔になってしまう自分は。
「なんだ。その緩みきった顔は。全く、体は大丈夫か?」
「クスクス。ええ。確かに疲労感はありますが、大丈夫です。今日はぐっすりと眠れそうです。手がぽかぽかしていますからねー。」
プルメリアやビィーに手を握ってもってから熱が引かない。心も体もポカポカなのだ。
「それは良かったな。熱は?」
何時も僕をみてくれている先生に魔王様が僕の体の確認をしてくれている。ここまで弱った体を面会できるまで持たせてくれたのは一重に魔王様の采配のお陰だ。最初は何故ここまでしてくれるのか解らなかったが…。
「魔王様。ずっと言い続けて来ていますが、もう一度言わせて下さい。ありがとうございました。僕を引き取ってくれたこと、僕の罪を示してくれたこと、贖罪の機会を与えてくれたこと。全てに感謝します。僕達人族が魔族にしようとしていたことを思えば僕は殺されても可笑しくはなかった。実際、臣下達からは進言があられたのでは無いのですか?」
魔王様は僕が感謝を述べると何時も嫌な顔をされる…。そして何時も同じセリフ。
『お前の為ではない。だから感謝などするな。俺は目的の為にお前を引き受けたのだ。慈悲ではない。』
でも、今日は違った。
「ジークハルト殿、私も貴方に感謝を。彼女を解放してくださりありがとうございました。貴方でなくては出来なかった。本来であれば、彼女を召喚したことは貴方の責任ではない。召喚担当は第三王子であり、
その当時のペンタスの国王が償うべき案件だった。貴方の責は婚姻だけだが、それもなるべく無理矢理とならぬように彼女の意思を聞いておられた。そして、しっかり愛情も注がれていた。貴方からの謝罪だからこそ彼女はこの世界を許す事ができたのです。」
俺には出来なかったと消えそうな程の小さい声で最後は語られる。魔王様であるのに僕の目の前に居る人物はただの魔人。全てを剥ぎ取った人だった。
「一つ勝てたかなぁー。」
「あ??」
「ぷっ。いいじゃないですかー。一つぐらい。器が小さすぎますよー。」
「ぐっ。」
彼女の事ではコロコロと顔が変わるんだな。まぁ。僕も覚えがある。彼女に関しては周りから散々言われていたんだよねぇ。お前どうした!?とね。
毎回失礼だなと思いながらも甘んじて受けていた。僕だって止めようが無かったのだ。全力で愛していたからね。
僕は昔を思い出しながらウトウトしてしまっていた。
「疲れたのだろう。すまなかった。ゆっくり休め。」
「はい。」
「では、また、明日様子をみに来よう。」
「ブルスター=ドラセナ魔王国陛下。彼女をアビゲイル=フォン=カルミアを宜しくお願いしたします。私…ジークハルトの最後の言葉と思っていただいて結構です。何故なら…頼みたくなかったんでね。」
「ブルスター=ドラセナがジークハルト殿の最後の言葉承った。気持ちは解る。私だったら言わないな。」
二人で手をしっかり握り合い、笑いあった。
「一つ忠告を。彼女は動物が…もふもふしたものに目がないです。嫉妬しないように気をつけて下さいねー。」
ライバルの出会って一番の嫌な顔だった。
ジーク最後の登場でした。
第2章も残り3話です。
その後一週間程お休みを頂き、第3章を始めたいと思います。