母と娘と…父
いよいよ。ジークハルトさんが再登場です!
やっと。ここまで来れました!
宜しくお願いします!
「「失礼したします。」」
二人が中に入ってきた。やっぱり…居ると思った。プルメリアの様子が可笑しかったもんね。心配だったのだろう。
「遅くまでご苦労。カラー陛下を頼みます。プルメリア?今日は一緒に眠る約束だったけど…ここで終わりにして良いかしら?母さまはプルメリアの願いを全力で叶えたいの。時間をくれる?」
笑顔で不安を与えないように声をかける。
「はい。母さま無理してない?」
「全然!プルメリアのお陰で勇気を貰ったわ!張り切っちゃうわよ~。だから、安心して休みなさい。おやすみ。愛しいプルメリア。良い夢を。」
抱き締めてキスを贈る。
「妾も母さまが大好き。おやすみなさい。」
ぎゅっと抱きついてキスを返してくれた。
カラーに目配せをして見送る。
「セバス。ジークに会うわ。プルメリアと一緒に国には内密で。魔国に非公式訪問をします。プルメリアと二人だけで。協力してくれる?」
跪いてセバスは答えた。
「何でもお命じ下さいませ。」
「ありがとう。ではまずは魔王に繋ぎをとるわ。それから私達が居ないとバレないスケジュールを組んでちょうだい。」
「御意。」
「萩?魔王様に私が話したがってるって伝えて。」
「わかった。大丈夫なの?」
「ええ。」
二週間後。魔国。
「魔国には久しぶりだな。神子。」
「ええ。あの時も非公式でしたわね。何時か公式に訪れたいわ。」
「そうだなぁ~。お前次第だ。俺は何時でもいいぜ?カルミア国王殿。戴冠式以来だな。息災で何よりだ。そう、睨むなよ!お前の母ちゃんはとったりしねぇよ。」
あら?プルメリアがするとスナギツネも可愛いわね。よしよし。と頭を撫でる。
「非公式の訪問を受けてくださり感謝する。魔王殿も息災で良かった。私の母だろうが何だろうか1ミリもあげません。」
「ほう?女は生まれながらに女だと聞いたことがあるが、本当なんだな。ちゃんと言葉の意味が判るとは…。だが、俺も退くわけにはいかない。本気なんでね。俺に出来るのは母親を奪うことはしないということだけだ。」
「チッ。母さま次第だ。無理強いはしないでよね。」
「約束しよう。」
なに?何の話?割って入れない雰囲気なんだけど…。
「ふぅ。準備は大丈夫?」
「ああ。部屋を用意した。3人だけで会いたいとの事だがそれは無理だ。俺が付き添うが姿は隠す。その代わり手錠は無しに出来る。」
「ありがとう。ブルー。行きましょう。プルメリア。お父様に会うわよ?準備はいい?」
「はい。母さま。」
私は娘の手を握り、足を進めた。とても緊張する。
ドアを開けた。六年ぶりに会うあの人は。
優しい面立ちはそのままで、髪の色は抜け落ち、痩せていて、シワも増えていたが、笑顔はあの時のままだった。
もう、立てないのだろう。少し豪華な椅子に1人で座っていた。その回りに2つの椅子が並んでいる。私は近づきながら挨拶した。
「…っ。お久しぶりにございます。ジークハルトさま」
「お久しぶりにございます。王太后陛下。」
ああ。声もそのままだ。ハルの甘くビィーと呼ぶ声が好きだった。泣いてしまいたかった。でも…
「プルメリア?お父様ですよ。ご挨拶を。」
泣くわけにはいかない。娘の背を押さなければ。
「は…初めまして。プルメリアと申します。父様。あの…今日は会ってくださってありがとうございます。私は6歳になりました。えっと…本を読むのと絵を描くのが好きなのです。父様は何がお好きですか?」
「大きくなりましたね。プルメリア。初めまして。貴方の父であるジークハルトです。そうですねぇ。私は剣術が好きで良く稽古をしていたのですよ?」
ジークの隣の席に娘を座らせながら話を進める。憎しみや悲しみは今の時間は必要ないこの時間は温かで優しい時としたかった。
「そうですわね。庭から良く素振りをしている姿を見ていましたわ。とてもかっこ良かったのです。お強いのかは知りませんが…。」
「おや?私の強さを知らないのですか?それは残念でしたねぇ。とても強いつもりです。」
「まぁ。」
「くすくす。私父様に頂いた剣大切にしております。私に贈り物をしてくれた初めての殿方は父様なのですよ?」
ハルさまは目を大きく開き、そして嬉しそうに瞬きをした。
「嬉しいなぁ。そうだね。大切にしてくれているんだね。プルメリアに残せる物があって良かった。」
「プルメリア?絵を見せるのでは無かったの?」
「あっ!そうでした。これですわ~父様。私が書いた母さまの絵なのよ。父様にあげようと思って書いてきたの~。」
「え?私の絵なの?」
「うわぁ。上手だねぇ。すごく綺麗だ。嬉しいよ。プルメリア。ありがとう。フゥー。プルメリア、もう時間がないから良く聞いて?」
今までの顔と違い、それは為政者の顔だった。国王となった娘に国王になる予定だった父親が伝える言葉だ。どんなものより価値があるだろう。プルメリアも真剣な顔で頷く。
「君の行く道は孤独だ。誰にも代わりが出来ない。出来ることは手助けだけだ。今は幼いから摂政という形で王太后と宰相が肩代わりしているだろうけど、25歳の成人が来たら本来の形に戻る。君の行動が民の命に関わる。重い責任だ。迷うだろう。私は間違えた。だからこそ言える。価値観程宛にならない。それは誰かに作られた物だからだ。自分が正しいと思い込まない。正しさは人の数だけあるからだ。プルメリア。君が優秀であることに越したことはないが、周りが優秀であれば良い。臣下がしたことに責任が負えれば臣下に委ねてもいいんだ。大切なのは判断を誤らないこと。王は耳が大きく、目が広く。後は母上を参考にしなさい。ただ、あくまでも参考に。君の母上は色んな意味で規格外だ。真似れば臣下の心臓は幾つあっても足らないよ?」
「確かに…。父上の言葉。胸に刻みます。どうか、心安らかにお過ごしくださいませ。」
「ありがとう。プルメリア。私の愛しい姫。君の治世が安寧であることを祈るよ。…少しだけ母上と話がしたいんだ…良いかな?」
「はい。」
プルメリアは部屋の端に下がった。
ハルさまは私の目を見て話し出した。
「私は貴方にずっと言わなければならなかった言葉がある。生きているうちに伝える機会を与えてくれてありがとう。アビゲイル殿申し訳ありませんでした。貴方を誘拐同然で国に召喚し、意思を確認すること無く私の妃にした。あまりに人道に悖る行為を貴方に行ってきた。許される事ではない。本当にすまなかった。」
涙が止まらなかった。
「うっうーー。」
嗚咽しかでない。
「戴冠式を魔王に見せて貰ったよ。凄く素敵な戴冠式だった。神々しかった。そして…国王が持つ宝剣…あれは私がプルメリアに渡した守り刀と対に成るように作ってくれたのだろう。見て直ぐに解ったよ。貴方はこんなに素敵で気遣いの出来る女性なのに、私は奪って傷つけるだけだった。こんな最低な私の事は忘れなさい。私は貴方に出会ってとても幸せだった。今でもだよ。でも、貴方の幸せは?与えるだけでは人は幸せにはならないよ。ビィー怖がらないで。幸せを与えてくれる人を見つけておくれ。愛してるよビィー。この世界に来てくれて本当にありがとう。」
「うん。ありがとうハル。私、やっとこの世界を許して生きていける。愛してるよ…ハル。」
その後3人で最後の抱擁をして別れた。
ハルの訃報が届いたのはその一週間後だった。
うー。
ジークー。
次回はジーク視点です。