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短編(ざまぁとかコメディとかテンプレ外しとか)

婚約解消署名活動

作者: 渕澤もふこ

以前に近況報告にあげていたものを加筆しました。

婚約解消のための署名活動


 私はしがない下級貴族の娘です。ある日、王子様に見初められて婚約者に選ばれてしまいました。

 王子様のことはお慕いしておりますが、やはり身分が釣り合わず、婚約を分不相応に感じております。

 自分に任せておけば大丈夫だと仰いますが、私には婚約者を務める自信がありません。

 王子様に婚約を解消したいとお願いすると、書類を一枚渡されました。


「この用紙に、10人の貴族の名前を集めて来て」


 書類には、『婚約解消届 婚約反対者署名欄』と書かれており、王子様の名前と私の名前が書かれておりました。


「誰に頼んでもいいけれど、私たちの結婚に強く反対している人物の方が効果はあるからね」


 その言葉に、私はすぐに署名をしてくれそうな方を何人か思い浮かべることができました。

 茶会や夜会でお会いするたびに、私のことを王子様には相応しくないと言っていた方々なら、喜んで署名してくださると思いました。

 そうして、易々と署名が集まった書類を、王子様にお渡ししました。


「では、これは処理しておこう」


 王子様に笑顔で書類を受け取られて、悲しいと思ってしまいました。

 私が解消をお願いしたのに、我儘だとは思います。私がもっと王子様に相応しければよかったのに。

 婚約解消の要望があっさりと通ってしまうのは、仕方のないことかもしれません。

 私はその日からずっと、婚約解消の決定を待っていました。

 しかし、いつまで経っても解消されません。

 王子様にお尋ねしてみると、悲しそうな顔で仰いました。


「実は彼女たちの中に婚姻や没落で名前が変わってしまい、書いてくれた署名が無効になってしまったものがいるんだ。せっかく君が懸命に集めてくれたのに」


 無効になってしまったのなら仕方がありません。私はもう一度署名を集めることにしました。今度も容易く集まります。


「せっかく君が集めてくれたのに」


 不思議なことに、何度も同じことが起こります。

 そのうちに、私の書類に誰も署名をしてくれなくなりました。これでは婚約を解消することはできません。

 途方に暮れる私に、王子様は新しい紙を差し出しながら仰います。

 

「そんなに君が婚約を嫌がるのなら、婚約はもう終わりしよう。ここに、君が署名をしてくれるだけでいいよ」


 王子様は微笑んでいらっしゃいます。

 私はようやく待ち望んだ時が来たのだと分かりました。書類にはすでに王子様が署名されていました。

 きっと王子様は、任せた仕事の一つも満足にできない私に愛想を尽かしたのでしょう。

 ほんの少しの寂しさを感じながら、この関係を終わらせるための書類に名前を書いたのです。


「じゃあ、これはこちらで処理しておくからね」


 書類を懐にしまう王子様の笑顔は、今までで一番麗しいものでした。そして、とても楽しそうでした。


「これから君の今までの署名が使えなくなるから、間違えないでね?」


 よく分かりませんが、私は頷きました。王子様は、いつも私がすべきことを教えてくださいます。

 そうして、誰も婚約に反対する者がいなくなり、私は王子様の婚約者ではなくなりました。

 私の署名は、半分だけ王子様と同じになりました。

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― 新着の感想 ―
[一言]  これどうやって反対した人たちの家とかを没落させたりしたんでしょうね?  普通は反対されるのが当然でしょうし婚約者自信が王子との結婚を取りやめたいと言ってるのに。  そこまで王家1強なら婚約…
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