08
空って、言い響だなー、何て思いながら、屋上に上がる。
私の名前、ソラって名前だったら、すっごい嬉しいなって思うけど、多分ほんとにそんな名前だったら、空好きだったのかわかんないななんて、思ったり思わなかったり。
勢い良く扉を開くと、今日は完全に一人っきりで、よっしゃと一人ガッツポーズ。
だけどその反面、何だ、今日は哉都君はいないのか、何て、ちょっとがっかりしちゃってる私がいる。
なんて、殆ど話したことも無いのに、私ったらば・・・。
そんな風に思いながら、曇り気味の空を見上げた。
晴れている空も好きだけど、実は雨とか曇りとかも好きで、息がほーっと吐き出される。
叫びだしたい気分ではあるけれど、そんなことをすればこの時間帯の秘密をみんなに知らしめてしまうことになるので、絶対に無理だ。
叫びだす代わりにもう一度大きく息を吐き出すと、なんだか、気分がほっとする。
「何それ、溜息?」
不意に後からここ最近良く聞く声が聞こえた。
「違うよ」
私は振り返らずに答える。
「じゃあ何?リラックス?」
「こうしてると、楽になる」
「ふぅん」
彼はそう言って、私の横に立った。
悲しそうな瞳は、私と同じように空を見つめている。
私は思い出したように(実際、ついさっき思い出して)彼のハンカチを差し出した。
「これ、ありがとう」
そう言うと、「もう治ったんだ」と言う返事が返ってくる。
「もう、ここで伸びをするのはやめたほうがいいよ」
哉都君が苦笑しながらそう言ったので、私は思わず赤面してしまった。
「・・・なんか、空って案外いいんだな」
そうつぶやきながら、彼は屋上を後にする。
顔立ちの整った哉都君は茶髪の髪をかきあげながら、ドアを閉じる。
その瞬間、彼は大きく溜息をついていた。
そう、息を吐き出すじゃなくて、本当に溜息だった。
目から余計に力が抜けたようだった。そして、その暗さが余計に不気味だった。