07
「私って、そんなに変なのかなぁ?」
私がポツリとつぶやいた。
湯気が立ち上るお風呂場で、声が反響する。
けれど、ずいぶん楽になったようだ。
あの後、哉都君はクラスの仕事があるといって帰っていった。
だから、痛みが治まってきたところで私は一人で帰宅した。
後頭部はタンコブになっていて、まだ触ると痛い。
湯船につかりながら、タンコブにならないように、丁寧に髪の毛を指ですく。
少し長めの真っ黒い髪。
地毛でありながらも、茶色が少し混じった哉都君の髪の毛とは、とても違う。
「会う度に変な奴って言うことないのに・・・」
そうぶつぶつとつぶやいていると、「ちょっと、姉ちゃん?何いってんの?」という一歳違いの弟、蓮斗の声がドア越しに聞こえてきた。
「早く風呂変われよ」
といって、もう一度、「で、何いってんの?」と尋ねられる。
「え、独り言」
「独り言って・・・どんだけ孤独なんだよ、姉ちゃん」
そう言って、弟が噴き出しているのがわかった。
私はその言葉を無視して、蓮斗に尋ねる。
「ねぇ、私って、変だと思う?」
「は?」
「最近、ある人に変だ変だって言われちゃってさ」
ある人とは、哉都君なんだけど、それは言わなかった。
言ったって、どうにかなることじゃないし。
「まぁ、変なんじゃない?っていうか、変とか普通とかの基準がわかんねぇ」
ドア越しで姿は見えないけれど、きっと蓮斗は肩をすくめているんだろうな、なんて、余計なことをまた考えてしまった。
「とにかく、早く風呂変わってくれ」
私が黙ったことで、弟が再びせかし始める。
私は慌てて脱衣所から弟を追い出し、湯船を出た。
「廊下で転んだ」
昨日授業に出なかったことを智倖に問われた私は、そう返答した。
廊下で転んで、保健室に言っていたというと、彼女は直に納得して、話を変える。
「ねぇねぇ、哉都君って好きな人とかいるのかなぁ?」
大体の予想はできる。
クラスの女子が話す内容といえば、殆どが哉都君だ。
特に、この間賞を受賞してからは、特に話題が増えた。
「えぇ、どうだろう?」
「超気になるよねー!」
舞架も絡んできて、二人で盛り上がり始める。
私は話しについていけなくて、「さぁ?」といって首をかしげているだけだった。