04
次の日も、哉都君は、ほかの生徒とは比べ物にならないほどの明るい光を発していた。
自ら、光を放ってるように見える人、いるじゃない?
まさに、哉都君は、それだ。
だけど・・・だけど、昨日のはなんだったんだろう?
あの、めがねの奥で暗く光るものは、なんだったんだろう?
疑問の答えは返ってこなくて、何故、何故という気持ちだけが走る。
だけど、あそこで哉都君に会ったことをほかの人に言えるはずもなく(だって、せっかく自分だけが知っている一人の時間なのに、ほかの人が押しかけてくるようになるでしょう?)、ましてや、哉都君が、作文を引き裂いていたなど、口が裂けてもいえない。
だから、私は、智倖や舞架が黄色い声をあげながら、彼のことを好き勝手はなすのを、ただ、笑顔で聞いていた。
今日の空は、ちょっと曇りがちで、心地よい風が頬をなでる。
やっぱり、屋上はすごく落ち着くと思う。
ほっと息を吐き出すと、空に溶け込んでいきそうで、ほかにないぐらいの安心感を得ることができるんだ。
腕を伸ばして、大きく伸びをすると、勢いがつきすぎて思わず後ろにひっくり返った。
一瞬意識が飛ぶ。
一人きりであったことに感謝しつつ、一人であったことを後悔した。
痛くて、なかなか起き上がれない。
自分がどこまでどじであるかをひどく痛感した。
「ほら」
そのとき、不意に目の前に顔が現れた。
私に向かって、手を伸ばしている。つかんでいいということだろうか。
私はその手を取り、ふらふらする頭を抑えながら起き上がった。
「伸びしながらひっくり返る人、はじめてみた」
「え?」
一人だと思っていたのに。見られてたんだ。
とたんに、私は赤面する。
それも、そこにいたのは、
「さ・・・哉都君・・・」
彼は、昨日と同じ暗い瞳のまま、苦笑いを浮かべていた。
「えーっと、椎名遊佐さん・・・だったっけ?」
「あ、はぁ・・・」
急に名前を呼ばれ、私はうなずきながら言う。
「変な奴」
「は?」
「あんた、相当な変わり者だよ」
失礼な言い草だな。
そう思ったけれど、反論することはできなかった。
彼の目が、悲しそうに光っているような気がしたから。
何でだかわからないけど。
「何で、哉都君はまじめなの?」
私は無意識のうちに尋ねていた。
そして、彼が怪訝な表情をしているのに気づき、自分が言ったことにはじめて気づく。
「ご・・・ごめんなさ――――――」
「面倒だからだよ」
慌てて謝ろうとすると、それをさえぎるように、そして、はき捨てるように彼が言った。
私の問いに、彼はそう答えた。