02
私は、屋上が好きだ。空を直そこに感じられるから。
小学生の頃は、屋上は出入り禁止だったけれど、私は放課後こっそり屋上に上っては、先生に怒られてたっけ。
でも、屋上は、いつも最上級生である3年生の先輩であふれている。
私たち2年生の貸切にできることは、先輩が研修で出かけておられる日ぐらいだ。
だから、屋上で一人きり、なんてことは、無理に等しい。
だけど、私は知っている。
絶対に誰もいない、サボりの人だって、絶対来ない、瞬間を。
「はぁ・・・」
心のそこから息を吐き出す。
溜息じゃない。
フェンスにすがって、息を吐き出すと、すごく心が落ち着く。
空と同化したような気分になれる。
大きな空を、一人で貸しきったような気分になる。
その時間・・・それは、昼休み終了の10分前だ。
先輩たちは、一階にある教室に慌てて下りていく。
1年生たちは、裏校則なんて、厄介なものがあるせいで屋上には来ないし、
2年生は先輩がいないという事実を知らない。
だから、この10分間だけは、屋上を独り占めできる。
貴重な時間。だから、私は晴れた日は、必ずここにやってくる。
10分間、ただ、空をながめて思いにふけっているんだ。
智倖に言ったら、バカにされるだろうな、何て思いながら、ぽっかりと浮かぶ真っ白い雲をぼんやりとながめた。
屋上の時計を眺めると、もう授業が始まる寸前で、私は慌てて教室へ戻った。
「ねぇ、遊佐、知ってる?」
「何が?」
教室に戻ると、後の席の舞架が声をかけてきた。
「哉都君、この間の作文コンクールで金賞取ったららしいよ!明日、全校集会で表彰だって」
「へぇ・・・」
私は特別興味があるわけではなかったので、適当に相槌をうった。
「すごいよね、だって、全国だよ、全国!」
それにかまわず舞架は興奮した様子で続ける。
私は、愛想笑いを浮かべて話を聞きながら、思った。
彼は一体、こんな風に褒め称えられ、どう思っているのだろう。
すごく思考をめぐらせたのだろうか?ものすごい努力と苦労をしたのだろうか?
だけど・・・直に、彼の周りの人たちは、彼がこんな賞を採るのは当然だと思い込む。
絶対。
そうなったら、彼の立場は、どうなってしまうのだろう?
さらに、コーティングした壁は厚くなり、重圧に耐えられなくなってしまうのではないか?
私の心配は、無用ですか?