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「ガムテープとって来たよ」
「遅い!」
「・・・ゴメン」
智倖に怒られて、私は小さく謝る。
ガムテープを渡せばまた待機。私の仕事はまだ当分ないだろう。
というわけで、窓を開けて空を見上げてみる。
よく晴れた大空から降り注ぐ暖かなぬくもりを体いっぱいに浴びて、大きく伸びをした。
太陽を直視しないように気をつけながら、縮れ雲を数を数える。
幸せだなぁ。
「ちょっと、遊佐が光合成してるんだけど・・・」
「いつものこと、いつものこと」
・・・いつもの事って、どういう意味?
私が怪訝な表情をしていると、ボードに何か書き込みをしながらある男子が「おい」とこっちを向いた。
「植物人間、先生にカップの数確認してきて」
「植物・・・」
残念ながら、理科の2分野の中でも「天気」のほうに興味はあっても「生物」のほうに興味はない私は、「植物人間」と呼ばれてもあんまり嬉しくない。
でも、とりあえず指示が出たからカップの数を確認しに、もう一度職員室に走った。
「・・・はいありがとうございましたー」
担任から用具担当教員へ、用具担当教員から教頭へ、教頭から養護教員へ、喫茶で使うカップを求めて学校中を駆け回る。
で、最終的にカップの数は・・・。
「分からないって何だよー」
あれだけ走ったのにな、と、かなり悔しい心境の中、とりあえず教室に帰ろうと走り出す。
が、その時、運悪く、廊下の十字路で誰かとぶつかった。
ガッシャーン!
と、大きな音が響いていたことだけは憶えている。
「ちょっと、大丈夫?!」
「あー!大道具が!」
「ちょ、どうするのこれ?!」
私がぶつかったのは、調度クラスイベントで使う大道具を運んでいた人々で、
くらくらする中で見つけたのは、破損したその大道具だった。