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「それ、あっち運んでー」
「あんまり乱暴にすると崩れるって!」
「遊佐、ぼーっとしてんな!」
「あ、ごめん」
夏休みが終わり、とうとう学校祭が目前に迫ってきた。
9月終わりにある学校祭は、年間行事のメインイベントとも言える、最大行事。
2日間の文化祭、最終日には体育祭。
体育祭で使うデコレーションや応援の内容なんかは、3年生の先輩が主に作るから、私たちが精を出すのは文化祭の準備だ。
「はいはい、飾り通るから、邪魔しないでねー」
「ちょ、危ねぇよ!」
「ぎゃー!」
文化祭では、ステージ発表や合唱コンクール、各部活動の展示や発表、生徒会によるイベントにくわえ、各クラスで展示、もしくは何か教室でイベントをしなくてはいけない。
わがクラスでは、よくある、喫茶って言うのをやるらしくて、みんな忙しく行ったりきたり。
私は足手まといなので、指示があるまで動いちゃいけない。
「遊佐、職員室にガムテープとってきて!」
「はーい」
智倖から指示が飛び、私は職員室に走った。
ガムテープをもらって、教室に帰る。
と、途中で違うクラスの展示物が目に入った。
「すごいなぁ・・・どのクラスも」
口から漏れた感想は、本当の本音で、思わず見惚れてしまった。
しばらくそうしていたい衝動に駆られたけれど、早く帰らないと智倖に怒られてしまう。
名残惜しさを残しながら、私はその場を離れた。
思わずため息をつきそうになって口を塞ぐ。
駄目だ・・・ストレスがたまっているのかもしれない。
ため息がしょっちゅうつきたくなると気って言うのは、大抵そういうもの。
疲れているとか、ストレスがたまっているとか、悩みがあるとか、そういう時はため息がつきたくなっちゃう。
「・・・最近昼休みが短いもんなー」
学校祭前は、好きなようで嫌い。
時定が学校祭前用に変わって、授業が減るのは良いんだけど、それと同時に昼休みも減ってしまう。
つまり、屋上にいける日が減るってことだ。
時折、雨が振った後とか、小雨の日とか、そういうときにちらっと行くことはできるけれど、時間も短い。
曇り空も好きだけれど、たまには晴れの空に近づきたいな。
それに、哉都君も見かけないし。
時々見かけるのは、女子に囲まれている姿だけ。
そのときの「笑顔」は、見ていたくなくて、私は思わず顔をそらせてしまう。
いつか、本当の「笑顔」が見てみたい。
その思いが強くなった今日この頃。