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「智倖、舞架・・・?」

呼びかけても、それらしい人を見つけられない。

私は、幼子のようにパニックに陥っていた。

「智倖!舞架!」

なれない下駄を履いて、人ごみを走る。・・・と、案の定転んだ。

「痛い・・・」

ひざとおでこを盛大にコンクリにぶつけてしまった。

幸い、浴衣は汚れていない。

智倖からの借り物。絶対汚すわけには行かなかった私は、ちょっと安心して一息ついた。

二人とも、見つかんないし。かなりきつくぶつけたみたいで、おでこ痛いし。

散々だな・・・もう。

「ちょ、大丈夫?」

「へ?」

突然後ろから声をかけられ、振り返ると、坂口君と哉都君が立っていた。

「・・・見てた?」

「ばっちり」

坂口君が答え、肩をすくめる。

私は苦笑いを返し、ちらっと哉都君を見ると、何か真剣な眼差しでこっちを見つめていた。

こんな風になったら、たとえファンじゃなくたって、思わず、ドキっとしてしまう。

私は動揺を隠すように、たずねた。

「どうか、した?」

「血」

「え?」

「おでこから、血、出てる」

その声が合図だったかのように、おでこから生暖かい液体が、顔を伝ってきた。

「あ・・・」

ちょっと赤みがかっていた顔が、一気に青ざめた。

坂口君があわてたようにティッシュペーパーを取り出す。それを受け取った哉都君が、手馴れた手つきでティッシュを私のおでこにあて、私の肩を抱いて近くのベンチに座らせる。

「君は転ぶのが好きなんだな」

「・・・」

別に好きではなかったけれど、何も言い返せなかった。

「ちょっとすりむいただけみたいだね」

「あぁ」

坂口君が私の正面に片ひざをついて、傷を調べる。

哉都君は、私の隣に座って自販機で買ったミネラルウォーターをティッシュにしみこませていた。

そのぬれティッシュをおでこに当てると、小さく痛んで、思わず体をこわばらせる。

「痛いか?」

「う・・・うん、まぁ・・・」

私は痛みに顔をこわばらせたまま、答えた。

「ゴメン」

「へ?」

まさかここで、謝罪の言葉が出てくるとは思っていなかったので、私はドギマギする。

「でも、我慢してくれよな」

「う・・・うん」

顔を上げると、坂口君もびっくりした顔でこちらを見ていた。

・・・どうしたんだろう?哉都君。

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