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カタンカタンと心地よい音を立てる下駄を履いて、石の通りを歩いていく。
前にいる智倖と舞架を見失わないように気をつけながら、私は出店の数に興奮して、きょろきょろと幼子のように辺りを見回す。
今年の祭りは、例年より力が入っているようだ。
大不況の世の中、つまらないことばかりなんだから、町の祭りぐらい盛り上げようという、祭り実行委員の人々の、粋な計らいのおかげだ。
「遊佐、迷子にならないでね」
「はーい」
智倖が振り返ってにやっと笑ったので、私は素直に手を挙げて返事をした。
「りんご飴食べるー?」
「食べるー!」
一つ一つの出店を見回しながら、こうやって楽しく会話をしていると、和やかな気分になる。
私はいつも以上にニコニコ笑いながら、またきょろきょろと辺りを見回していた。
浴衣を着ていることも忘れてしまうぐらい、楽しい。
その時、視界の隅に、この間見た姿とよく似ている、眼鏡をはずしたパーカー姿の哉都君が入った。
うちのクラスの学級委員、坂口慶一君と並んで歩いている。
私はすぐに二人に知らせようと、きょろきょろを止めて話しかけた。
「あ、智倖、舞架、哉都君だ・・・よ・・・?」
そういって振り返ると、既に二人の姿は無い。
あたりをぐるぐると見回してみたけれど、二人と思われる姿を見つけることも、声を探すことも出来なかった。
「え・・・?」
もしかして・・・私・・・。
「ホントに迷子になっちゃった・・・?」