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「明日だねー、浴衣」

「え・・・智倖、憶えてたの?」

夏休みが始まり、部活に入っていない私は智倖とのんびり買い物をしていたのだが、急に智倖が思い出したように言うので、私はぎょっとして智倖を見た。

「忘れるわけ無いでしょう?」

智倖は、楽しそうににやりと笑ってみせる。

私は小さくため息をついた。

あの、アイス事件(って呼んでいいのかな?)があってから、もう1週間強。

とうとう夏祭りが明日に迫ってきた。

てっきり忘れたと思っていた、浴衣のこと。智倖はばっちり憶えていたらしい。

「やっぱ、止めようよ、浴衣」

「何言ってんの?こっちはもう準備だって進めてるんだからねー、浴衣とか、髪留めとか」

「きょ・・・拒否ったら?」

「強制連行」

智倖は言い切って、にっと笑った。

「舞架にも頼んであるし」

「頼まなくていいよー」

「まぁまぁ、舞架も浴衣って言ってたから」

「・・・」

彼女たちは知らないんだ。私がどれだけ浴衣が似合わないか・・・。

私は、小学生のときに浴衣を着て、クラスの男子に顔を真っ赤にして笑われたことを、いまだ根に持っていた。

というより、半分トラウマ。

「ダイジョウブ、絶対似合うから」

「・・・」

だから、似合わないんだって・・・。

私の思いは、智倖には通じなかった。


「ちょ、遊佐動かないでー、髪留めつけらんないでしょ」

「帯びきつくない?ダイジョウブ?」

「ワックスとスプレー、どっち派?」

「遊佐、下駄履くとき痛いから、絆創膏はっといたら?」

「あわわわわわ・・・」

同時に何度も質問される為、私はテンパっていた。

というのも、浴衣を着るのって案外大変で、しかも二人とも自分の衣装以上にこだわってくれるので、なかなか終わらない。

「髪できたー!」

「浴衣もOK!」

二人とも私から離れたのは、着付け開始から30分以上たっていた。

ただの浴衣なのに。七五三とかで着る着物じゃないのに。

「すごい・・・」

「遊佐じゃないみたーい!」

二人が感激の声を上げる。

私は、きょとんとして、智倖がおばあさんのの部屋から持ってきた等身大の鏡を覗き込んだ。

「・・・」

びっくりした。本当に、私じゃないみたい。

びっくりしすぎて、着るものと髪型が変わっただけなのに、こうも人って変わるんだー、なんて、のんきなことを思ってしまった。

「さぁ、夏祭りに行こうか」

二人は、そういって立ち上がる。

私も遅れないように、二人について外に出た。

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