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文の改行を変えてみました。
読みにくい、などありましたら、言ってください。
「ちょっと時間ある?」
そう言われ、特に急ぎの用事がなかった私は、うなずいた。
二人で近くの公園のベンチに座る。
外は真っ暗だけど、星空と、ちょっとはなれたところに位置している街灯のおかげで、哉都君の顔は、すごくよく見えた。
「昨日は、屋上来なかったね」
「え?」
「屋上、いっつもあの時間は来てるのに」
あぁ、その話か、と、私は納得して「ちょっと、用事があって」とごまかしておいた。
会話が止まったので、私はそれより、と、話を変えることを試みる。
「今日は、屋上来なかったね」
・・・あまり、変わっていないのが現状。
「あぁ、先輩に捕まっちゃってて」
「先輩?」
「うん、宿題を教えてあげてたんだ」
「先輩に?」
「うん」
すごい、と私は小さくつぶやいた。
とてもじゃないが、私には中3の授業は分からない。
ちょっと、あんぐりした感じで馬鹿みたいに口を開けていた私は、あわてて口を閉じる。
それを見た哉都君が、ちょっと苦笑い気味に噴出した。
こんな笑い方をする彼、始めてみた。
少なくとも、みんなに振りまいている愛想笑いとは、種類が違った。
「・・・僕さ、面倒だから真面目にやってるって、前に言っただろう?」
突然、真顔に戻って、彼が言った。
私はうなずく。
哉都君は、何の前置きもなく語りだした。
「本当なんだよ。先生とか、周りとかに叱られたりするのが面倒で、ここまで真面目にやってるんだ」
「・・・」
私はなんて言葉を返していいのか分からないで、黙っていた。
「でも、逆にそれがプレッシャーになるなんて、思ってなかった。結構、きついんだなって、初めてしったさ。それに、何か、変な女子に恨まれてるっぽいし。特に何にもした記憶はないんだけどな」
やっぱり、プレッシャーだったんだ。真面目であるっていう、レッテルも、きついんだ。
それに、哉都君は佐和子ちゃんや、になちゃんのことを、それなりに気付いていたらしい。
何にもした覚えがないのに恨まれるのって、結構きつい。
「はは、馬鹿みたいかな。ゴメン、こんな話聞かせて」
「ううん、全然」
立ち上がった哉都君に合わせて、私も立ち上がる。
「こんな話、人に聞かせるなんて・・・僕どうしたんだろう?」
そういう哉都君の顔が、いつもの愛想を振りまいている感じの苦笑いに戻っていた。
何故彼がこんな話を私に聞かせてくれるのか分からないけれど、彼曰く、私が「変人」だからだろうか?
私はどうしたらいいのか分からなくて、とりあえずコンビニ袋の中の飴を一袋取り出し、
「とりあえず、これ食べて、元気出してください」
と言った。
それは、私のお気に入りの飴の一つだったので、惜しい気がしたけれど、あんなに悲しい顔をした彼を放って置けるはずがない。
「ありがとう」
彼はそういって、飴を受け取る。
去り際、彼は、「やっぱり、君って変だ」といっていた。
自覚のない私は、彼の後姿を黙ってみている。
そして唐突に、袋の中身にアイスが混じっていることを思い出した。
「やばっ」
私は、それから走って家に帰る。
家に帰ってから、蓮斗に解けたアイスを渡し、文句を言われたことは言わずと知れていた。