14
「畜生・・・」
つぶやくも、声は闇に消える。
蓮斗・・・幼いと思っていたけれど、ずいぶん成長していたらしい。
姉にアイスをおごらせるとは、なんて奴だ。
ぶつぶつと文句を言いながら、家から歩いて10分ぐらいのコンビニを目指す。
「いらっしゃいませー」
という、にこやかな店員のお姉さんの声も、今日ばかりはうれしくない。
私は無言でアイスの棚に歩いていき、今流行のカップアイスを一つ手に取った。
店内には、コンビニのテーマソングが流れている。
「いつでもどこでも24時間」という歌詞が、私を余計にいらだたせた。
・・・早く帰って、寝る。
そう決意し、アイスと近くにあった飴類3袋を持ち、レジに向かった。
「784円になりまーす」
化粧の濃いお姉さんが香水のにおいを撒き散らしながらレジを打つ。
私は1000円札を取り出し、おつりと商品を受け取った。
コンビニを出ると、あたりはさっきよりもさらに濃い闇に染まっていて、その中を歩くと、だんだん私の苛立ちも消えていく。
我が家への道は、人通りも建物も少なく、怖い反面、夜空の星がよく見える。
そんな星空を見ていると、自然と表情が明るくなるものだ。
私は、中にアイスやら何やらが入っていることを忘れ、コンビニのビニール袋を振り回して夜道を歩く。
「あれ、椎名・・・遊佐、さん?」
突然後ろから声をかけられ、驚いて振り返ると、そこに立っていたのは、
「哉都君・・・」
彼だった。
「どうしたわけ?こんな人気のないところ。危なくない?」
「いや、別に・・・ちょっと、コンビにまで」
ついこの間見かけたばかりだというのに、ずいぶんと久しぶりに会った気がする。
「そうか」
「哉都君は?」
「僕も、コンビニの帰り」
そういって、彼はレジ袋を掲げて見せた。
「そうなんだ」
そこで、会話が止まる。哉都君は、いつもの眼鏡をかけていなくて、パーカーというラフな格好をしている。
智倖と舞架が見たら、悲鳴上げて倒れるかも、とかいう勝手な思想をめぐらせ、私は哉都君を見ていた。