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昨日はいけなかった屋上に、一人、空を見上げる。

私は空を見るために、屋上に上がるんだ。哉都君に会うためじゃないって、自分自身に言い聞かせて。そうしないと、ここで哉都君とあってるって、彼女たちが知ったら、絶対私は彼女たちににらまれる。

気が弱い私が、そんなことに耐えられるはずもなかったから。

曇りがちで、さっきまで雨が降っていたから、シューズがべちゃべちゃと音を立てる。

こんな日は、先輩は絶対に屋上に来ないから、今日はいつもよりも少し長くここに居れるんだ。

雲が進むスピードは、いつもの倍くらいあって、今日は風も強い。

真っ黒い髪が、横に流れた。

心にしみこむ満足感。なのに、どうしてか、物足りない。

―――――哉都君が、今日はいない。

ぽっかりと、心の隙間を埋めてくれるものがない。

そんなことを考えていると、なんだか

私は、どうしてしまったんだろう?

覚えのない感情に駆られ、空を見上げたまま顔をしかめた。

「あーあ」

今日のは、本当にため息だった。

口から幸せが零れ落ちていくような気がしたけれど、どうだか、とめられなかった。

私なんて、部外者なんだから―――――哉都君のファンでも、佐和子ちゃんとになちゃんみたいに、いやみ嫌ってるわけでもない部外者なんだから、彼女たちのことなんて、放っておけばいいのに、どうしてだか、恐怖を感じたんだ。

私は、どうやら、自分も知らぬ間に、部外者ではなくなっていたようで・・・いや、部外者でいたくないって、思ってしまっていたようで、だんだん自分の気持ちが分からなくなっていた。


「姉ちゃん、俺のアイス食った?!」

「しらない」

「母さんか・・・母さんなのか?!」

家に帰ると、弟が家中をアイスだなんだと叫びながら走り回ってる。

全く、幼稚なものだ。たった一歳しか違わないのに。

なんて、蓮斗に言ったら、殴られるんだろうな。一端にも、男だもん。力は強い。

「あぁー!やっぱ母さんだー!」

という、彼の悲鳴にも似た声が家中に響いた。

私の元に、アイスのからを持って走ってくる。ゴミ箱をあさったのだろうか、少し生臭い。

・・・全く、迷惑なことをしてくれる。

「俺のアイスが・・・!」

しょげたような、しかし、大声で、蓮斗が叫んだ。

声変わりしたばかりで、まだ声がある程度高く、耳につく。

「うるさいな・・・」

私が小さくつぶやくと、「姉ちゃんにこの苦しみが分かるか!」と、また甲高く叫び返された。

あんまりうるさかったので、私はとうとう観念し、

「分かった、私が買ってきてあげるから、黙れ!」

と怒鳴る。

ところが、蓮斗は、「やったー!」と途端ににっこりと笑い出し、私はしてやられた、と頭を抱えた。

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