表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/27

12

「・・・」

今日は晴天だったのに、私は屋上にいかなかった。

次の授業を、ぼんやりと空を見上げたままで潰す。

そんなことをするぐらいだったら、屋上に行っておけばよかったのに、私は行かなかった。

―――――――行けなかった。

怖かった。よく分からないけれど、得体の知れない恐怖を感じた。

恐怖、というより、不安。

あの、佐和子ちゃんとになちゃんをみていたら、とてもじゃないけれど、私の足は動かなかった。

あんな小さなことに左右されるなんて、ばかげている。

だけど、それほど、彼女たちの視線は、冷たかった。

ぼんやりしていると、チャイムが鳴った。

外では、チャイムと同時に古い時計塔の鐘が、さびた音を鳴らしている。

そうか、この時間帯は、かぶるんだなー、なんて、現実逃避とも取れる思い入れに浸った。

「遊佐ぁ、今日放課後買い物行こうよぅ」

「OK」

智倖の誘いに、手を挙げて答えると、また空の観察に戻る。

さっきまで、雲ひとつないいい天気だったはずの大空に、小さな、シュークリームみたいな形の真っ白い雲が浮かんでいた。


「ねぇ、この服とこの服、どっちがいいと思う?」

智倖が可愛い洋服を2着差し出して、たずねてきた。

「こっち」

と、迷いなく答えてから、「どこにきて行くの?」とたずねる。

「決まってるでしょう?夏祭りだよ」

胸を張って、智倖は答えた。

そうか、もうそんな季節か、なんて、馬鹿みたいに思いながら、「今年も女3人かぁ、むなしいね」という智倖の台詞に笑って相槌を打つ。

「しょうがないんじゃない?」

「ほらぁ、遊佐がまたそんなこと言う!そんなことじゃ、一生男無用になっちゃうよ!」

「男無用?」

「彼氏居ないってこと!」

首を傾げる私に、智倖は不満げに言って、急ににやりと笑った。

「な、何?」

「遊佐、髪伸びたね」

そういわれて、ちらりと横髪に目を向ける。

確かに、去年はある程度短かったから、それを思えばかなり伸びただろう。

「じゃ、浴衣決定だ」

「は?」

「私の浴衣貸してあげるから、遊佐は浴衣ねぇ」

楽しそうに、智倖が断言した。

「何で?!智倖がきれば良いじゃん!」

「私には、もう小さいんだって。だから、リトルサイズの遊佐が着なきゃ」

確かに、私は身長が低い。だけど、それとこれとは話が別だ。

「いやだ!」

「そうだなぁ・・・髪の毛は、いっそアップにしよっか!私と舞架でやってあげるから!」

私の拒否を、智倖は全く聞いていない。

・・・まぁいっか。どうせ、当日前になったら、忘れちゃうし。

「いやぁ、後2週間か・・・楽しみだねぇ」

そういう智倖が、一番楽しそうだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ