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優とトワの絆、いや、状況から鑑みるに二人の愛を引き裂くのは心が痛む。
この二人は、けして悪人ではないのだから。
だが、トワを放置しては再び、この時代にはあり得ない驚異的なエネルギーを発生させる恐れがある。
一度は強制排除の規定値を越えたのだ。
規則は守らねばならない。
ターシャは懐中より小刀を取り出した。
「未来」の技術を用いずにトワを殺害せねばならないことが生々しく、一層、罪悪感を増す。
ターシャは一度、瞳を閉じ、深呼吸した。
(これは任務です)
自分に言い聞かせる。
ターシャが小刀を鞘から抜いた。
優を心配しているトワに近づき、得物を振り上げた。
カーミラは打ち捨てられた廃寺の本堂で、その身を潜めていた。
龍虎から逃れた後、日の光を避けるために、ここに入り込んだのだった。
蛇姫が邪魔をしなければ、あのまま龍虎によって深傷を負わされていただろう。
「あれが『星の子』の力か…」
カーミラは呟いた。