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「確かに体格や筋肉の量、腕力は重要だ」
男が言った。
「見た目で俺の力量を判断したんだろうが、あいにく、それだけで打ち込みの強さは決まらない」
男が刀をぶんっと振って見せた。
「俺は特殊な呼吸法を訓練し、気を練る修行を積んだ。それで強烈な打ち込みが出来る。兄貴は残念だったな」
男が淡々と言った。
弐尾と惨尾をにらむ。
「さあ、どうする?」
「おのれ!!」
惨尾が前に出ようとするのを弐尾が肩に手をかけ、止めた。
「待て! 惨尾!」
「し、しかし、兄者!」
「ここは退く」
「壱尾兄者が…」
「お頭に報せねばならん。加勢を頼めば仇を討てる」
「………分かった」
弐尾と惨尾が、じりじりと後ろへ退がり、さっと闇の中へ消えた。
男は追わなかった。
優とトワに向かって歩く。
「俺は無法丸。お前たちは?」
男が名乗った。
「あははは」
突然、聞こえた女の笑い声に無法丸と優とトワは、ぎょっとなった。