89/147
89
優の前には片腕を折られた惨尾と十九人の忍びたち。
その後ろでは屋守翁が、血走った眼で様子を窺っている。
右腕を左手で押さえ、苦痛に顔を歪める惨尾が「殺れ!」と忍びたちに命令した。
忍びたちが白刃を構え、優へと突進する。
優が動いた。
尋常な速さではない。
手練れの忍びたちが反応する暇もないうちに、次々と優に打ち倒されていった。
腕、脚、肋骨、身体のいずこかの骨を砕かれ、忍びたちは戦闘不能に追い込まれていく。
仲間が攻撃される瞬間を狙い、優の身体に刀で斬りつけた忍びも居たが、玉虫色の具足は、かん高い音と共に白刃をいとも簡単に弾き返した。
傷ひとつ付かない。
ほんのわずかな間に全ての忍びたちが倒された。
「ば、馬鹿な!?」
おののく惨尾の頭を突如、接近した優の右脚の蹴りが捉える。
なまなかな刀など効かぬ惨尾のウロコがひしゃげ、頭部が破壊された。
惨尾が倒れ、動かなくなる。
ウロコ衆で戦える者は屋守翁だけとなった。