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優が己の右手を見つめ驚いた。
拳を握っては開きを繰り返す。
玉虫色の薄い具足は自在に収縮し、すんなりと動く。
羽のように軽く、そもそも着ている感覚すらない。
「何をしておる!『星の子』をこちらへ!」
屋守翁が忍びたちを叱咤した。
惨尾が気を取り直し、掴んでいるトワの肩を引き寄せようと力を込めた。
優はトワが引き離されると感じた。
瞬時に身体が動く。
眼にも止まらぬ速さで、優の手刀が惨尾の右手の骨を打ち砕いた。
「ぎゃっ!!」
惨尾が叫ぶ。
優の動きに、まったく反応できなかった。
優がトワを両手で抱き上げ、跳んだ。
軽々と忍びたちの頭を越え、包囲の外に出る。
優は己の力に舌を巻いた。
これは、この具足による効果なのか?
トワが死にかけた虎造とお龍に不思議な力を与えたように、自分にも力を授けたのか?
ただひとつ言えるとするなら。
(これでトワを守れる!)
優はトワを降ろし、背後に庇った。
三歩、前に出る。




