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将軍家も態度を変えるに違いない。
唯一、蛇姫の行方だけが気がかりではあった。
刀を抜き、迫ってくるウロコ衆を見て、優は唇を噛んだ。
何という運の無さか。
ようやく虎造たちとカーミラたちの戦いから逃れたと思った矢先、現れたのがウロコ衆とは。
無法丸と縫が自分たちを捜しているかもしれないと、この場を動かずに居たのが裏目に出た。
トワはウロコ衆に捕らわれ、自分は殺されるだろう。
(俺にはトワを守る力はないのか)
必死にトワを背中に庇いながら、優は己の情けなさに涙をこぼした。
無法丸や縫のように力があれば。
虎造やお龍のように力があれば。
(トワを俺の手で守れるのに)
いつの間にか、トワが優の前に立っていた。
トワの細い指が優の顔に伸び、涙を拭う。
「優」
トワが言った。
トワの背後に惨尾が迫っていた。
優の後ろにはウロコ衆たちが近づいて来る。
もうすぐ、優は忍びたちに斬り殺されるだろう。
優とトワは見つめ合った。