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「これは僥倖じゃ」
屋守翁が惨尾に言った。
「『星の子』を我らが先に見つけるとはな」
屋守翁の杖が、優とトワを指した。
「捕らえよ。もう一人は殺してしまえ」
優とトワは逃げる間もなく、ウロコ衆に囲まれた。
ターシャは沈痛な面持ちで、その様子を窺った。
過去の世界への過剰な干渉は緊急時以外は禁じられている。
華阿弥への弟子入り程度のものであれば、記憶消去で事足りるが、過去の人々との戦闘行為など、それこそ今回の調査対象であるトワを排除するためならいざ知らず、ただ「少年二人が、かわいそうなので助けます」で許可されるものではない。
生来、心根の優しいターシャにとっては、なかなかにつらく心苦しい状況であった。
(これは任務です。私は『時間管理局』のエージェントなのですから)
ターシャが岩陰から覗いていることなど知るよしもない屋守翁は、上機嫌だった。
相当な犠牲を払いはしたが「星の子」さえ手に入れば全て報われる。




