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その人物は左手首に巻いた細い帯を見つめている。
ターシャであった。
華阿弥一門の踊り衣装を着ている。
ターシャの眼鏡に小さな光り輝く文字が、いくつも浮かんでいる。
「これは…」
ターシャは息を飲んだ。
彼女の所属する「時間管理局」が問題視する異常なエネルギー反応が、ついにその姿を現したのだ。
ターシャの眼鏡には、トワを映す小さな画像が浮かんでいる。
「彼女の存在自体も尋常ではないエネルギー量なのに…さらに数値が跳ね上がりましたね」
ターシャが首を横にゆっくりと振る。
「これはもう、レッドカードぎりぎりの現象と言えます。もしも彼女が再び、この力で時間軸に干渉するなら…」
ターシャの表情が緊張に引き締まった。
「彼女を私の手で強制的に排除しなければなりません」
ターシャは岩陰から、優とトワ、龍虎とカーミラたちの戦いをそっと窺い続けた。
「殺せ!!」
カーミラの怒号と共に、蛇姫が龍虎へと飛びかかった。
ケルベロスは動かない。